この雨が止むまでには。 ...緋水

 

 

とりあえず。 - 2001年08月11日(土)

メモライズのメンテがいつまで経っても終わらないので、
急遽、エンピツさんから借りて書いてみます。
メンテ終わったらどうなるかなー。
ココ、消すか?
いや、勿体無いから何か書き続けよう。

ということで、8月3日、フェスの初日の夜のことを書きました。
↓読んでやって下さい。


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真っ黒な海と空を見ながら。 - 2001年08月03日(金)

民宿のすぐ前が海岸だった。
夜、車で買出し部隊が夜食を買ってきて
お酒を飲みながら喋って
みんな疲れてるし明日もあるから、って事でお開きになったけど
翡翠は夜の海で遊んでみたかったので後輩たちを誘った。
男の子二人が「行きますー」とついてきた。
「○○○は?」
彼にそう訊いたら「行く」と返事が返ってきたので嬉しかった。
だって、昼間に二人きりになれたけど
ちゃんと話はしなかったもの。

日付が変わっても、浜辺には花火をしてる集団が2組程いた。
風が強いから波がけっこうある。
後輩と3人で波打ち際で足を水につけて遊ぶ。
彼は、「風呂に入ったのに汚れたくねー」
と言って、離れた石段から見てた。

15分程はしゃいでいただろうか。
後輩は「短パン濡らしちゃったし、もう寝ますー」
と言って二人とも宿に戻っていった。
翡翠はミュールを手に持って、裸足で彼の所へ戻った。
「帰るぞ。ねみー。」
そう言う彼を引き止めて、並んで石段に腰掛けた。
夜の海は鎌倉でも見たけど、
『隣に彼が居たらなー』
なんて思ってたのでした。
実現するとは正直思ってなかった...。

「あのね。話したいことが、あるの。」

「何?」

長い沈黙。
あたしは、ずっとずっと迷っていた。
いや、待っていた。
彼に話す時期を。
今がそのチャンスなのか分からないけど、
二人きりになれるのなんてもう無い。
だから、やっぱり......。

つとめて明るい調子で、全て話した。
別れた翌日にSEXした後、いっぱいいっぱい考えてたこと。
嬉しかった、って。
幸せだった、って。
だから、期待はどうしても抱いちゃうけど、
もし駄目でも、すごく悲しいだろうけど、
たぶんあの事は後悔したりしない、って。

途中いろいろと脱線しながらも
ゆっくり、全部、話した。
始終、翡翠は雰囲気が暗くならないようにしてた。
ただ、涙だけは止められなかった。
声の調子は変わらなくて、悲しい表情にもならなくて、
だけど、静かに流れる涙。
前は、泣きじゃくって、大声をあげて、
そんな涙を流す方が多かったけど
最近はこんな泣き方しかしなくなった。
たぶん、最後にめちゃめちゃに泣いたのは、別れた夜。

彼の気持ちも聞いた。

「この2週間...あんまり考えないようにしてたんじゃない?
 忙しいのもあるだろうけど。
 無理に考えようとしなくていいよ。
 でも、今の気持ちを教えて?」

確かに、あまり考える時間は作らなかったって。

「後悔してる?罪悪感はある?」

「後悔は...してるな。
 でも、罪悪感って?
 何に対して罪悪感を抱くわけ?」

あ、そっか。
好きな人と付き合ってるわけじゃないもんね。
今の彼が誰と何をしようと、責任はないわけだ。
それは、翡翠に対しても。

「『あの瞬間』は、何を考えてたの?」

「......何も考える余裕なんかないよ。
 ただただ、興奮してたな。」

「『性欲』だけ、ってことね。」

「いや...でも、お前だからこそ『性欲』が湧いたんだ。
 誰に対しても、ってわけじゃない。」

それ、喜んでいいことなのかな......?

「ただ...
 後ろめたさは、あるかもな。
 世間的には正しくないことじゃん?
 俺ら、別れてるんだし。
 実際、俺は好きな人が居るわけだし。」

「世間が何?
 誰にも迷惑なんてかけてないじゃん。
 今、そういう事は関係ないよ。
 大事なのは当人同士の気持ちだもん。
 あたしには、世間なんてどうでもいいよ。
 そんなのより○○ちゃんへの気持ちの方が何倍も大事。」


しばし、沈黙。
目の前には黒い黒い海。
波が白い泡になって何度も何度も行き来する、
ちょっと離れた浜辺では、花火をしてる集団がまだいる。
たぶん、あの人たちもフェスの人。
車内泊でもしてるんだろうな。
翡翠たちも民宿が確保できなかったら
車内泊を考えたけど、疲れが取れないだろうってわけで止めた。

♪水平線が分からない程
 真っ黒な空 真っ黒な海♪

ドリカムの唄が頭を流れた。
口ずさんでみた。


「......あたしはね、
 『好き』かどうかの基準の一つとして、
 その人に触れたいか、KISSしたいか、SEXしたいか、っていうの、
 結構重要だと思ってるの。
 勿論、それだけじゃないけどね。
 それも大切な要素だって思う。」

「だけどね、BBSで皆と話してて、
 『別れた恋人とSEX出来てしまうのは、
 知ってる肌だから、安心があるから。』
 っていうような話を聞いて、
 『なるほど、そうなのかもなぁ』って思ったよ。
 だって、うちらってお互いしか知らないじゃん?
 だから尚更、ね。」

彼はずっと黙って聞いてた。

「でもあたしは幸せだったから。
 後悔も罪悪感も無いよ。
 ○○ちゃんを責める気持ちも、少なくとも今までには無いよ。」

彼の手の甲に触れてみた。
まだお酒が残ってるのかな。
だからこういうことできるのかな。

「こうして触れられて......どう思う?」

「...嬉しい。」

返ってきた言葉に少し驚いた。
思わず訊き返した。

「嬉しいの!?」

「...うん。
 それが何故だかは分かんないけどね。
 お前に触れたいって思うよ。」

...そうなんだ。
少しの驚きと多くの嬉しさが頭の中を占めてた。
そして、冗談ぽく。

「じゃあ、触って♪」

「何言ってんだよ。」

彼が少し笑う。
そして、あたしは彼の方に寄りかかった。
拒否しない彼。
手を握ると、握り返してくれる。
それだけで、気が遠くなりそうな程の喜び。
胸がきゅーーーってする。

別れる別れないでゴタゴタしてた時、
彼の手を握っても彼の手は力が入ってなかった。
握り返してくれるなんて事はなかった。
別れた翌日にSEXした時、
彼の手があたしを求めてあたしの手をギュッて握ってくれた時
あたしはやっぱり気が遠くなる程喜びを感じた。


「あのね、ちょっとお願いがあるの。」

「何?」

「肩を抱いて欲しい。」

黙って彼の腕がまわされた。

「あたし、ズルイよね。
 ○○ちゃんが、頼んだらそうしてくれるって分かってる。」

「そう思うか?
 いきなり裏切られるかもしれないぞ?」

そう言って彼は意地悪そうに笑って、
翡翠の肩にまわしてた腕をひょいっと外した。

「んも〜〜〜。」

二人で顔を見合わせて笑う。
ああ、幸せ。
なんて心地よい空間なんだろう。
ずっとこのまま此処に居たい。


民宿に帰ったのは午前3時。

「おやすみ」とささやいて廊下で別れた。
みんなはとっくに寝てたから、起こさないように静かに。

二人だけの時間。
二人だけの夜。
二人だけの会話。

今でも心に鮮明に残ってる。



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