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セキララな思考。
安井 文
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2002年04月23日(火)
存在

BS-2で尾崎豊さんの特集をやっていた。

私が高校生のとき、彼がデビューしてかなり彼の音楽が流れていた。
社会人になってすぐの頃、カラオケボックスが流行り始めてよく通ったもんだけど、いつも誰かが「卒業」を歌っていたな。

今でも彼の音楽は老若男女を問わず愛されていると司会の人は言った。

今年でなくなってから7年経つという。
まったく時の流れは早いもんだと改めて思った。

さて、私はと言うと。
彼の音楽は出来るだけ自分から遠くに追いやっていた。
「卒業」は、私には共感できるところが微塵もなかったから。

私は校舎の窓ガラスを割って歩きたいほど学校に怒りを感じたり、人のバイクを盗んでまで走りたいと思ったことがなかったし、それは悪いことだと、単純に思っていた高校生だった。だから、「卒業」にはちょっとばかりの嫌悪感も感じていた。

とは言うものの。
彼の歌にも私の好きな歌はある。
「I LOVE YOU」「LITTLE GIRL」
彼の作ったらブソングはとても素直で美しいと思う。
知らないうちに口ずさんでいることもある。

TVでよく流れる「I LOVE YOU」の映像は、私も好きだ。
とてもやさしい気持ちになる。

当時、不思議と音楽雑誌に掲載された彼のインタビュー記事は読んでいた。
まったく不思議なんだけど。

それで、尾崎豊さんのことは、ものすごく印象に残っている。

長すぎる詩を書き換えろと言われてもそれを出来なくてスタジオを飛び出して帰ってこなかった話なんかがなぜか今でも思い出される。
彼自身はとてもまっすぐな人で、純粋すぎた人だったんじゃないかなと思っている。

というわけで、私には彼の音楽についても彼自身についてもあまり思い入れはないんだけど。

尾崎豊さんはハンサムだ。
どちらかというと私の好みだったんだな〜。
声も耳障りがいいし。
その番組を見ながら、かっこいいなあと思った。

でもそれは、デビューしてまもない頃の尾崎さんの映像だ。
いろいろなことがうわさされるようになった次期の頃の映像を私は正視できなかったよ。

つらくてさ。

極度のアルコール摂取でぶよぶよになった体とはれた瞼でがなりたてる彼の姿はつらくてしょうがない。

もういい。もういいから・・・。

そんな気分になる。

デビュー当時のライブとなくなった頃に近いだろうライブでは、顔つきと声の感じがぜんぜん違う。詩の内容もかなり違うし。
苦痛を感じながら歌っているように見える。

それは私の主観に過ぎないんだろうけど。

こんなつらそうな姿の彼を見て、みんな本当にかっこいいと思っているのかな。

残酷なもので、もうけして歳をとらず、スキャンダルが発覚することのない彼は、ますます伝説のヒーローと化している。
永遠に英雄として語りつづけられるのだろう。
誰かが必ず彼を覚えているだろう。
それは彼が一番望んでいたことだったのかもしれない。

彼が誰にも見せたくなかった弱い部分を誰も知らない。
まあ、それを誰かが知る必要もないと思うけど。

番組の一番最後に流れた「存在」を聴いてそう思った。

彼が今でも生きていて、ボブ・ディランのように歳を重ねていたらよかったのになあと思う。
それから、命を削って音楽を残した尾崎豊さんを私はいつまでも忘れないだろうとも。


「存在」
MUSIC & WORDS & PLAY BY 尾崎豊



2002年04月17日(水)
ジユウ ニ ナリタイ

「僕のコーラス隊」という映画を見た。
アメリカの映画で15分で終わる。

めちゃめちゃはまってしまった。

主人公には物心ついたころから、背後霊のように男性4人組みのコーラス隊が付いて回っている。
彼らはずーっとすばらしいアカペラを歌いつづけているんだ。
主人公が自動車を運転していて少しでもブレーキのタイミングが遅れると、僕たちを殺すつもりなの〜?なんて歌ったり、冷蔵庫をあけたらその中身について歌い、今日は何を選ぶのかな〜?までハモッてしまう。

憧れの彼女の前では、やめとけやめとけと歌いまくるし・・・。

で、彼はやりきれなくなって精神科の医者のところへ出向くんだな。
そこで、コーラス隊の話しをすると医者は、「孤独になってもいいのか?」と何度も念を押して主人公がうなずくと催眠術をかける。

その間にショットガンを取り出して、コーラス隊を一人ずつ撃ち殺すんだな。
額を打ち抜いてさ。

さて、目がさめた主人公の耳には、もうコーラス隊の声が聞こえない。
喜び勇んで家に帰るわけなんだけど、静か過ぎてさびしくなっちゃう。

会社でも仕事が手につかない・・・。
と、そこに憧れの彼女がやってくる。
何か話しかけようとした瞬間に・・・・。

ほら〜何も持ってないでしょう?やっぱりつまらない男なのよ。

なんてゴスペルが聞こえてくる!
よく見ると彼女の後ろに恰幅のよい黒人女性が3人ずっと歌っている。

あんぐりと口をあけたままの主人公をよそに彼女はコーラス隊に説き伏せられたように彼の前を通り過ぎていってしまった。
主人公は彼女に通り過ぎられてしまったことよりも彼女の後ろのコーラス隊に目を奪われてる。
耳を済ますとまだかすかに歌が聞こえてくる。

はっと気がついてオフィスの中を見回してみると・・・。

いるわいるわ。
カントリーデュオにフォークソング、ハードロッカーにエルビスプレスリーまがいのロカビリー歌手まで・・・・。

なんとなんと、一人一人にコーラス隊がついている〜!

自分の周りが静かになったことで、それに気がついたのでした。ちゃんちゃん

最後に精神科の医者は、主人公から手に入れたコーラス隊の一人をクローゼットの中に鼻歌交じりで押し込む。うれしそうに・・・。
その中には、プレスリーもいればカントリー歌手もいて・・・みんな額を打ち抜かれていた。

さて?あなたのコーラス隊はいったいなんでしょうね?

「ジユウ ニ ナリタイ」
MUSIC & WORDS & PLAY BY 斎藤和義



2002年04月08日(月)
喝采

ある日の夜、母と歌謡番組を見ていた。
彼女はNHKの歌謡番組が大好きで私もよくいっしょに座り込んでみることがある。
その日はちあきなおみさんの曲をゲスト出演していた女性歌手がかわるがわる歌っていた。
その番組にはいわゆる歌謡曲畑の歌手がたくさん出るが、その日のゲストはみんな演歌歌手だったな。
NHKのこの手の番組ではいろんな歌手がいろんな歌を歌う。
それもフルコーラス。

こんなことやるのはNHKだけだ。
歌謡曲には素敵な曲がたくさんある。
それを素敵な歌手が素敵に歌うなんてわくわくする。

私は、楽曲それ自体が命を持っていて、作った本人の手でうまく世の中に出せなくても生命力を持っている歌なら歌い手を選んで世の中に出てくると思う。
だけど、歌い手やつくり手にはそういうことを推し進める力はないように感じる。
たくさんの楽曲を抱えている音楽業界ならそういう作用をうまく引き出せるように感じるんだけど・・・。

今の音楽業界は流行と巨額の富だけを追いすぎている。
データとしてオリコンチャートは優れているとは思うけれど、それが音楽の善し悪しを決定する目安にはけしてなり得ないはずだ。
それに気がつかない人が多すぎる。
それを目安にシステム化された今の音楽業界は、音楽本来の楽しみ方を奪い去ろうとしているとしか感じられない。

おっと、脱線・・・。

演歌歌手は脱帽してしまうくらい表現力がある。
実はどんな歌でも歌えるんだ。
しかも、自分の歌として歌うんだよね。
氷川きよし君もすぐれた表現力を持っていて、彼が老若男女に人気があるのはすごくうなずける。
その日のゲストの人たちもそれぞれの味をよく出していた。それが自分の好みかどうかはまた別の話だけどね。

でも、やっぱり、ちあきなおみさんの表現力にはかなわないね。
なんてははがぽつりとつぶやいた。

ちあきなおみさんの「喝采」を小学生のとき聴いて私は涙を流した。
リアルタイムでTVで見たのか、それとも昔の映像を流す番組で見たのか記憶が定かではないが、子供ながらに彼女の歌のすばらしさはわかったように思う。

彼女はだんなさんがなくなってから、一切TV出演をしなくなったのだという。
定期的にアルバムを発売はしているけれど、出てこないそうだ。
母は残念そうにそう話してくれた。

この特集は、もしかしたら番組制作者からのちあきなおみさんへのラブコールかもしれないねなんて二人で話した。

多分、彼女の歌を聴きたいと思っている人は、日本中にたくさんいるんだろう。

「喝采」
MUSIC BY 中村泰士、WORDS BY 吉田旺、PLAY BY ちあきなおみ