見てきました。映画『ローレライ』。面白かったです。映画館で見た実写の邦画は、たのきん映画「ハイティーンブギ」以来でございます(笑)。以下はその感想です(ネタバレあり)。 原作未読なんですが。結論から言うと、エンターテイメント性・メッセージ性とも、わたしには満足度のいく作品でした。毎年8月頃にTVでやってる「とにかく戦争はコワイんだー悲惨なんだー」っていうあの路線も平和教育として重要ですが、お金を払って劇場に足を運ばせるためには、それを踏まえた上で商品価値の高さを感じさせる作品でないと。人々を素直に引き寄せるのはやはり「楽しみ」ですから。 『ローレライ』は、戦争を美化することなく、また、直截的な反戦描写だけをクローズアップする方向でもなく。ただあの大戦で命をはってこの国を守った人達がいて、そして生かされた命があるということを伝えています。そしてそのメッセージを受け手が興味をもって受け取れるように派手さと興奮と感動を織り交ぜたエンターテイメント性の高い作品として提供されています。娯楽性が強すぎると作品は安っぽくなってしまうので、そうならないバランスに気を付ける必要はありますが、わたしにはちょうどいいバランスでした。 キャスティングに関しても、隅々にまでよく知ってる俳優さんが布陣され、しかもこれが適材適所。中でもよかったのは、やはり絹見艦長役の役所広司。「特攻は作戦とは言えません」から始まって「大人の戦争にお前達子供を頼りにして悪かった」のセリフまで、この映画の思想はすべてこの人のセリフが端的に表しているように思いました。クライマックス、東京行きの原爆を積んだB29を撃破するため敵艦隊の中へ向かっていったのも特攻ではないんですよね。生還の可能性がゼロに等しい戦場に自ら赴いたとしても、それは自分自身の肉体を爆弾にする攻撃方法とは根本的に違う。それと折笠征人役の妻夫木聡。まっすぐで純粋な日本男児の役は妻夫木くんのヴィジュアルにこれ以上ないくらいハマっていた。 朝倉良橘(堤真一)や高須成美(石黒賢)のクーデター派に関しては、彼らの「新しい日本を作る→だから東京を原爆で焼き払う」という考え方は、悪役であるにしても飛躍し過ぎていてるように思えたのが残念でした。そこがこの映画の唯一の不満点です。とはいえ、白い軍服に身を包んだ堤真一の冷たい演技は、この極論がなんだが妙〜に合っていた…。 そして本作の紅一点、パウラ・アツコ・エブナー(椎香由宇)。これまた端正な顔立ちの女の子で。アンドロイドっぽい出渕裕スーツが良く似合う(笑)。歌が口パクとバレバレなのがちと残念だったが。 エンターテイメント性の高さがどうとか前述したが、それが最も濃く出ているのが、このパウラの設定でした。まず潜水艦なのに女性が乗っているということ。で、その女性を登場させるための策として「ローレライシステム」という彼女にしか扱えない超能力兵器が出てくること…ですね。SFやファンタジーな要素って、作品のカラーを根本的に違うものにしてしまう威力があるので、「ええ?そういう話だったの…?」と客が引いてしまうリスクを伴う(実際、引いた客は少なからずいる模様)。まあ、わたしとしては、そういった非現実な設定を入れることになったとしても、彼女を登場させてくれて良かったと思います。男の熱い戦いが潜水艦映画の魅力かとは思いますが、やはり物語にはいろんなシーンが欲しいし…。男達だけでもシーンのバリエーションは作れますが、少女の醸し出すそれとはやはり全然違うので。 で、そのSFファンタジー部分も含め、「なーんかアニメの影響があちこち見られるわねェ」などと思いながら見ていたんですが。その実、製作スタッフにアニメ・特撮関係者の大御所がいっぱいいた…と知ったのは、映画館を出てパンフを見てからだったのでした。SF混じりなだけならともかく、あのパウラの水密服のデザインといい、チューブで拘束された状態といい…。なんか、どこかの趣味のお部屋を覗いてしまったかのようで…(笑)。 そのような、ある意味、馴染みまくってきた世界のデジャヴを感じさせる作りでしたが。でもそれがおもしろい。いやいや、「アニメっぽ作品」としておもしろかったわけじゃないですよ(笑)。敗戦国が描いた戦争の物語作品として良かったと思います。ハリウッドも大好きですが、国産でしか描けないものが、新しい手法を手に入れることで描くことが可能になったのは大きな前進だと思います。世界に誇る日本のオタク文化が実写という新しい方向に進出し、邦画(実写)の方もそれによって転機を迎えているのなら、今後の日本映画がどのようになっていくのかとても楽しみです。 最後にCGについてですが、前述の通り邦画はほとんど見たことなかったのですが、「思ったよりずっとCG技術あるんだな」と思いました。正直『ロード・オブ・ザ・リング』などを見た後ですと、「ん?」と思ってしまう箇所もあるにはあったのですが、全体的には全然気にならず充分リアルにカッコよく見えました。海戦シーンもすごい迫力で。ハリウッド並み!には追い付いてないかもしれないけど、ま、CG技術ってのは時間とともに向上してゆくみたいだし。ああ、この映画の興業成績が芳しいものでありますように。で、今後もっとCGに予算を割いてもいいだろうと企業側が納得の行く結果が出て、次の作品につながってくれますように。いや、CGがすべてじゃないけどさ、でもCGを手に入れれば映像化可能の作品の巾は格段に広がるわけだから…。 近いうちに小説『終戦のローレライ』の方も読んでみたいです。この映画は小説の映画化ではなく、映画と小説を同時企画でいっしょにプロットを練り上げられたものとのことなので、そういう企画で生まれた二つの作品を両方堪能してみたいと思っております。
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