ことばのかけら
桜子



 ハルニッキ0403116

あたたかな陽射しに誘われて
この道を歩もうと思った

白木蓮は前より開き輝いていた
それを見たきり
何故かうつむいてばかりいた

干された布団も
陽だまりも
取り巻く全て、何もかも
ゆるり穏やかな筈なのに
心だけが 景色に溶け込めずにいる

夜……

ベランダから星空を見上げた
鼻を上に向けた
懐かしい香りがする
遠い昔 この季節にかいだことがあるんだ……
あの時も もどかしい思いを抱えてた

季節には
街には
そして 空には
それぞれの香りがあるのかな

やりきれなさが夜空に癒える
涙が……

すこしまるくなったきもちで
窓を、閉めた。

2004年03月16日(火)



 ハルノウタ040313

見つめる瞳に
焼き付けておこう
決して忘れないように

満月白く
冴え冴えと照らす
希望へ全てを導くように


2004年03月13日(土)



 ハルニッキ(仮題)040312

薄曇り

玄関の扉を開く
鮮やかな白が真っ先に目に飛び込む
…お向かいの白木蓮

静かだ
家の裏で鳴るモーター音が気になる程度
人通りも殆どない家の前の通り
お陰で、羽織ったコートのファスナーに
布地が食い込んだのを直すのに集中出来る

集中すること、2、3分
鼻をつんざくような強烈な香り
門横の沈丁花
こちらを向いてと存在をアピールさせている

ファスナーは直らない
諦める
門扉を開けようとして、少しためらう
一瞬の間を置いて、門をひらく

・・・本当に静かだ
何もない、と言えるくらい静かだ
通りは自転車で通る人たちが圧倒的だ
子供づれの、買い物帰りの奥様方
遊びに出るのか若い学生さんくらいの年齢の少女二人
一台、白い車が通る
その音にびくっとする
黒いコートの、マスクをした中年男性
風邪ですか 鼻炎ですか お大事に


冷える
肌寒い
ピンと身が引き締まる
…ようでいて、からだの温かさを感じて却って眠たくもなる
今日の空によく似合う温度
水にほんの少しの墨が混じった空色
…よく見れば、それも互い違い、様々な灰色をしているのに気付くのはもう少し後の事…

あまりに静かで持て余す位
ファスナー直し再開
ぐいぐい力任せに下ろそうとしていたものを上げてみる
あっさりと直る
・・・こんなものか、と思う

遠くに目をやる
白いのに比べ、やや咲き遅れる紅い木蓮
雑木林のような場所にたったひとつ花をつけている樹

少し近くに目を戻す
となりのとなりのお宅の庭に咲く樹の花
…サザンカ?ツバキ?
季節的には絶対ツバキ
歩みを進めて近寄る
確認
ぽってりしている 多分、ツバキ

視点を90度変える
畑に咲く菜の花

紅、赤、黄色…そして白
憂いの似合うこんな空気は、色を鮮やかに引き立たせる

長年遊んだ空き地
只今売却中、ののぼりは先日の嵐のようなかぜですっかりくしゃくしゃ
すこし痛快

……少し歩みを進めたところで
どこからかカレーの匂い

帰ろう。

ドアを開ける
家を出る前寂しそうに鳴き叫んだ飼い犬が嬉しそうに出迎えてくれた

2004年03月12日(金)



 右肩

ふわり

大きく包まれる
ぬくもりに身を委ねるその時
顔をうずめるのは いつも右肩

覚えてる

あなたが激しく美しい
涙を流した鼓動を
それを受け止めたのは すこし狭いこの右肩


2004年03月09日(火)



 未送信

〜『たいせつな相談』
こないだは楽しかったよ。どうもありがとうね!
少し報告を。私、初めて〜

……親友に宛てたメールは
そこで文章が止まったまま
既に、ひとつき経過
別の形で、のちに伝えることが出来たけれど……

いつの間にか
自分自身の話をすることが
すこし
苦手になっている

2004年03月08日(月)



 なくては、ならない

花は
お日様のひかりがなきゃしおれてしまう

さかなは
泳げるみずがなけりゃいきてゆけない

なくてはならない
なくては、ならない
必要なもの

私にとって
なくてはならない、何か……


2004年03月07日(日)



 泣きムシ

綺麗な音色が耳に飛び込んだとき
おそるおそる切り出したホンネの後
熱い熱い紅茶の湯気に

たった一歩が踏み出せない時
怒りではらわたが煮えくり返った後
小さな世界に留まり悩み疲れた果てに

どうしようもない
かなわない……
そんな大きな優しさを感じた時

私は よく泣くようになった

「涙なんて恥ずかしい」と
意地を張って
映画を見たって泣かないようにしていたのは
つい、この間までのコトだったけれど……


2004年03月02日(火)
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