昭和史大作ドラマをやるとつい見てしまう(笑)。 2夜連続で放送された『東京大空襲』も、もちろん見た。正直言ってドラマ脚本としてはいまひとつでした。 ただ、3月10日に何があったのかは迫力のシーンをもって丁寧に描かれていたので、視聴価値は十分ありました。今までは「何万人も死んだ」とか「隅田川が死体で埋まった」とかいう話しか知らなかったので。
恐しかったのは、米国側の作戦そのものです。 まず、一度目の爆撃で隅田川を中心に市街地をサークル状に焼き払い、次にこの火災から逃げて円の中心に集まってきた人々を第二の爆撃隊が絨毯爆撃するという…。まさに「どれだけ効率よく大量に殺すか」を合理的に練った作戦だったんですね。使用された焼夷弾も、日本家屋焼払い用にわざわざ開発されたものだったんですね。 こわいー。こわいよう。 この悪魔のような作戦の出来ばえの素晴らしさは下記の3つのシーンをもってとっぷり味わいました。 1、「橋の向こうはきっと安全」と、逃げてきた両岸の住民が言問橋の上でぶつかり合い、押しくら饅頭状態になって引き返すことも出来なくなったところに炎の波が押し寄せる。橋の上にいれば焼死、たまりかねて川に飛び込めば凍死or溺死。 2、火災を逃れようと学校のプールに飛び込んだ男の子。しかし、後からどんどん飛び込んでくる人々に阻まれ、自分が水面に浮上することができず、やがて水死。 3、鉄筋コンクリートなら火災に強いと信じ、国民学校の校舎内に集まった人々。が、米軍の2度目爆撃はコンクリ建造物を集中爆撃。瓦礫に埋まり密室になってしまった校舎に閉じ込められた人々はやがて窒息。
…なんていうか…「あそこに行けばきっと助かる」と向かった先に予想を超える最悪の地獄が待っているという、ぞーっとするシーンの連続でした。原爆は一瞬の出来事でそれも恐ろしいけれど、爆撃と劫火とパニックの中を2時間逃げ惑うのもそれはそれで本当に恐ろしい。 太平洋戦争について、あの戦争をあの国際情勢の中で回避することなど出来なかったという話もある。でも、こういう映像を見ると、頭でなく、本能で思う。こわいよ。
というわけで、戦争の映像化という点で見る価値のあったドラマなんですが。 一方で、わたしが「?」と思った人間ドラマ部分について語りたいと思います。
キャスト自体には不満はありません。 主役をやった堀北真希も藤原竜也もよかったと思いますし、瑛太も最近気に入っている。脇にもいい役者がそろっていた。が、ちょっと登場人物、多すぎたような…。 主役格と脇役で合計20名程度いるが、これらの人物達が全員バックボーンを持ち、善良で幸福な日常描写の後、悲惨な死が描かれる。そりゃ、あの大空襲の凄まじさを語るドラマなんだから、登場人物達が戦火で命を落とす場面はこの作品の肝なんだろうけど。しかし、一人一人が死ぬたびにいちいちバラードの曲が流れスローモーションになったりしますと…。最初のうちは真剣に涙するが、「さあ泣いて!」な演出の繰り返しになんだか悲しみも鈍化してしまって食傷気味に。 個人的には前述した3件の死に方(言問橋パニック、プール溺死、国民学校窒息)こそが3月10日の空襲の恐ろしさを端的に充分に物語っていると思うので、そちらに焦点を絞って、他の描写はある程度省いた方が作品全体のインパクトもメッセージ性も強まったと思います。
その他にも、物語が終盤に近づくしたがって「あれれ?」な場面が…。 晴子と博人が爆撃の中逃げる時「もう2度とこの手を放さない」とか言ってたくせに、けっこうあっさり放しちゃってるし。言問橋で生き別れた時と同じじゃん。なぜ同じ展開を必然性なく繰り返すのか、見てる側としては「?」です。 しかも、博人とはぐれた晴子は、B29だか相手に「もうやめて!」と仁王立ちで叫んで撃たれて、死。い、意味ない…。 今まで大空襲の中を生き延び、その後も看護婦として周囲を助けながら健気に生き抜いてきたのに。赤子を抱いて炎の中を駆け抜ける表情は、生への強い意志が感じられたのに。肝心のラストでこんな命を捨てるようなパフォーマンスをされては…。
絢子(国仲涼子)も、花嫁衣装とともに炎に巻かれて死んだかと思いきや、生きていたとわかった時はホっとしました。そして、戦地から戻った婚約者との再会のシーンは感動的…だったはずなんだが、二人が駆け寄ったところで頭から爆弾ちゅどーん!…って。すごーく、安っぽいんですけど。 他にもいくつか「?」な点はありました。まー、この「?」が随所に散りばめられていた点がやはり残念ですね。
とはいえ、全体通して見る価値が十分あったのは前述のとおりです。シリアス瑛太も見られたし。
このドラマは日テレですが、ちょっと前にTBSでもやってたんですよね。東京大空襲を扱ったドラマ。こっちはドキュメンタリー風でだったようで。見ればよかった。再放送しないかなー。
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