始まる前は、一番楽しみにしていました。 時間もお金もかけた大作だから。 主演は木村拓哉。わたしはファンでもアンチでもありませんが、キムタクものは局側も気合いを入れるので、そういう意味で期待できました。
まず第1話。南極へ向けて出発するまでの部分を2時間スペシャルで描いていてそれなりに面白かった。 が、期待したほどではなかった…。 どこか既視感があるというか、ここんとこ昭和30年代舞台の話が増え、「あの頃の日本!」ネタを見慣れたせいもある。 主題歌も中島みゆき。歌自体は良いが、なんというか「わかり易いアイテム揃えたなあ」という感じ。 人気子役の起用など視聴率アップの手駒に余念なしというのが第一の印象でした。
で、肝心のストーリィですが。 いや、筋自体はいいんですよ。 敗戦国日本が世界に笑われながらも南極観測に名乗りを上げ、少ない工程で南極仕様の船を造り、犬ぞりのための樺太犬を集め、日本中の注目が集まる中、子供達がなけなしのお小遣いを寄付し…という胸の熱くなるシーンの連続。 …になるはずだったんだが、それらのシーンがいちいちキムタクマンセー描かれるのが興を削ぐ。 樺太犬を集めて訓練するのはいいですよ、倉持(キムタク)は犬係なんだから。 しかしそれ以外の仕事(予算の工面や宗谷の健造)にまで中心的に活躍するのはどうでしょう…。 計画が挫折しかかったり否定的な意見が出るたびに「そんなことでいいんですか!」「今やるしかないんですよ!」と力強く説得する倉持、そしてその言葉に「はっ」とする皆々。 こんなシーンを1話の間にいくつ見たことか。 主役を中心に描くのは当然だし、応援したくなるような人格や立ち位置にするのも必要なこと。 でも、それもやりすぎると鼻につく。 『華麗なる一族』のように皆をリードする立場だったのなら違和感なかったんですが、南極観測という日本が一丸となって挑んだ事業の物語では、小さな個人個人がいかに自分の持ち場で頑張ったかが大事なのであって、一人のヒーローをカッコ良く祭り上げても感動は薄いです。
さらに主役以外の人物描写もあまり魅力的でない…。特に前半ことあるごとに倉持と対立する氷室(堺雅人)。 たとえ反対意見であっても氷室なりに日本の行く末を思ってのことであれば見てる側としても頷けるし物語の重みも増すのだが、そういう信念の部分がまったく描かれていないので、とにかくケチを付けるために登場しているかのよう。 そして定石通り、物語折り返しあたりで「改心」する。たいそう残念な役である。
それでもね、「?」と思いつつも第1話はそれなりに熱く見られた。 2話以降はこれに「間のび」が加わります。 これといって心をぐっと引きつけるような大事件も起こらず、第1次越冬隊の1年間は過ぎる。 いや、そりゃ前人未到の地で越冬するのは大変なことでしょうし、実際の観測隊の方々には敬服致しますが、連続ドラマとして盛り上げるには致命的にネタ不足。 一番注目株だったのはボツンヌーテン山の登頂ですが。 これも避けられない使命だったわけじゃない。 史実にはない遭難事件で盛り上げますが、「そんなに危険ならやめればよかったんじゃないの?」とつい思ってしまう(犬達が帰巣本能で隊員を助けたシーンはちょっと感動しましたが)。 このあたりの2〜6話で視聴率もガクンガクンと落ちました。 キムタクの演技がどうの以前に「面白くない…」理由はこれに尽きると思います。
中だるみの時期を過ぎて、ラストの3話に入ると、ここからは有名なエピソード、すなわち犬の置き去り&1年後の再会の部分に入ります。 さすがにここからはちゃんと物語を楽しむことが出来ました。視聴率も少し持ち直してたし。 犬達が次々と命を落とすシーンに涙し、タロジロとの再会に涙し…(いや、泣いてないけど)。倉持が犬をつなぐ鎖をひとつずつ手繰るシーンは印象的でしたね。 スポっと抜けて首輪だけになっていたら「○」、ぐっと重い手応えがあって犬の本体が雪の中からみえたら「×」。 あと、タロジロのシルエットを倉持が見つけたシーンも良かったと思います。 部分的には評価できるシーンもあったドラマでした。 嫌いなドラマだったわけではないです。ただ鳴り物入りで始まった割には…ううむ。
毎回書いてますが、わたしはお金のかかったドラマが大好き。 衣装やセットの作り込みに誘われ、それだけで物語の世界に入っていけそうだから。 しかし、脚本の完成度がそれに伴っていなければ、入っていきかけた足が引っ込んでしまうのも事実。 1話6千万円(だっけ?)の大作が、1話2千万程度の『家政婦のミタ』に完敗したこの事実を真摯に受け止め、精進してもらいたいと願っております。
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