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メロディの無い詩集        by  MeLONSWiNG


メロディの無い詩集        by  MeLONSWiNG
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夏の終わり 2006年09月07日(木)


遠く想い馳せたのは
春の汗に手の震えた黄昏

近く想い感じたのは
不思議で ぎこちない時間(とき)

夏を通り過ぎて
怖いものなどなくなって
それでもまだ震えているのは
信じられない口吻が
ありえないほどやわらかいから

笑いあえる季節をふたり
いくつも通り過ぎれば いつか

思い描いた妄想もたぶん
二人の前できっと叶うだろう

夏の終わり あと一度
君の決めた心のままに
焦らないで僕は一人
朝のミルクをマグで飲み
昨夜の手のひらの感触

思いだす
きみの指と匂い
僕の腕に顔をうずめて
一瞬をいとおしむ

君の匂いが
秋を待ってる


2006年09月02日(土)


僕の妹は子供の頃
庭で遊んでいて蟷螂を捕まえた
手を引っかかれて跳ね除けようとして
もち場所を誤って首をもいでしまった

ころりと転がった蟷螂の首
上目使いに睨んだ目
その日から妹は二度と
虫に触れられなくなってしまった

虫がいつも見てる
虫がいつも見てる
虫が妹を見ている

物陰からそっと
隠れたままじっと
虫が妹を見てる



僕の父は若い頃
戦争に行ってたくさん人を殺した
戦時中食べるものも満足になくて
いつも空腹と戦ってた
だから飢えをしのぐため父は
何度も何度も何度も
犬を殺して 食べていた

時は流れても
今現在でも
公園や道端や色々なところで
かわいらしい犬も
大人しそうな犬も
人に吠えかかったことの無いと言う犬さえも
父の顔を見るといきなり

狂ったようにものすごい形相で
吠え始めるんだ

犬が父に吠える
犬が父に吠える
犬が父を憎み吠えかかる

恨みに溢れた
憎しみに溢れた
軽蔑するような視線で
吠える





僕は価値観の違いから
妻と別れてしまった
一人になって孤独にゆられ
慰みに一羽のカナリアを飼った
毎晩カナリアと会話をしながら
時を過ごした

ある日突然の出張があって
僕は1週間部屋を空けた
出先でふとカナリアに
エサをあげてこなかった事に
気づいた時は既に遅かった

家に戻って鳥篭を見たら
エサ箱に首を突っ込んだまま
カナリアは硬く冷たくなっていた

やるせない気持ちを
ため息にのせて
部屋の窓を開けて外を見たら

電線に停まった鳥たちが
30羽くらいみんなじっと僕を睨んでいた

鳥が僕を見てる
鳥が僕を見てる
鳥が恨めしげに僕を見てる

通勤するときも
休みの日でも
どこからかじっと睨まれている

鳥が僕を見てる
鳥が僕を見てる
鳥がいつでも僕を見てる

この身体に染み付いた
憎しみのオーラが
今も鳥たちの視線を集めてる


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