夏!日本の夏! そう、夏の風物詩といえば、花火、盆踊り、そして戦争ドラマ!
…なんて、不謹慎なことを申しましたが、8月のこの時期になるとたくさん放送されますね。戦争に絡むドラマが。モチロン幅広い意味での「戦争」ではなくて、62年前のあの「終戦(敗戦)」が題材のもの限定だ。しかも、ここ数年、その放映本数が増えてるような…?(気のせい?)
で、今年は『はだしのゲン』をやっていた。 タイトルは超有名だが、小学生当時に周囲の感想を聞いただけで恐ろしくなって手を出さず、その後も読む機会が無いままに大人になってしまったのですが、今回TVでドラマ化されるということで、「よーし、有名作品だし、見てみよう」と思ってチャンネルあわせてみました。2夜連続。
感想ですが。 『はだしのゲン』に対しては「とにかく悲惨な原爆が描写されている」というイメージばかりを持っていたんですが、実際見てみると、意外と前半部分の家族愛のドラマ部分がよくできていて、なんというか、戦争ものというより、「家族のあり方ドラマ」「子育てはどうあるべきかドラマ」として見てしまいました。 父親役の中井貴一さんがとても良くて、さすがの存在感だった。口より先にゲンコツの出るような昔気質の父らしい父親。愛情だけでなく、生き方の規範も身をもって子供達に示す、偉くて立派で強い「昭和の父ちゃん」だった。 そして、優しく家族思いの母親(石田ゆり子)。子供が相当悪いことをすれば平手打ちを食らわすが、子供が正しかった時はちゃんと謝り、子供の意思をないがしろにしない。芯が強く気丈で優しいお母さんですよね。昭和の親ってこうだった気がする…。 子役達も元気で可愛くて、全体を通して空襲やら憲兵隊の拷問などの怖いシーンより、家族の微笑ましいシーンの方が印象に残りました。
そして、この一家の日常が原爆投下により一変。 広島の町が原爆で吹き飛ぶさまがCGで描かれましたが…、やっぱ、こ、こわいね…。 アニメの『ゲン』のような目ん玉飛び出す描写は無いけれど、何がすごいってあのスピードとパワー。 振り返るいとまもない速度で押し寄せる熱波。 ガーッ!と消滅する屋根、壁、町並み。 CGの出来について云々語る気はないが(造詣も深くないし)、通常兵器の爆弾とは比べ物にならないんだね。当たり前のことだけど。でも、そういう当たり前のことを改めて思い知らされるというか。 やっぱ、映像って強い。百聞は一見にしかず…(たとえTVドラマの処理映像でも)。
そして、この原爆により、父と姉・弟が亡くなり、生き延びた母とゲンにも過酷な運命が待っている。 黒い雨で抜け落ちる髪の毛、飢えと貧困、そして廃墟の中で生まれた妹とその死…など悲惨に悲惨の追い討ちをかけるような事件のオンパレードなんですが…。 原爆の悲惨さをメインで語るのは、このドラマ後半部分になる訳だが、なぜか後半の方が話自体はまとまりがいまいちだった感があります。 ちょっと、脚本の完成度、前半より落ちたかな?と。シーン自体は悲惨なので印象は強いのですが。 被爆後の廃墟と化した街のセットももうちょっと本物っぽさが欲しかったとこだ。 まあ、でも、全体通していい作品だったと思います。
今回のドラマ化に当たっては、悲惨な描写はお茶の間用にずいぶん緩和したみたいで。 実はわたしも原作は読んでないと書きましたが、中学生くらいの時、歯医者の待合室に単行本が置いてあって、診察の順番待つ間に一部分だけ読んだことがある。 原爆投下後、ゲンがお屋敷で被爆青年のお世話のアルバイトをするくだりなんですが。 被爆で全身火傷を負ったその青年の部屋はハエが飛び交い、体中の傷口からわいたウジ虫を箸で取り除くのがゲンの仕事…というのが原作の描写。 ドラマでは部屋にハエは飛んでおらず、したがってウジ虫もわかず、全身包帯姿で自暴自棄になっていた青年と心を通わすのがゲンの仕事だった。 まー確かに、現代のお茶の間にウジ虫を映したら速攻チャンネルまわされるのがオチだわな…。 他のシーンは読んでいないわたしだが、この1シーンだけでも、原作よりどれだけ緩和されていたか推し量れるというものです。 でもって、その原作漫画ですら、読者に配慮して実際よりずっと緩和して描いたと作者の中沢啓次さんは語っていたが。
この原作者の中沢啓次さんは、被爆当時小学生で、たまたま塀のかげにいたため重傷を負わずに済んだそうで。 広島・長崎での死者の数は甚大だが、その中から才能ある漫画家として成長する少年が生き延び、原爆の語り部となったことは、なかなか運命的だと思います。
原作もいつか全編読んでみたいです。 …と前々から言いつつ、いつも本屋で手が伸びないのはやっぱ怖いからでしょうか…。
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