Sun Set Days
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2004年12月30日(木) The last four chapters.

 年末年始は稼ぎ時だということと、最近の小売業は元旦まで働くらしいよということで、大晦日イブである今日も大晦日も元旦も3が日も仕事だ(今日も忙しかった)。
 もちろん、好きでやっている仕事なので全然苦ではないのだけれど、それでも忙しさのなかで、季節感のようなものをあまり感じない人になっていそうでちょっとだけ心配してしまう。
 季節感を感じられないということは、やっぱり何かが磨耗しているということなのだろうし。
 ということで、今日は明日休みのパートさんたちに「よいお年を」と繰り返し言い続けていた。
「よいお年を」って言葉は個人的にはなんだか好きな言葉だ。深い意味はないのだけれど、それでもスローカーブのようにおだやかな言葉であるように思う。


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『Wonderful World(仮)』は現在第17章。原稿用紙に換算して400枚突破。もちろん枚数が大切なわけではないし、第一稿を書き終わった後に配置変更の第二稿がはじまるのでまずはとにかくゴールを目指そうといった感じだ。気がつくといままで書いた話の中で、一番長くなってしまっている。9つのエピソードを軸にしたやさしくて少しだけ切ない群像劇。

 それにしても、いったいいつ書いているのだろう? と思う。まるで眠っている間にロボットが書いているのだろうかと自分でも不思議だ。
 気がついたら、先に進んでいる。
 でもまあ実際には、夜の時間や休日を利用して書いている。書き始めてのってくると面白くて、キーボードを打つ指の動きが早くなる。
 のってこないと眠たくなってしまう。一日(平均すると8時から21時〜22時くらいまで)働いた後に書いているので、やっぱり眠たいのだ。
 でも、リズムを掴むことができると、眠たくならないのだから、まったく人間の身体は不思議にできていると思う。
 都合がいいというか。
 でもまあ、都合のよいところをうまく掴まえて、身体のリズムを騙し騙し書いていこうと思う。2005年には、完成させたいなと思うし。


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 お知らせ

 明日もまた、「よいお年を」って何度も繰り返すのです。


2004年12月24日(金) note.5

 良朗は夜遅くにマンションに帰ってくるとき、物音を立てないように静かに部屋に入る。それはいつの間にか身についてしまった癖だった。物音を立ててゆずを起こしてしまうわけにはいかなかったし、子供には充分な睡眠が必要だということをわかっているからだ。

 以前、いまよりもまだよく出張があった頃、帰ってくるとまだ小さかったゆずがリビングのソファーで眠っていることがあった。毛布を一枚持ってきて、それにくるまって眠っているのだ。その姿を見るたびに、良朗の胸は痛んだ。物音に目を覚まし、良朗の姿を認めると、ゆずは心からほっとしたように「おかえり」と眠たそうな声で言った。そんなときには自分がゆずに、本来なら与えるべきものを与えていないのではないかと思えた。

 けれどもゆずはけなげに自分を慕ってくれる。女の子だから思春期になるまでなのだろうなとは思いながらも、いまはまだパパとまとわりついてくれる。まっすぐな、素直な子に育って欲しい。願いはただそれだけだった。妻の最後の願いもゆずのことだった。ゆずを頼むわね。幸せな女の子にしてあげてね。

 病室での最後の日々を良朗は忘れることができない。そのときの数日間に交わしたいくつもの言葉は、その後の人生を歩む灯台の光のように良朗の前を照らしている。まだ小さくて母親がなぜ家ではなく病院にいるのかもよくわかっていなかった小さなゆずは、母親の葬式の間もまったく泣かなかった。何が起こっているのかよくわからずに、同じ年頃の住職の息子と一緒に走り回っていた。良朗はそのときに誓ったのだ。ゆずを絶対に幸せにすると。

 もちろん、それがうまくできているのかどうかはわからない。ただ、ゆずは頑張ってくれている。寂しい思いもさせているのだろうが、それでも春の野の花のような笑顔を見せてくれている。

 良朗はゆずの部屋の扉を静かに開く。パイン材のシングルベッドの上で、ゆずがかすかな寝息を立てて眠っているのが見える。うちのお姫様、と良朗は目を細める。自然と笑みが浮かぶ。元気で健康で幸せになりますように。それから妻の仏壇の水を取り替え、その前にある紺色の座布団に座り、両手を合わせる。そして願う。

 今日も一日ゆずを見守っていてくれてありがとう。明日もゆずが元気で健康で、幸せな一日を過ごすことができますように。そして、俺は頑張るから、まあ見ていてくれ。頼りないかもしれないけど、ベストは尽くすよ。
 妻の写真はいつも微笑んでいる。
 頑張っているわね、と語りかけてでもいるかのように。


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 お知らせ

 第一部 West(10章まで)を読んだ人のお気に入りの登場人物は、「花ちゃん」でした。


2004年12月16日(木) note.4

 現在、14章途中。
 風変わりな旅を続ける二人は、房総半島から福島へ。
 修一と瑠璃の夫婦は土曜日の午後をまるまる使ってトランクルームにしまいこんでいた大きなクリスマスツリーを取り出し、飾り付けを行う。
 関谷と花とゆずは三人でお台場に出かける。花はお台場の観覧車が好きで、一人でもう二十回以上も乗っているのだと関谷に秘密を打ち明けるように話す。
 亜希子は新宿で亡くなった恋人が家庭教師をしていた男の子(透)と再会する。
 亜希子の妹の馨は、姉がいつまでもふさぎ込んでいることに心を痛めている。
 12月に入り、もう少しでクリスマスがやってくる。
 それぞれのエピソードの、それぞれのクリスマスの夜は十五章の予定。


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 お知らせ

 削るのは、やっぱり睡眠時間のようです。


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