ライブからすでに数日が経っているにもかかわらず、EGO WRAPPIN'の音が頭の中に流れ続けている。
聴き込んでいるにもかかわらず、彼らの歌を私はほとんど覚えていない。 内容を聴き取る必要を感じないのも不思議だ。
私はどちらかというと、言葉が先に耳に入ってくる方で、歌モノというと、やっぱり詞を重視してしまうもんだからそんな聴き方をするようになった。
エゴの場合は全部の音が順番に入ってくる感じがする。 歌は歌なんだけど、イメージを膨らませるための言葉選びがされているという感じかな。 曲それぞれが色彩を放っていて、よっちゃんの歌はその中の一つ。 これだけ歌を聴いて”色”を感じるバンドは初めだなあ。
日本のミュージシャンが海外デビューをする場合、言葉の問題がよく取りざたされるけど、エゴのサウンドだとそういうことは問題にならないかもしれない。 彼女の口から出る”言葉”自体が不思議な”音”のように感じるから。
日本語って、実は色を持った言語かもしれない。
よっちゃんの歌は、そんなようなことを思いつかせてくれる。
「SUGAR」 MUSIC BY 中納良恵 & 森雅樹、WORDS BY 中納良恵、PLAY BY EGO WRAPPIN'
2002年09月15日(日) |
BIG NOISE FROM WINNETKA 〜黒アリのマーチングバンド |
出てきたメンバーの顔を見たとたんに”そうそう!この人たちよ〜”と思い出している自分がいてびっくりしてしまった。 ただひとり、トランペットの人だけ初めて見る顔だった。
ボーカルのよっちゃん(中納良恵さんの愛称)以外の全員がセッティングを完了したところで、1曲目がスタート。
「BIG NOISE FROM WINNETKA〜黒アリのマーチングバンド」
『NIGHT FOOD』の1曲目だ。 ライブの頭にぴったりのご機嫌なアップテンポの曲だ。
・・・とにかく。 なにがいいって、ちょっと軽めのリズムがいいっ! 肩の力を抜ききったドラミングがバンド全体の音を乗せて走ってる感じがする。 少しサスペンションが緩くなった旧式のバスに乗ってる感じかな? 自然と体が揺れてくるんだ。
そのリズムの上をダブルベースが自在に行ったりきたりする。 少々単調なスカのリズムの上で、このベースがかなり重要な位置にあると改めて感じる。想像よりもベースラインはメロディアスなんだ。 ダブルベースにはジャズのイメージがあって、ジャズのベースというと輪郭のはっきりしない音が下の方でモコモコするような感じ。 しかし! 彼のベースは音の輪郭がはっきりしていて、まるでよっちゃんの歌とは別のメロディーを歌っているようにも聞こえる。
そして、ピアノ! 金髪を逆立て真っ黒いサングラスをかけて柄シャツに赤い革パンツをはいた彼がステージに現われピアノの前に座った時には、えっ?と思うのだが、出てきた音には舌を巻く。 背中を丸めてピアノの鍵盤に向かう。 高く上げた両手がその上に落ちた瞬間・・・・何とも言えないやさしい音がスピーカーから流れ出す。 指先は軽やかに鍵盤の上を踊り、その音は時にはよっちゃんの歌に寄り添い、時にはここぞとばかりに自己主張をする。 かっこええ〜!!と思わず叫ばずにはいられない。 伴奏時には完全に気配を消してバッキングに徹してしまうあたりがプロだなあと感じさせる。
エゴの曲は全体的にミディアムテンポのものが多いのでライブは中だるみするかもしれないと思っていた。 でも、あまりにもスマートにライブが展開するので、その都度、聴き惚れ直しあっという間に次の曲が始まるという繰り返しだった。 特にアルバム『満ち汐のロマンス』の同タイトルの1曲目のソプラノサックスには会場がみんな息を呑んでその音に聞き入っていた。 続いてドラムスが入ってくるんだけど、サックスの作った流れを殺すことなくさりげなくリズムをのせるあたりにまたしびれてしまうのだった。
トランペットの人は、ゲストだという。 途中トランペットが入らない曲の時には、ステージ左の壁にもたれて、体を揺らしながら楽しそうにライブを見ていた。 その姿がなんだかとても粋だ。 いざ、トランペットを構えると、見た目の頼りなさからは想像できないくらいのかっこいいフレーズが飛び出す。
バンマスである森さん(ファンの間では、森ラッピンと呼ばれている)。 すごく細くて背の高い人で、ライブ中も控えめにステージ右に、私の好きなグレッチのギターを大事そうに抱えて立っている。 全体的にギターの存在は忘れがちになってしまうけど、出る時はちゃんと出てきます。 ぽろんぽろんといった感じの音で、時々不安定に音が揺れる。 その不安定さに私は色気を感じるんだな〜。
そして!歌姫よっちゃん! 彼女はバレリーナが練習の時に着ているチュチュのような衣装をきて、妖しいステップを踏みながら踊り続けている。 その姿は、私たちを惑わす妖精のよう。 手に真夜中の工事現場で灯されている赤いライトをもって振り回している。 それだけでライブ会場は、退廃的なムードになるのだから不思議だ。
彼女はメンバーそれぞれに視線を送る。時には手を伸ばしてね。 その姿は彼らを誘惑しているようにも見えて、それがまたスリリングでいい感じ。 ステージ上の全員が彼女のオトコといわれても信じてしまいそうだ。 曲によって彼女の声の表情はくるくると変わる。 独特の節回しが直接耳に飛び込んでくるとそれだけで、ぞくぞくっとする。
いつまでもいつまでも、私も踊っていたかったけどやっぱり終わりはやってくる。 またしばらく彼らの音が頭を離れないだろう。
2002.09.14(SAT) EGO WRAPPIN' NIGHT FOOD TOUR(at 広島CLUB QUATRO) 「BIG NOISE FROM WINNETKA 〜 黒アリのマーチングバンド」 MUSIC & WORDS BY BAUDUC RAY & CROSBY BOB & HAGGART ROBERT & RODIN GIL & 森雅樹 & 中納良恵、PLAY BY EGO WRAPPIN'
お待ちかねのEGO WRAPPIN’ライブ。 朝からそわそわして落ち着かなかった。 彼らの生音が忘れられず恋焦がれ続けてやっと手に入れたチケットが手の中にある。
2年前、偶然耳にした「色彩のブルース」はいまだセールス記録を伸ばし続け、ドラマ主題歌の「くちばしにチェリー」も大好評だという。 この2年間に彼らはメジャーデビューを果たし、当時、インディーズ盤を扱っているCD店で注文しなければ手に入らなかった彼らのCDが、今ではふと立ち寄った本屋兼CD店の売上ランキングコーナーに飾られている。うれしくて涙が出そうな今日このごろ。
メジャーになっても彼らの活動スタイル自体はほとんど変わらず、最新フルアルバム『NIGHT FOOD』では、いつものツアーメンバーでレコーディングをしたという話も耳に入ってきて、そのマイペースぶりに関係者でもないのに妙な安心感を感じる。
EGO WRAPPIN'のメンバーとしてクレジットされてるのは、ヴォーカルの中納良恵さんとギターの森雅樹さんの二人。 だが、彼らのサウンドを形作るためには”いつものツアーメンバー”は必要不可欠なのだ。
たった一度だけ体験した彼らのライブは未だに私の中に残っていて、出来るなら今回のライブでも彼らの音を聴きたい!と切望せずにはいられなかった。
会場は最近通い慣れた感のある広島CLUB QUATLO。 いつも陣取るPA席の上のカウンターに陣取って会場内を見回す。
場内は全体的に女性客の比率が多い。 年齢も服装もバラバラ。 黒いスリップドレスを着て、赤に白い水玉がプリントされているスカーフを首に巻いた女の子の姿を発見して、”いかすねっ!”と内心微笑んでしまった。
そう。エゴのライブはそういうカッコウで来た方が絶対かっこいい!
ステージ上に目をやると、ドラムセットが右端にある。 めずらしいなあと思いながら今度は、左に目をやると・・・。
おおおっ!グランドピアノがあるっ!
そうか〜それで、ドラムスが右によってるんだな。
2年前のライブではエレピとオルガンを使っていた。 会場が狭かったせいだろう。
グランドピアノの上にはオルガンがちょこんと乗っている。 それを見ただけで、期待度が増してくる。 だって、近頃は生ピアノをフューチャリングしたライブなんてなかなか体験できないからね。
気がつくと開演まで5分おきに時計を見ていた。 待っている時間って長いもんだ・・・。
かっこいいSEに聞き惚れていると場内の照明が落とされ、前の方から歓声が上がった。 メンバーが独りずつ現われた。
鼓動が一気に跳ね上がったのは言うまでもない。
to be continued「BIG NOISE FROM WINNETKA 〜黒アリのマーチングバンド」
2002.09.14(SAT) EGO WRAPPIN' NIGHT FOOD TOUR(at 広島CLUB QUATRO) 「PARANOIA」 MUSIC BY 森雅樹、WORDS BY 中納良恵、PLAY BY EGO WRAPPIN'
真夜中、ビルに激突する飛行機を見てからもう1年が過ぎ去った。 見ていただけの私でも、いろんな報道を見聴きしては憤りを感じてしまう。
例えば・・・。 崩れ去ったビルの下敷きになって命を落とした人たちは3000人近くにのぼり、遺族達は今この時だって悲しみに暮れている。
例えば・・・。 9月11日以後に行なわれた空爆で誤爆を受け、家族の半分と家をなくし悲しみに暮れている人たちがいる。 彼らに対してアメリカは謝罪も保証もしない。
遠く離れている私にはどちらも同じ立場のように感じる。 どちらの遺族だって「私たちがいったいなにをしたというのか?」というだろう。
家族を亡くしてしまえばだれだって悲しくてつらい。 それさえ忘れなければ、同じ悲しみを別の誰かに与えることなんて本当は出来ないはずだ。 衝撃はあまりにも強すぎてそんなことを考える余裕を人々から奪ってしまった。
なにが正義かなんて自分が決めればいいことなんだろうか。 その正義を貫くために罪のない人を殺してしまっても、しょうがないんだろうか・・・。 だけど、私だって自分の家族が殺されたら、なにをするかきっと分からない。 それは現実だ。
「鉄の月」 MUSIC & WORDS BY 浅井健一、PLAY BY BLANKEY JET CITY
平井堅さんの歌う「大きな古時計」が大ヒットしている。 連日のように朝のニュース番組で小さな特集を組んで紹介しているので毎朝聴いている。 こういう童謡がオリコンチャートの上位につくのは初めてのことらしい。
平井堅さんの歌う「大きな古時計」は、素敵だと思う。 これをたくさんの人が聴いて歌うのは、かなり素敵なことだ。 その状態はすごくわくわくすることで嬉しさを感じるんだけど・・・。
個人的に童謡のように子供の頃から歌っていた歌を何度も何人も歌い継ぐことはとてもうれしいことだと思っているのだけど・・・・。
一つだけおかしいと思うことがある。 人気歌手が童謡を歌うことが特別すごいことのように言われていることだ。
確かに。 人気のある歌手が歌えば「○×さんが歌ったから・・・」とCDは売れる。 マスコミもいかにもすごいことのように取り上げるから、またCDは売れる。 そんなの当たり前じゃないか・・・。 そして、それはただの”流行”でしかなくなってしまうんだ。
「大きな古時計」 MUSIC BY (--sorry nuknown--)アメリカ民謡、 WORDS TRANSLATED BY 保富庚午、PLAY BY EVERYBODY
2002年09月01日(日) |
ボーイズ・オン・ザ・ラン |
9月の初日。快晴。 鈴木雄大さんファンのげんちゃんから、馬場俊英さんが新しいアルバムを引っさげて広島にライブしに来るという情報を教えてもらった。 馬場さんの音楽を私に紹介してくれたのもげんちゃんだった。
馬場さんの音楽で初めて聴いた曲は「ここさ」。 去年の暮れに発売された馬場さんのアルバム『フクロウの唄』というアルバムの一番最初の曲で、天気のいい休日の朝には決まって聴きたくなる曲だ。 このアルバムもすごくいい感じで、げんちゃんから紹介された当初、毎日ヘビーローテーションだった。
その馬場さんが広島にやってくるっていうんだから(しかも新しい音楽を持って!)ぜひとも生歌を聴きに行かなくちゃならない!
会場でいつものメンバーと待ち合わせをして、17:00のライブを待つ。 10分前には彼の長いファンらしい人達が最前列の椅子に座って待っている。私たちは、その後ろの席に座った。 程なく現われた馬場さんは、背が高くて細身。 写真で見たイメージより若く感じてびっくり。頭は金髪だけど、人のよさそうな爽やかな笑顔がそのインパクトを半減していると思う。
アコギを抱えて、椅子に座った馬場さんは、店内をにこにこ見渡しながら挨拶。 ちょっと緊張しているのか、挨拶がぎこちない。 そして出てきた第一声にびっくり。大きいんだよね〜、声。 でも、すごくいい声で、なんだかぞくぞくっとしてしまった。
歌っている最中も馬場さんは店内に視線を送っているので、余りの距離の近さに私は顔を上げられない。こういうのって苦手なんだよな〜。 結局顔を下にしたまま、馬場さんの音楽だけ聴くことにした。
インストアライブなので曲数は少ない。新しいアルバム『鴨川』の曲がほとんどだった。 その中に聞き覚えのある1曲!
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」だ!
長い歌詞を半分語りのようなメロディーでとうとうと歌う曲には、数人の男性が登場していて、それぞれが今この瞬間なにを決断するのかを歌っている。
何も否定しないで肯定する。
そんな感じだ。 人に対するやさしさがにじみ出ている詩と意外と男っぽい声が、聴いている方の気持ちをすこしずつ上向きに変えてくれる。この曲を聴くと元気になる。
でも、一番、心に響いたのはラストの1曲「鴨川」 これから分かれる二人が思い出の川を渡る。 馬場さんの明るくてやさしい声で歌われるとせつなくなってくる。 聴きながら私は目頭が熱くなってしまったんだ。
この人はいつも相手への思いやりを忘れない人なんだろう。
暖かい気持ちを抱えて、私は帰りのバスに乗った。
2002.09.01(SUN)馬場俊英インストアライブ(at VIRGIN MEGASTORE 広島) 「ボーイズ・オン・ザ・ラン」 MUSIC & WORDS & PLAY BY 馬場俊英
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