気まぐれ日記
DiaryINDEXpastwill


2003年09月30日(火) ふいー

 HPがどうゆうわけかおかしなことに。なおったけど。

 ルイは一軒一軒の店を見て回っていた。かわいいアクセサリーなどがあるとカルミアを引っ張ってきて見せた。
 「もう、買いもしないのに」
 「でも、かわいいでしょ」
 「そうね。でも私はあっちのほうが好きなの」
 カルミアは二件先にある花屋を指差した。
 「へえ、お花がすきなの?」
 「菜園が趣味なのよ」
 「じゃあ、いざ、出発」
 ルイは再びカルミアの手を引いた。その花屋は中年の女性が一人で開いていた。
 「いらっしゃい。何をお探しですか?」
 「えっとお……」
 店の人に聞かれルイは返事に迷った。
 「あら、それ。ノベリイチゴの苗ですね」
 カルミアは店の奥にあった苗を見ていった。
 「ええ、そうですよ。よくご存知ね」
 「私も育てたことがありますから。ところで、私たち、旅をしているんですけど、旅をしながら花の種でも植えたいと思っているの」
 その女性はいぶかしげな顔をする。
 「残念ねえ、育てることもできないのに種を売ることはできないわ」
 「そうですか。わかりました。じゃあ、私にクレンムチューリの球根をもらえますか? 帰ったら餓えたいのですか」
 「それなら、お売りしましょ」
 いそいそとその球根を取りに奥に引っ込んだ。
 「ほら見なさい、買うつもりもないのに入るから」
 「ごめん」
 「いいのよ。クレンムチューリは欲しかったの。フォーランズにはないから」
 「はい、どうぞ」
 小さな紙袋に三個ほど入れられて、カルミアに渡した。
 「おいくらですか?」
 「お代はいいよ。その球根は売れないんだよ」
 「売れない? 何故ですか?」
 「そうね、この国では飽きられてしまった花だからね」
 「でも、だからと言って売れないのは……」
 「どういうわけか、クレンムチューリは人の手も必要とせず、どんどんと自生してしまってね。普通ありえないはずなんだけど……」
 「あの、それ。詳しく聞かせてください」
 ルイとカルミアは店先にあるベンチを勧められてそこに座った。


2003年09月29日(月) なにをやってんだか……

 ほんでは、いきますか。

 ルイは甘味処にて、超ド級フルーツパフェに挑戦していた。
 「このバナナの甘さとクリームの絶妙なバランス。さらにオンシュウオレンジのすっぱさとクリーム、リンゴとクリーム、パイナップル(シロップ漬け)とクリーム……」
 「比較対照が全部クリームってなのもどうかしら」
 カルミアの突っ込みも聞こえずルイは大いに甘いものを堪能している。傍で見ているだけでおなか一杯のカルミアは向かいに座ってお茶を飲んでいる。
 「このアイスクリームとチョコレートソースの割合もいいわね」
 とかなんとかいいつつ、ルイは完食した。
 「あーおいしかった。やっぱい人間界のほうがおいしいものがあるわ」
 「こっちはあなたにおごらずにすんだわ」
 「せっかいくおごってくれるっていってくれたのにね」
 「いいのよ、別に。貸し借りはないほうがいいでしょ」
 「それはそうだけど……。そうだ、これから私たちも聞き込みしよう。このまま宿に帰っても時間が余るし」
 「そうね。でもどこで聞き込みするの?」
 「今度はウィンドウショッピングよ」
 「買いもしないのにお店に入るの?」
 「あら、いいじゃない。欲しいものを買うからお店なのよ」
 これは、バルクの受け売りだった。無理して買うよりも欲しいものを買うのだと。お金がないときはあきらめろ、という意味でもあるらしいが。
 「聞き込みは?」
 「うん、ウィンドウショッピングしながら」
 


2003年09月28日(日) 明日こそは……

 HPを少し改造してみるつもりです。リンクも張らんとならんし。それにしても開設以来いまだ約250しかアクセス数がないどうゆうこった? がんばって更新しろと言うことでしょうね。つーか、めぼしいものがないんで自分でもしょうがないと思うし、数にはこだわってないんですが……。結局、前置きの話ネタです。
 ゲーム話、始めます。相変わらずスタオー3はとまったままです。いつやりだすか不明ですが、そのうちやるつもりです。どうせやっていても止まるときがあるんで。今、ゲームボーイアドバンスSPかなり稼動してます。やはり持ち運び便利で寝る前にもできる点が効いてます。ポケモンとキャラバンハート、どちらを先にクリアできるでしょうか? 
 ああ、そういえば、「神剣ドラゴンクエスト」。はたから見ればなまら恥ずかしいゲームっすね。画面にロトの剣できりつけると画面上のモンスターがダメージ受けるあれ。
 昔知人の宅で、ピカチュウに話しかけるゲーム(タイトル忘れた)をやらせてもらったときも、「ピカチュウ」とかって画面に話しかける……いい年こいて恥ずかしい。
 でも、やってみたい。(爆)
 あとは、今書いてる「ウォンテッダー」 あれ、いつ終わるとかまでは未定です。ただ読んでわかっていただければ幸いですが、キャラ日記を書いているときよりも細かいとこは細かいです。いろいろこだわりがあるんで。気長に読んでください。


2003年09月27日(土) 敵海OVA2

 サンホームの店員さん、ありがとうございます。おかげで5巻まで見ることができました。でも、最終巻が見つからないとは……。そういえば、最終巻改装のときも見つかってないし……。もしかして、ないんじゃないですか?
でも、十分堪能できました。ありがとうございます。って、この場でお礼言っても意味ないじゃん。

 町は村に比べ、やはり活気がある。とりあえず本日の宿を取ると聞き込みを開始した。とは、言ってもアニムは副業の占いをはじめ、バルクは酒場に行ってしまった。ルイは、一人、宿に残された、いや、一人ではない、カルミアもだった。
 「何だって言うのでしょうか?」
 「しかたがないわ。二人はいつもそうなんだもの」
 ルイは部屋においてあったパンフレットを眺めながら言った。
 「あなたはこういうとき、どうしているんですか?」
 「お店を見たり、お金があるときは甘いものを食べたりしているわ」
 カルミアは、ちょっと考えてから言う。
 「じゃあ、甘いものを食べに行きましょう。大丈夫、私が立て替えてあげるから」
 「え、でも……」
 「いいわよ、行きましょう」
 「じゃあ、ここに行こう」
 ルイは持っていたパンフレットを開いて指をさした。そこには『超ド級フルーツパフェ305 今なら三十分以内に食べるとタダ』と書かれていた。
 「挑戦するんですか?」
 「うん、もちろん」
 二人は宿を出て、露店街に向かった。露店を借りたアニムが女の子に囲まれていた。
 「お主は、諦めた方がいい。しかしな、今狙っているよりもいい男が現れる」
 「え、ウソ……」
 「今の男は、今が良くても後がわからん。安泰なのは後から現れる男だ」
 水水晶を掲げてアニムがルイの方を見た。
 「よう、ルイ。お出かけか?」
 「うん、カルミアが甘いもの食べようって言ってくれたの」
 「そうか、よかったのう。ところでカルミア、金運がいいそうだ。気前よくおごってやるのがよかろう」
 「ええ、そのつもりよ」
 カルミアが笑った。
 「すまぬな、知り合いだ。お詫びに拝見料は情報でよいぞ。この先の村についての話だ……」
 その様子をカルミアが見ていた。
 「ねえ、アニムさんってああやって情報を得てるの?」
 「いつもじゃないわよ。だって取るときは取るもの」
 「そう……」
 「さあ、もう少し先のお店みたいだから、行きましょ」
 「何急いでるの?」
 「だって、超ド級でしょ? 早く食べないよ晩ご飯入らなくなっちゃうでしょ」
 カルミアはひそかに思った。あなたのお腹なら大丈夫でしょ、と。



2003年09月26日(金) 休みの日って

 時間たつの早いですね。いろいろやりたいことがあったのに……(泣)

 翌朝、やはり村人は消えている。
 「相手は幽霊じゃないとすると、私も手は出せませんからね。問題を起こしている魔族をどうかしないと」
 「でも、そんなの現れなかったじゃない? 第一魔族とは限んないわ」
 ルイはもっともなことを言う。
 「それも然りだ、ルイ。まずはこの周辺にある村か町で聞いてみよう。そういうわけだ、ルイ見てきてくれぬか?」
 アニムが言う。
 「わかったわ」
 ルイは消えていた羽を広げる。その姿にカルミアが驚いた。
 「あなた、悪魔だったのね」
 「隠してたわけじゃないけどね」
 ふわっと飛び上がり、空高くから周りを見る。一昨日来た方向にはやはり何もない。しかし、この先に町がある。結構大きな町だった。
 「あっちにあるわ」
 「ああ、そこから私は来たんです。一番近い町ですから」
 「どれくらいかかる?」
 「半日は歩きますね」
 「では、行こうか」
 アニムはすでに旅支度を終えている。バルクもだった。
 「ちょっと、待ってください」
 「なんだ?」
 「私はまだ準備が……」
 カルミアとルイは急いで旅準備をした。ついでに台所を借りて歩きながら食べられる朝食と、簡単な昼食を作った。
 ルイが示す方向と、カルミアが来た方向を確かめ村を出る。
 「歩きながらでもいいんですが、自己紹介してくれますか?」
 「? なんで?」
 カルミアの申し出にルイが理由を聞いた。
 「どう見ても、不思議な組み合わせで。そして、あなたは悪魔でしょ? どうして、こんなパーティになったのかしらって」
 「確かに、不思議だろうな。俺みたいなおじさんと、子供に年頃の女の子だもんな」
 バルクが言った。自分をおじさんと言うあたり歳を食っているのを認めているようだ。
 「はあ、あなただけは年齢相応のようだけど……」
 アニムの方を見る。子供なのに爺くさい言葉を使うのだ、無理もないだろうとバルクは思う。
 「そいつはエルフだ。そんななりでも六十超えてるんだとよ」
 「えっ、男の子のエルフ?」
 エルフの男は、希少なエルフ種族の中でも百人に一人生まれるか生まれないかというくらい希少な存在であり、アニムはその希少高い男のエルフだった。
 「それでは、あなたは里から出られないはずでは?」
 「その話は、また今度しよう。今はあまり話す気になれんから」
 カルミアは、その言葉で十分理解できた。男のエルフは人買いによって破格の値で取引されることを知っていたからだった。多分、このエルフもそんな人間たちのごたごたにあった、と。



2003年09月25日(木) 昨日の続き

 で、その外伝話に、えげつない話をかいていたり。いえ、内容的には生きることはすばらしいとか、感動的誕生とか、そんな話なんですが……。よって、アニムは決してまともなキャラでないのです。(笑)

 「はい、私は魂を静めるものです」
 カルミアは立ち上がって、おばさんに一礼をする。流れるような動作で儀式めいた礼をする。
 「でも、私たちをこのままにしておいて」
 おばさんの言葉にアニムが驚いた。
 「では、お主らは自分の存在に気づいているのか!」
 「はい、そうです。少なくとも私は、ですが……」
 「じゃあ、他の村の人は気づいていないの?」
 「だと、思います。多分」
 「詳しく、お話願いますか?」
 カルミアはおばさんに席を譲った。椅子がないのでカルミアはベッドに腰掛ける。おばさんは勧められるまま椅子に座った。
 「もう、何年になるかしらね。お気づきのように私たちは、夕方から夜にかけて実体を与えられて生きているんです」
 おばさんの話によると、ある日突然、昼に存在することができなくなったという。おばさんがそれに気づいたのは早い時期だった。他の人々は普通に接していた。昼の話をしても畑にいた、狩りに行っていたなどの返事が返ってくる。おばさんには記憶がない。
 「でも、死んだという覚えがないの。どんなに考えても、ね。私にも、他の村人にも」
 「……わかりました。あなた方のことは保留にしておきます。それと、新たに対策を考えないとなりません。もちろん、この村に起こっていることです」
 カルミアは続ける。
 「私はあなた方を助けたい。これは私たちの使命でもあるのですから」
 「ありがとうございます、巫女様」
 おばさんは何度も礼を言って馬小屋を出て行った。カルミアは、ふうと息をついて言う。
 「どうやら、魔族とかの仕業ですね」
 「魔族? なんでだ?」
 と、バルク。驚いた様子はない。
 「存在を糧にする魔族がいるかもしれないでしょう? 手伝ってくれるわよね、ウォンテッダーさんたち」
 「それなりの分け前が必要だのう」
 アニムは、商売をするような顔になる。
 「そうね、四等分よ」
 「えらい巫女様だな」
 「報酬はきちんともらえって、言われたのよ。お偉いさんから」
 バルクはイーリスを思い出す。外見からは言いそうにもないが、実際は言うのが彼だ。
 「どうやら仕事のようだな、アニム」
 「久々に魔族が相手かもしれん、というか。油断はならんのう」
 カルミアは笑った。あまりにも、二人が自信ありげに言うから。
 「よろしく頼むわね、ウォンテッダーさんたち」
 


2003年09月24日(水) アニムは……

 内話ですが、彼は外伝(?)の方で、成人してます。エルフなんで、成人するのに100年かかります。ごめんなさい、ほんと内話ですね。

 食事が終わり、四人は馬小屋に入った。昨日と同じくルイとカルミアはおばさんの家の空き部屋を借りることができた。
 「何故、私が巫女だとわかったのですか?」
 カルミアがバルクに聞いた。
 「そのローブを見りゃわかる。それと、その紋章だ」
 カルミアのローブは赤い縁取りの黒いローブで、目立つと言えば目立つ。所々に半円に三角形がついたような紋章が刺繍してある。
 「フォーランズには知り合いがいるからな」
 「そうですか」
 「で、どうなのだ?」
 アニムが聞いた。
 「ああ、はい。あれは幽霊とかではないですね」
 カルミアは言う。
 「とはいえ、魂が捕らえられているのは事実です」
 「それって、どうゆうこと?」
 「何者かが、魂を呼び起こし実体化させ、いまだここに住まさせている。ということでしょうか?」
 「しかし、そのわりには村の者は生き生きしているが……」
 「私が思うには、多分村の人々は……」
 ノックがした。どうぞ、というとおばさんが入ってきた。
 「あなたを見て、少し気になりましたの。あなたはどこかの巫女様でしょう?」
 おばさんは困ったような顔で聞いた。


2003年09月23日(火) 先日の日記にて

 オー!マイキー!とタイトルしたところがありますが、なんとそこから二件のアクセスが! 何がきっかけになるかわかりません。前も、「女剣豪」「美人のお姉さん」「ガートルードのレシピ」「シャーマンキング」でアクセスされたことはあるんですが、二件と言うのははじめてかも。

 おばさんの夕飯は、昨日と同じメニューだった。
 それで四人は残さず食べた。
 「おやおや、まだたくさんあるんだよ」
 「いえ、もうおなか一杯です。ご馳走様です」
 「おばさん、今朝はどこに行っていたんですか?」
 紅茶を飲みながらルイは聞いた。
 「畑に行っていたんだよ。あなたはぐっすり寝ていたから起こすのがしのびなくてね」
 「そうですか」
 そして、今度はアニムが言う。
 「小生たちは、明日、早くにこの村を出たいと思っているのだが、明日は早朝ゆえに黙って出るかもしれんが、よいかのう?」
 「ええ、かまいませんよ。もしかしたら私はもう起きているかもしれませんし」
 「では、お言葉に甘える。いや、本当に二晩も泊めていただき感謝している。助かった」
 「また、いつでもきて頂戴。あなた方がいると孫に囲まれてるようでね」
 バルクはエモク酒をやはりちびりとやりながら、黙っていた。しばらくして口を開いた。
 「すまないが、店はあるかい? わけ合って荷物をなくしてな、旅をするのに不便で」
 「ああ、それなら夫のがあるわ。もっておゆき」
 おばさんは立ち上がって、隣の部屋に入った。古いものであるが洗濯されてたたんだ下着類、着替え、更には保存食だと言って干し肉やパン、缶詰なんかも出してきた。
 「いいのか? こんなに?」
 「いいのいいの。これに詰めておゆき」
 丈夫そうなナップザックを出してきた。バルクは一つ一つ眺めながら入れてゆく。
 「あたし、何かお礼をしたいなあ」
 ルイは言ったがおばさんは、そんなの旅の話で十分だよ、と言った。昨日話しきれなかった旅の話を三人は交代で話した。


2003年09月22日(月) 明日、仕事だ

 休んでいると、億劫になるお仕事。ううっ誰か代わりに行ってくれ、と思うのはやはり、社会人失格なのでしょうか?
 ポケモンルビー、かなり進みました。なんとバッジ3個です(笑)4月だかに購入してムロジムでつまってほったらかして9月になって再チャレンジ。相変わらずアホだなあ、と思う。ああっ、スタオーが止まったままだ!
 ……カイナシティの曲いいですね。サウンドトラックにて歌詞付きの編曲があります。ポケモンらしい元気のでる歌に仕上がってますよ。

 アニムたちは村の入り口で夕方を待った。日没になると家々のドアが開き、人々が出てきた。
 「あれ、昨日の旅の方ですね」
 「そうだ」
 アニムが返事をした。声を掛けたのは昨日も声を掛けた村人だった。
 「どうして、村の外へ」
 「それがのう、村を出ようとしたらまた迷ってここに戻ってきたのだ」
 「そうですか、じゃあ、またあの家に泊めてもらうといいよ。あのおばさんは寂しがりやだからね、旅人は歓迎されるよ」
 そう言って、その村人は農作業を始めた。
 「今から農作業ですか?」
 カルミアが聞いた。
 「はい? 私は朝から晩まで畑仕事してますよ」
 「あ、そう」
 彼女はそれ以上何も言わず、泊めてくれるところに案内してくださいとバルクたちに言った。
 「うーん、どうやら昨日の記憶はあるようだの」
 「そうですわね」
 「それが?」
 「はい。昨日のことを引き継いでいるということは、流れに沿っているということです。こういう現象の中には死んだときで時間が止まってしまっている幽霊もいるのです」
 「そうなると、小生らは新たに来た旅人となるのだ」
 「ふーん」
 「同じ時間を、何度も過ごすんだ」
 ルイがつまらなそうに言った。
 おばさんに会っても、案の定、また来てくれたのかい、と迎え入れられた。
 「食事の用意ができたら呼ぶからね」
 おばさんがうれしそうに言う。
 「生きているみたいね」
 カルミアが言った。
 「あたしも、騙された。生きているのと変わらない」
 ルイは信じられなかった。彼女は悪魔族だった。人間よりは、そういう生きている生きてないの区別には敏感なはずなのに、この村ではそれも狂わされているようだった。
 「カルミアだっけ? どうだ、見てわかりそうか?」
 「いえ、まだなんとも……」
 彼女は首を振った。
 「ただ、ここまでリアルに感じるのは、私たちが、何らかの術にかかっているようです」
 「うーん」
 バルクは腰に挿した剣を見る。危険なことがあれば知らせてくれる剣だった。もしかして、この剣も狂わされているかもしれない。ドラゴンの長、セルヴェスも、が。それとも、特に危険がないから、だからかもしれない。実際一晩泊まって危険はなかったのだから。


2003年09月21日(日) 今日は日曜日なんですが(再び)

 ノリに乗ってんで、昨日の続き書きます。

 翌朝、ルイは早くに目覚めた。家は静か過ぎた。リビング(昨日夕食をご馳走になったところ)に入ってもおばさんの姿はなかった。台所にも寝室にもいない。
 「畑仕事にでもいったのかな?」
 馬小屋のほうにも行ってみる。アニムはすでに起きていた。
 「おはよう、アニム」
 「お早う、ルイ。ずいぶん早いな」
 そういうアニムはいつも早い。ルイは思う。
 「おばさん、見なかったよね」
 「ああ、見ないな」
 「やっぱり畑仕事かしら?」
 「そうかもしれんな。田舎というのは早いからのう」
 散歩がてらに農作業の手伝いでもするかと、アニムはバルクをたたき起こした。バルクがしぶしぶ起きて着替える(おばさんは寝巻きも用意してくれた)と三人は畑のあるほうに向かった。
 「誰も、いない」
 村中がしいんとしている。三人の胸中に不安が広がった。
 「ああっ!」
 アニムが突然叫んだ。
 「どうした。びっくりするじゃねえか、アニム」
 「死体が動き出す……村全体がそのような状態だったとはのう」
 「そうか、あのおばさんも動き出した死体?」
 「でも、死体じゃなかったみたいよね」
 「うーん……」
 三人は黙ってしまった。が、腹が減った。
 「なにか、食べるもんあるか?」
 「勝手に食べちゃっていいのかな?」
 「腹が減っては戦はできぬが……」
 村中を探しても何もない。
 「じゃあ、昨日食べたものはなんだったの?」
 「なんだったのだろうかのう」
 疑問だけが増えてゆく。アニムは仕方がなく携帯食の乾パンやら干し肉やらを二人に分けた。
 昼近くになっても何かが変わる気配はなかった。アニムとバルクはそれでも何かないかと探して、食べられる木の実や果物を採りにいった。
 ルイは一人で留守番していた。畑にはまだ葉っぱしか生えてない人参。別の家を覗くときれいに整頓されている。かまどになべが置いてあってスープが入っている。でも誰もいない。
 「こういうの神隠しっていうんだっけ?」
 実際神族はそんなことはしない。ルイはふと可笑しくなった。
 「そうね、そう言うわね」
 ルイが驚いて振り向く。白いローブを着た女の人が笑っていた。
 「驚いた、こんなところに女の子がいるんですもの」
 「あなたは誰?」
 「ごめんね、驚いた? 私は聖職関係の仕事しているの」
 「聖職? シスターとか?」
 「シスターとうのはどうか知りませんが、神に仕える身であればそうなのでしょう。私は魂を沈める者です」
 「そう、なんだ。じゃあ、ここに夕べ人がいたのは幽霊?」
 「周辺の方々はそうおっしゃいますが、私も実際見てみないとわからなくて……」
 ルイは、自分のほかにも二人の連れがいることを教えた。そして、夕べの話もした。
 「それで、その二人は?」
 「そろそろ戻ってくると思いますけど……」
 ルイの言うとおり、二人は戻ってきた。アニムは川魚を釣ってきたらしくその辺に放ってあった籠に入れてきた。同じくバルクも果物やら木の実やらを籠に入れている。ついでに狩りもしたのかウサギも片手にあった。
 「二人ともさすが……」
 ルイは感心してあきれた。それがこの二人の強さなのだが。
 「おい、ルイ。この人は?」
 「あのね、聖職者の……」
 「カルミアです」
 「ふーん。フォーランズの火神巫女か」
 バルクがぼそりと言う。
 「よくご存知ですね」
 「ああ。王家にいる家庭教師には苦労するだろ」
 「ええ、もう、巫女の身は男性の方とはお付き合いできないと言っているのに……って、よくご存知ですね」
 「まあな、で、そのあんたが何故ここに?」
 「ああ、はい。依頼されまして」
 二人が話している間、アニムは手際よく魚を枝に刺し、ウサギをさばいた。ルイはアニムに頼まれ火をおこしている。
 「それで、ここの幽霊を沈めるためにわざわざ南クレンムに?」
 「はい。報酬は王族からもでるので」
 「あんた一人でか。じゃあ、あんたただモンじゃねえな」
 カルミアは黒髪の華奢な女性だった。しかし、いくら相手が幽霊でもそんな彼女を一人、出させる理由は決まっている。
 一人で十分ななにかが備わっているからだ。
 「魚はそろそろいいぞ。早く食べないと夕方になってしまう。夕方になる前に村の入り口に戻るのだ」
 香ばしいにおいに携帯食しか食べてないバルク、ルイはうなずいた。
 「私も、いただいていいでしょうか?」
 「どうぞ」
 カルミアも魚を手に取る。
 「でも、なんで村の入り口に戻るんだ?」
 「確かめることがあるのだ」
 アニムも魚にかぶりつき、言った。


2003年09月20日(土) 今週も終わりますね

 うーもう、九月も後半ですね。早く感じるのは歳のせいですか? まだそんな歳じゃないような気もしますが。

 「死体が動くって、どういうことかしら?」
 「妖精だろう。いたずら好きな妖精がいると聞いたことある」
 「しかし、いたずらがすぎると妖精は妖魔となるのだ」
 食事が終わり、三人は馬小屋に戻った。おばさんが気を利かせてルイはおばさんの家の空き部屋に寝かせてもらうことになったのだが、寝る前に三人は集まる。
 「へー、妖魔になるんだ」
 ルイは素直に感心した。バルクは妖精など信じてなかったのだが、妖精主に会うわ魔王に会うわで、もう何も感じていない。
 「妖精がしわざとなりゃ、物好きな妖精だよな。死体に宿るなんてよう」
 「人が驚くのを見るのが好きなのだよ、そんなのが多い」
 「やだなー、だからって死体に宿るのは」
 「それより、ルイ。説明してもらおうか?」
 「何を?」
 「おぬしが慌てていたわけだ。小生もバルクも巻き込まれたのだ。聞いてもよかろう?」
 ルイが都合悪そうにしていたが、話し始めた。
 「あのね、あたし、おばあちゃんの後を継いで総統にならなきゃいけないの」
 「総統?」
 「悪魔族は総統というのだ。統べる者の名として。王様みたいなものだ」
 「ふーん……って、ルイ、お前、じゃあお姫様ってことか?」
 「そうじゃないわよ、普通に過ごしていたわ」
 普通とはどうゆうもんか? バルクは自分の身に置き換えてみる。彼もまた、王族なのだが、王族らしいことは自分はしていない。
 「でも、遅かれ早かれ、総統の座に座らないとならないの。でも、まだ座りたくない」
 ルイはそこで口を閉じた。アニムは直感的に、まだあるなと思っていたがそれ以上は聞かなかった。
 「わかった。ちょうど暇をしていたのだ。しばらくルイに付き合ってもよかろう、なあバルク」
 「……うん、ああ」
 バルクはまだほけっと昔を思い出していた。
 「どうした? バルク? 疲れたのか? いい歳だものな」
 「はん、おめーに言われたかねーな。そんなことはともかくだ。俺はいいぜ、どうせやることもまだ見つかってねーし」
 「ありがとう、バルク、アニム」
 「さて、逃げ回るのだ。どこへ行く?」
 「お前なあ、ここが南クレンムのどこかもわからんのに」
 「どこにいようと目的地も決めんで、どう動ける?」
 「どうせなら、行ったことのないところがいい」
 「では、な」
 アニムが荷物から四つ折にしたふるい紙を出した。開くとそれは簡易的な世界地図だった。もっともあまり正確ではないが。
 「ここがいまいるところだ」
 アニムが右下、つまり南東の広い大陸を指した。
 「この小さな四つの塊は?」
 ルイが真ん中より少し上にある四つの島を指す。
 「そこは行ったことがあるだろう。四神諸島だ」
 「フォーランズがあるところね」
 「確か、あの時はビアソーイダには行けなかったな、バルク」
 「じゃあ、ビアソーイダに決まりね、バルク」
 「お、お前ら……」
 「エールでは酔えぬだろ、バルク」
 「確か名産がチョコレートなのよね、バルク」
 「……勝手にしろ、もう寝る」
 気落ちしたのか、疲れたのか、バルクはベッドに入った。
 「小生も寝るか」
 「そうね、じゃあお休み、アニム」
 「ああ」

 


2003年09月19日(金) 冒険に疲れたら一休み

 ちょっと長いとこ、ルビーをほったらかしにしたら木の実がかれて土に戻っていた。いっぱい植えていたのに。再度挑戦。

 部屋はまずいが、夕飯はうまい。
 「たくさんおあがり。まだあるからね」
 「うわあ、これおいしいー」
 ルイは魚のムニエルがお気に入りになり、アニムは焼きたて雑穀パンに自家製らしいジャムを盛って大口を開けていた。
 「まさかこんなところでうまいものが食えるとはな」
 川えびのから揚げをつまみにしながらエモク酒をちびりちびり飲む。バルクは部屋のことなど忘れた。
 「ところで、ここはどの辺になるのかのう?」
 アニムも魚のムニエルを食べながら聞いた。
 「え、あんたたち、ここがどこかわからずに来たのかい?」
 「実は、道に迷いながら来たのでのう」
 「そうかい、大変だったね」
 おばさんは少し黙ってから答えた。
 「ここは死人の村って呼ばれるところだよ。地元では近づかないよ。だから旅人もすくない」
 「死人の村?」
 アニムは知っていた。地図で言うと、右の方角にある南北に分かれたクレンムという大陸で、その南側。村の位置まではわからないが、そこにあると言うくらいは知っていた。
 「何故、そんな名前がついたの?」
 「それはね……」
 「昔、クレンムの北と南は戦争ばかりしていた。小さな村は作戦場になったり駐屯地になったりしたんだ。そして、死体置き場にもな。だから」
 「ええ、そうです。でもそれだけじゃないんです。その死人が動き出したことからその名がついたんです」
 「死人が、動き出す?」
 「ええ、ここは、そういうところです。今でも葬儀は棺に釘を打ち付けてかなり深く埋められます。決して出てこないように」
 おばさんは、さあさせっかくの食事がまずくなっちゃう話はやめましょう、と食事を続けさせた。


2003年09月18日(木) さて、いきますか

 ちゃっちゃっとね。

 ルイに案内されて、夕暮れ前にその村に着いた。そこは小さな村で宿もない、という。村人は、あそこなら泊めてくれると親切に言った。まれに来る旅人のために解放している施設があるそうだ。
 「なんだよ、ここ」
 バルクがあきれたような声で言った。
 そこは、馬小屋を改造してベッドを置いたような場所だった。
 「ベッドがある分、感謝しなくてはの、バルク」
 アニムは満足そうにベッドに腰掛けた。
 「ごめんね、あたし、慌ててたから」
 「今更、言っても始まらないな、ルイ。止まれる場所があっただけでもな」
 そこに一人の初老の女が入ってきた。
 「お食事ができましたよ、三人とも」
 「はあ、夕飯?」
 誰も頼んだ覚えはなかったが、それがこのおばさんの行為と聞くと三人は勇んでついていった。
 「なんにもない村ですまないね。たまに来る旅人にはこうやって食事を提供しているんだよ:
 「ありがたいの、でも、何故無償で?」
 「あたしはね、一人だから寂しいんだよ。きにせずにお食べ」
 聞くと、このおばさんは夫にも死に別れ子供は独立したために、村でただ一人、一人暮らしをしているという。そして、馬小屋を改良して旅人に開放しているのもこのおばさんだった。


2003年09月17日(水) いよいよ本番です

 やっと、始まりです。

 うっそうと茂った、多分森の中と思われるところに、三人は急に現れた。
 「ここはどこなんだ?」
 Tシャツによれよれのジーパン、腰には大剣を指している中年間近の男はぼんやりと言った。
 「さあ」
 フードを目深にかぶった子供が返す。
 「適当に飛んだから……」
 十七、八歳くらいの少女が言葉を詰まらせた。
 瞬間移動。どうやらルイには使いこなせていないらしい。
 「ルイ……。説明してもらおうか?」
 中年間近の男、バルクはルイを見る。
 「それよりも、先に村か街か探さなくては。日が暮れたらやっかいだ」
 それを制したのは子供らしいアニムだった。もっともその言葉遣いは年寄りのようだったが。彼の言うことももっともなのでバルクはルイに、空から街か村を探すように言った。
 「わかったわ。結局はあたしが悪いんだし」
 飛ぶのは苦手なのなどいいながらもルイは羽を広げ、空に向かった。
 「アニム、荷物もってきてるか?」
 ルイに探させている間、バルクは聞いた。
 「むろん」
 「俺は宿に置いてきちまった」
 荷物と言うほどのものは入ってないが、非常食、何枚かの着替え、水筒など必需品が入っている。一通り購入するにはそれなりの金がかかる。
 「だから?」
 「金貸してくれ」
 「おぬしは、何故あの剣がなくなったというのに、小生にたかる!」
 「しゃーねーだろ、荷物置いてきちまったんだしよ!」
 「バルクー! あったよー!」
 ルイが慎重すぎるほどゆっくりと降りてきた。 
 「小さな村があるよ。結構歩くかもしれないけど」
 「ルイ、すまんが上から案内してくれぬか? 小生らが迷わんように」
 「うん」
 ルイが再び浮き上がる。そして、こっちよと指をさす方へ二人は歩き始めた。


2003年09月16日(火) 今日のお話

 ですが、前作の最後と同じであります。でも文章まではおんなじではないと。こっちにも都合があるんで。ってただたんに調べるのが面倒なだけです。すんません。

 バルクは宿屋で一息ついた。一年ぶりのメリーレイク島だった。宿屋の食堂で、店主が久しぶりだなと言った。ここにくると一年前を思い出した。ここからあわただしい日々が続いたのだ。そして、ウォンテッダーとして、目的を果たした。
 「一年だったな。どうした?」
 「ああ、最初は忙しかったよ」
 だからと言ってこの店主に、ドラゴンの長に会ってと言っても信じないだろう。妖精主に会ったと言っても信じないだろう。魔王に会ったと言っても信じないだろう。
 そう思うとバルクは少しむなしくなった。
 「まさかお前まで、妖精主にあったなんていわないだろうなあ」
 「はあ?」
 店主が指さすほうに目を走らせると、見慣れた奴がアイスティーをすすっていた。
 「アニム!」
 「よう、バルクか、久しぶりだのう」
 「お前も、ここに?」
 「まあ、やることの半分はまだ終わってないしのう」
 「俺は、剣を返してきたぜ」
 「そうか」
 「お前は?」
 「小生は、故郷を見つけた」
 「へえ、それで」
 「聞くな。あんなとこ知らん」
 「知らんてな……」
 どうやら何か酷い目にあったようだが、バルクは聞かなかった。のちのお楽しみである。
 「ルイはどうしているかのう」
 そう、アニムがつぶやいたとき、宿の扉が開いた。
 「バルク、アニム、助けて」
 「ルイ!」
 アニムとバルクが同時に振り向いた。
 「あたし、いやなの。総統になんかなりたくない。どこでもいい、逃げよう!」
 リュレイミアことルイはそう叫んだ。一種の錯乱状態で、今落ち着ける状態ではなさそうだった。
 「とにかく、ここを離れなきゃ」
 ルイが二人の腕をつかむ。
 「何をする気だ、ルイ」
 「瞬間移動よ」
 「のわっ!」
 三人はその場から消えた。
 「まて、代金……!」
 店主の言葉はむなしく食堂に響いた。



2003年09月15日(月) 今日は琴似にて

 札幌の琴似と言えば古本屋の宝庫だったのですが、なくなってました。(泣) それでも4軒回れたんですが、GEOにて諦めてたゲームを発見。即購入しました。ありがとうGEO! ありがとう琴似!

 「ルイ? ルイ!」
 リュレイミアを呼ぶが返事はない。ルイファーナは館のあちこちを歩き回った。しかし、みつからない。
 「まさか……」
 人間界へ行ってしまった、と思いリュレイミアの部屋を開けた。もちろんだれもいない。
 「ルイ……」
 ルイファーナはだからといって、すぐリュレイミアを探さなかった。
 「ごめんね、おばあちゃん」
 リュレイミアは大きなこうもり羽を広げ、人間界へ向かう。空へ向かうようにして人間界へ向かう。そうすると、人間界の上空にでる。そこで彼女は大きくバランスを崩した。なれない空と、もともと彼女が跳ぶのが下手だったからだ。
 「ああ、この感覚、この間と同じだあ」
 ひらひらと落ちる彼女。そこは、悪魔が舞い降りる島メリーレイク島だった。


2003年09月14日(日) ひさしぶりに

 GB版ドラクエ1・2やりました。発売日に買っておきながらかなり長らくほっぽいてました。2からさきにやったのですが、なんとまあ、どこまで何をやったのか忘れてしまい、ラゴスの居場所すらわからなかった。よかった見つかったよ。で、機織機はどこさ? ともかく、わすれてます。同じように、FFコレクションの4はまだ途中で、やっぱりどこまでやったか覚えてない。地下世界にいますが……。
 ゲームはすばらしい。(笑)


2003年09月13日(土) ええと、

 ゆっくりですが、進めていきますね。

 アニムは部屋に戻った。狭い部屋でベッドのみ置いている部屋。トイレなどは共用の安宿。それでも、ほっとした。フードをはいでベッドに投げ捨てる。長いたれた耳が現れる。エルフの特徴の一つだった。
 さて、寝るとするか、と思いベッドにもぞもぞと入っていった。数分もたたないうちに寝息がする。途中何度か目が覚めた。物音で目が覚めるようにできている。
 「バルクがいればゆっくり寝れるのだがのう……」
 彼はぼやいた。バルクは人一倍生きることに関しては強い。彼が高いびきで寝ていれば安心してよいということだった。
 それも今は贅沢なことだとアニムは思い直して眠った。枕下には護身用ナイフがあるが、あまりうまく使えない。
 結局あまり眠れずに朝を迎える。顔を洗ってフードをかぶりなおし下に降りた。昨日のマスターではなくおかみさんが朝食の準備をしていた。
 「おや早いね」
 「まあ。できれば卵料理も欲しいんだが」
 「あいよ。何がいい? なんでもいいよ」
 「では、おかみの自慢の一品を」
 「なんといってもオムレツだね。まってな」
 焼きたてのパンとカフェオレを出し、おかみは奥へ引っ込んだ。
 「そういえば、もう一年になるのう」
 地図を見れば左下に位置する広大な島、メリーレイク島をパンに木苺ジャムをのっけながらぼんやりと思い出す。そのうちジャムがたれてきてあわてて口に入れた。
 「おまたせ。これは自信の一品だよ」
 「おお、これはうまそうだ」
 自家製ケチャップをかけてフォーク片手にアニムはそれを平らげた。
 「おかみ、ここからメリーレイク島へいけるか?」
 「ああ、行くのかい? じゃあ、急いだほうがいいよ。今日出航だからね。ここは乗る人も少ないからその日の受付でも乗れるよ」
 「ありがと、おかみ」
 アニムは急いで朝食を平らげ、宿代を払って宿を出た。そして港へ向かう。


2003年09月12日(金) 主婦だっ!!

 すごいよ、イズミさん。さすがというべきか。彼女を勧誘するには、一師団全滅覚悟で。あと体お大事に。(笑)

 「しかし、お前ほどのウォンテッダーなら魔族も倒し放題だろ」
 「あのな、なんでそんな命がけしなきゃならねえんだ?」
 マスターの問いにバルクはつまらなそうに答える。鳥のフライをつまみに三杯目のエールを飲んでいた。
 「魔族ってのはな、ホントにやばいんだ。あいつらに会うと生きた心地がしねえ。もっとも俺の姪っ子なんかは平気で切りつけるんだがな」
 彼の姪にあたるヘネシーは、千年に一度生まれるかどうかの逸材で、魔族を滅する力を持っている。それに、度胸も性格もビアソーイダの男ども顔負けであった。
 「俺は、うなもんに会ったことねえからな。まあこんな宿、経営しているから無理ねえけど」
 「あいつらには会わんほうがいい。あ、でもな、中にはいい奴もいるからよ。あいつらの世界にもいろいろあるんだよな」
 「ふーん」
 マスターはつまらなそうに聞いていた。
 「おい、もう一杯くれや。あと、イカの燻製も」
 「へいへい。もっと面白れー話ねえのか?」
 「面白い? たとえば」
 「そうだなー。魔王なんかどうだ?」
 「アインマルト島のか?」
 地図で見れば北のほうにあるその小さな島には魔王がすむと言われている。
 「それしかねえだろ。お前行ってきたって言っただろ」
 「ああ? ああそうだ。でな、会ったと言ったら信じるか?」
 「信じるわけねえだろ? あんなもん。村の奴らはどうだったって聞いてんだよ」
 「村の奴らは、もうとりこだな。なんだか魔王は村のためにやってきたって感じで」
 「へえ、笑っちまうな」
 マスターは喜んだが、バルクはつまらないことを思い出した。あいつはカルストラとか言ったっけなあ。


2003年09月11日(木) ウォンテッダー

 その昔書いた小説の続編。キャラ日記でおなじみなやつらが出てきます。気長に楽しんでください。細かなところも書きたいと思うので。

 そこは広い執務室で、ろうそくのような頼りない光が頼りな部屋だった。
 ルイファーナは正直「むかつく」状態だった。口を開けば、そう発するだろう。
 「あんたの言い分はわからないでもない。しかしそういうわけにもいかない。われわれにはわれわれの役目がある」
 「総統、それでも私は……」
 「もういい、下がれ。私が抑えられているうちに」
 「失礼します」
 彼女が心底腹が立っているのをわかったのか、男は立ち去った。それを確かめてしばらくすると、彼女は叫んだ。
 「っんとにむかつく! あの大バカ野郎!」
 その声を聞いて彼女の侍女が駆けつけた。
 「ど、どうしたんですか?」
 「あ、ごめん。全くもう、こっちの身にもなってくれよって言いたくなるね」
 「例のことですか?」
 「ああ、そうだ」
 もう一人、こっちに向かってかけてくる者がいた。
 「おばあちゃん、どうしたの?」
 「どうもしないよ」
 彼女の孫のリュレイミアだった。彼女は少し前まで人間界に行っていたが
ひょっこりと帰ってきて、今は元いた祖母の前にいる。ルイファーナは彼女の祖母だった。祖母と言ってもその姿形は人間齢ではまだ小さな子供しかいないような若さである。
 「ちょっと、夫婦喧嘩よ」
 「おじいちゃんと? おばあちゃんも若いわね」
 「なんとでも言って」
 「で、おじいちゃんなんだって?」
 「お前を天界に即位させろって。私はここ地獄の総統として継がせたいんだけどね」
 「……またその話でもめたのね」
 「しょうがないさ、ここはいつもそうなんだ。もめずにすんだことはないって。さ、ご飯にしよ」
 「うん……」
 リュレイミアは祖母と昼食をとりながら考えた。もう一度ここを出よう。私抜きで、おばあちゃんたちでこの場を収めよう。
 彼女にはもう、どうでもよいことだった。どう出ようと、彼女はどちらかにしかならない。自分が帰ってきてからと言うもの、千とんで三回目の夫婦喧嘩だった。
 今日、ここを発とう。


2003年09月10日(水) 敵海OVA

 を、見ました。まず、ビデオ自体探すのゆるくなかったです。ビデオ屋が改装したのかビデオが散らばっている中、探してくれた店員さんに感謝。
 気になるのはキャラクターデザインが今の感覚に合わない? まあ十三年前に作られたアニメだし。でも、原作にとても忠実で面白いです。

 アニムは夜の客のための商売をしている。昼間は女の子たちにきゃーきゃー言われているが、夜は静かにプライベートな話を中心に客の相手をしている。
 占い。それが彼の副業。昼は、女の子が遊び半分に恋愛話に付き合い、夜は沈うつな表情をした人々の相手をしている。
 が、今晩は彼一人、オレンジジュースを飲んでいた。相手は宿の酒場で働くマスターだけだった。
 「もう一杯いくか?」
 酒場に来てジュースを飲むのは彼くらいだが、マスターは気に留めなかった。今日はからきしだが、彼のおかげで客が耐えないことがあるからだ。
 「いや、いい」
 「じゃあ、暇だから旅の話でも聞かせてくれ」
 「ああ、小生としばらく同行していたバルクっていう男がいてのう」
 「へえ、あのバルクかい?」
 「うん、あのバルクだ。あやつ、「貧乏になる剣」を持っているせいでちょくちょく財布は落とす、賞金首の賞金が下げられる、ぼられるで、小生にもとばっちりがきていた」
 「ふーん、なんで手離さないんだ」
 「それがのう、その剣、一応は魔力がかかっていて魔族が切れるんだ」
 「魔族をねえ。俺はあましぴんと来ないなあ」
 「そうだろうが、そこにいる女は魔族じゃないかの」
 アニムが振り向いて奥のテーブルを指差した。すると、美しい女がにっこりと手を振って消えた。
 「ああ、まだいたんだ、あの美人さん」
 「むろん、魔族だけでないが……。あと知っての通りバルクは剣の腕はよい。当たり前だが」
 「それで、魔族をとっつかまえて賞金上げていたんだな」
 「ああそういうことだ」
 「で、おちは?」
 「うむ、おちはないが、結局あの剣は妖精主が封じて使えぬ剣となった」
 「……ちょっとまってくれ。なんでそこで急に妖精主がでてくる? んなもの、幻想物語だフィクションだ御伽噺だ」
 「冗談だ、気にするな。ああ、そうだ少し話を続けようか。おぬしが好きな捕り物劇をな。そうだな、喉が渇くからレモン水でももらおうかのう」
 アニムは取り繕うかのように言った。しかし、冗談ではなく彼は妖精主に会っている。 


2003年09月09日(火) キャラバンハート

 楽しいですね。すっごいぞろぞろと並んでて。馬車でスペースとってます。あれ、キャラバンってさ、行商人みたいなもんじゃなかったっけ。まあ、いいや。

 男はカウンターについた。いつもの、と言ってマスターに注文する。
 「お前、確か……」
 「おう、久しぶりだな」
 「誰だっけ?」
 「お前な。バルクだ、バルク」
 「おお、いつものと言うと、エールだな」
 ジョッキになみなみと注がれたエールとジャーキーを一本カウンターにおいた。
 「あのちっこいのとかわいい娘さんはどこにいるんだよ」
 「ああ、別行動」
 「お前、一人か。大丈夫か?」
 「あん? 何言ってやがる。俺を誰だと……」
 「ああ、そうだよな。お前、一応名の馳せたウォンテッダ−だよな」
 「うん、ああ」
 とは言っても、バルクにはもう、求めるものはない。今は国に帰る気もなくぶらりぶらりと旅をしている。いや、それで目的を果たしている。彼の持つ剣に様々なものを見せているのだ。そのために張り合いのない日々をすごしていた。だからと言って毎日の剣術訓練はサボってはいない。サボることのできない身についたことだった。
 「ところでよ、代々剣収集家の頼みだが……」
 「断る。これはただの剣じゃねえ」
 「ただの剣じゃないからほしんだよ」
 「うるせー、代々集めた剣を売りやがって何ほざく」
 「店建て直すのに使ったんだよ。でなけりゃ、宿としたら店つぶれる」
 まったくだ。ぼろ屋で隙間風の入る部屋はたくさんだ、そう思いエールを追加する。
 「ちぇ、金で困ればわかるだろ」
 「金で困ったことならかなりある」
 バルクは、少し昔のことを思い出した。彼は以前、「貧乏になる剣」を持っていた。
 


2003年09月08日(月) 一休み

 また、キャラ日記書こうかな、と。でも今日は寝ます。明日、この場で何か書きますね。
 では、はじめます。「ウォンテッダー」

 ウォンテッダー。求める者たち。
 ある者は腕を鍛え最強を求めて、ある者は病気から救うべく幻の秘薬を求めて、ある者は親の敵を求めて……。それらを全部ひっくるめてウォンテッダーと呼ぶ。
 ウォンテッダーの収入源のほとんどが賞金首のために、いつしか目的が賞金稼ぎとなってしまう。しかし、本物の「ウォンテッダー」は本来の目的を忘れず諦めずに今日も行く。  


2003年09月07日(日) 日曜企画 キャラ対話

 「フェアリードール」いかがでしょうか? 日記の中ではなんだか込み入ったこと省きまくりですね。そんなわけでキャラ対話でもやろうかと。ああ、形式は某4兄弟の座談会みたいなものですよ。

夏目 「はい、これでおわり、と。なんかあんまりぱっとしない終わり方だよな」
森  「著者にそれを求めてはいけないよ、夏目君」
セリナ「そうですよ、トーマ様。一番かわいそうなところをつっこんじゃだめですよ」
夏目 「クイーンの会社のことなんか最後でああやって終わらせて。俺にも一体何がなんだかわからないうちに終わったぞ」
井上 「結局、先代の王サナクロティンだかが、記憶を現代に投影して終わったんでしょ。人類には無害だってことだね」
セリナ「たまに見える方もいるみたいです」
森  「おかげで精神科に患者が、幻を見るって駆け込んでね」
井上 「それと、ドールに妖精が宿るようになって、セリナのようにどじを踏むとか主人に従わないとかで、故障だって持ってくる客がいるんだよね」
夏目 「一概に無害っていえないんだな」
森  「しかし、貴方も変わりましたね」
夏目 「まったく、初日とは別人だよな」
セリナ「一見ミステリーですよね。どこをどうやったらこの話はサウンドノベルになるんでしょうか?」
夏目 「忘れてたよ。と、いうか著者も忘れてるよ」
森  「もともと妖精の女王が現れてそれで何かおこって終わりみたいな話だからね」
セリナ「その女王も何もしないうちに話が終わってしまいましたしね」
井上 「そういえば、夏目さんのモデルは著者が読んだ海外ファンタジーから来てるとか」
夏目 「俺は犬の妖怪が活躍している漫画のかと思ってたけど」
セリナ「著者はもともとそんなような話をいくつかかいてますけどね」
森  「あと、ただ単に子供を生ませようとしたんじゃなくて、クローンを生ませようとしたとか。結構グロい事考えてたようだよ」
井上 「クローン? どうやって」
森  「大人の方はよく考えるとわかると思うんですがね。今は技術が発展してますから」
セリナ「著者のメモにはトーマ様の過去話が殴り書いてたり」
夏目 「どきどき新婚生活森編の断片が頭に入ってたり」
井上 「高校の時、コンピュータ占いで変態度ぶっちぎっていた著者ですからねー」
森  「それでは私は失礼しますよ。こんなバカのような対談いつまでもしてられませんからね」
夏目 「逃げるんだな」
森  「では、夏目君。新婚生活編で待ってるよ」
セリナ「相手はトーマ様と決めているみたいですね」
井上 「さて、僕もそろそろ」
夏目 「じゃ、青春アドベンチャーの最終回らしく」

全員 『それでは、また会う日まで!』

     


2003年09月06日(土) 「フェアリードール」最終回

 では、お楽しみくださいませ。

 それが起きる、数分前、夏目は忘れていたことに会った。クイーンの社員だった。
 「ご同行、願います。夏目様」
 「あんたらに同行しなければなんないのはなんでだ?」
 「貴方は、妖精を取り込んだ。私たちは、その妖精が必要なのです」
 「そんなこと、知るか。また大事な妹をお前らにやるわけにはいかない」
 夏目ではない、誰かがしゃべった。夏目の意識は押し込まれるように内側に入った。
 (先代の王か……)
 「お前ら、やり方がせこいんだよ。失せろ」
 その声とともに、何かが起きた。目の前の景色ががぐんにゃりと曲がる。
 「これで、いい。成功したよルネ。これなら文句ないだろ」
 急激に意識が戻った。たとえるなら魂が体にもどったっという感じだろうか。しかし、夏目はすぐに意識が遠くなった。

 気づくと、そこは見慣れた病院だった。
 目を開き、起き上がる。
 「あれ?」
 「やあ、夏目さん。久しぶり」
 井上だった。
 「井上さん?」
 「うーん。今日は暑かったしね。最近体の調子悪いんじゃないかい? 森先生の話によると、貧血じゃないかって」
 道でぶっ倒れて、それを見た通行人が救急車を呼んだらしい。それでセリナが井上に連絡し、駆けつけたということ。
 「すいません。もう大丈夫です」
 「なら、いいんだけど。ところで、今日で一週間だけど何か変わったことはないかな」
 「変わったこと?」
 彼は立ち上がって窓を眺めた。そこには普通の街の景色が広がっている。しかし、透明な何かの景色が重なっていた。
 「あ……」
 重ね撮りした写真のように街の中に森が、湖が、山々があった。
 「もう、変わったことがあったみたいだよ」
 「え?」
 井上には見えないようだ。夏目はやはり女王を取り込んでいるからか、それが見えた。幻のような小鳥が入ってきて夏目の肩にとまった。
 その後、検査により異常はないと言われるとすぐ退院となった。
 「ふうん、夏目君には見えるんだね」
 森は夏目の話を聞き、街を眺める。
 「うん」
 「一応眼科にも見てもらうかい」
 「他のも見えるかもしれない」
 「冗談だよ。少し、うらやましいね」
 「何が?」
 「貴方は、妖精に選ばれた人間だからね」
 それから家に帰り、心配そうにしていたセリナを安心させた。
 「これは、記憶です。記憶を投影させたんですね、先代は」
 セリナにもその風景を見ることができた。
 「トーマ様にも見えるんですね、よかった」
 「ねえ、先代の王と今の女王って……」
 「兄妹ですよ。それは仲のよい兄妹です」
 「そうか……」
 だから、妹を悲しませず喜ばせる手段を選んだ。

 その後も夏目は平穏に過ごした。相変わらず体は気ままで、相変わらず濃いコーヒーを好む。セリナといえば、たまに失敗している。
 前と違うことといえば、たまにドールを見かけると何かが重なって見えた。それは妖精が宿ったドールだった。

                      終わり


2003年09月05日(金) 明日で終わりたいなあ

 フェアリードール。終わらせたいです。

 その日は、何事もなく朝を迎えた。夏目はいつものようにセリナが入れたコーヒーを飲んでいる。
 昨日、美幸がきた。
 「夏目さん、久しぶりですう」
 「ああ、天藤さん。こんにちは」
 「今日は、紀代さん、いないんですね」
 「え、ああ」
 夏目はセリナを見た。にこりとしている。自分が、男に戻ったのを気づかないでいた。
 「とっくに気づいていらっしゃるかと思って……」
 あとでセリナに聞いたらそう返ってきた。
 「ああ、もう俺、どっちでもいいや」
 男でも女でもやることは同じだった。
 もしかしたら最後かもしれない夜を、彼はいつものように過ごした。違っていたのは、セリナが安ワインを差し出したことだった。
 「ああ、それ、もらいものの……」
 「はい、冷やして飲むと飲みやすいって」
 「せっかくだから、一杯だけもらうよ」
 「残りは?」
 夏目は立ち上がってベランダをあけた。猫が数匹入ってくる。
 「リュウノスケ、お前らもご相伴にあずかるか?」
 「猫はワイン、飲みません。何か違うものをあげますね」
 にぎやかな夜だった。そして猫たちが去り、電気が消える。

 「さてと、バイト行かないとな」
 「そうですね。お気をつけて」
 「うん」
 玄関ドアを開ける。そこに広がっているものはいつもの風景だった。
 「行ってくるよ」
 「いってらっしゃいませ」
 電車で数駅というバイト先。夏目が昼休みに外に出ると、それは始まった。


2003年09月04日(木) 黒猫!

 そろえてしまうのが草の宿命。図書券がなかったらやってなかったと思います。これ、皆、あの黒猫のせいです。

 「セリナ、セリナ!」
 「どうしたんですか、トーマ様」
 「妖精が、妖精が生まれてた!」
 「見たのですか、トーマ様」
 セリナがにっこりと笑った。
 「それはとてもいいことがある前兆なのですよ、トーマ様」
 「そういえば、その妖精もそういうこと言っていた」
 「さ、夕飯にしましょ」
 セリナは夕飯を作っていた。それもめったにない豪勢なものだった。
 「どうしたんだ、セリナ」
 「だって、今日は……」
 「なんで俺の誕生日知ってるの?」
 「はい、もちろんです。井上さんにインプットしていただきました」
 さ、食べてくださいと取り皿に盛ってゆく。
 「ありがとう、セリナ」
 「どういたしまして。トーマ様、何かいいことありました?」
 「なんで?」
 「だって、とってもいい表情をしていらっしゃるので」
 「いいことっていうか、なんか心配じゃなくなったんだよ。時間が戻ろうがなんだろうが、皆そばにいてくれるだろうから」
 「トーマ様……」
 その夜は、とても気持ちよくすごせた。女王のことなどすっかり忘れていた。しかし、夢にはちゃんと出てきた。
 「十真さん、でしたね。始めまして」
 「始めまして」
 女王、であろうが声のみだった。鈴の音ような軽やかな声だった。
 「セリナを受け入れてくれてありがとう。そして、時間の逆行を受け入れようとしてくれている」
 「その時間の逆行なんだけど、どうなるわけ?」
 「それはね、貴方しだいなのです」
 「俺しだい?」
 「そう、あなただけでなく、地球のすべてのものしだいなのですよ。だから、あなたは堂々と構えていればいいのです」
 「なるように、なるのか……」
 「ええ、でも大丈夫、きっと……」
 女王の声が途切れ途切れになり、消える。夏目は目を覚ました。まだ暗い。セリナも充電中で寝ている。あと一週間もしないうちに何かが起きる。でも、不思議と眠ることができた。


2003年09月03日(水) おー!マイキー!

 妹が借りてきたDVD。マネキン一家が笑わせてくれます。つーかパパもママも笑ってばっかりです。
 あと、最近、黒猫に頭のっとられてます。実在する猫ではありませんが……。

 次の日、夏目は戻ってなかった。ほっとしてベッドから降りる。
 (なんで、ほっとするんだ?)
 「おはようございます、トーマ様」
 「おはよ」
 いつもの朝だった。セリナがコーヒーを入れる。
 昨日、樋口と井上と別れて帰宅した後、何度も自分の中にいるという女王に話しかけた。セリナが無駄と言ったがとめなかった。
 ベッドに入ってからもずっと語りかけていたが、眠さに勝てず寝てしまった。
 「元気ありませんね……やっぱり、気になりますよね、昨日の話」
 「うん、第一時間が戻るなんて突拍子もない、誰も、信じることができないよ」
 「そうですね、だからうまくいかないかもしれないのです」
 「うまくいかない?」
 「はい。妖精たちが目覚めるといっても、この今の世界では不完全ですべての力が発揮されないでしょう」
 「そんな、いい加減な」
 「トーマ様、それでも私たちは、真剣なのですよ。さ、今日は森先生の診察ですよ。病院混まないうちに行ってらっしゃい」
 人間たちの心配をよそに、セリナは他人事のように明るく振舞う。夏目は、もしかしたらあくせくしているのは人間だけなのかもしれないと思った。もしかして、セリナに試されているかもしれない、とも。
 森に会うと、まずため息をつかれた。
 「一体何がどうなっているのかね」
 もちろん、体のことである。
 「俺にも、やっぱりわかりません」
 「すまない、そうだね。そして、最近の貴方はどちらも夏目君なのだよ」
 「?」
 「自分でも気づいていないだろうけど、男であろうと女であろうと、貴方は夏目君なのだよ」
 「ますますわからない」
 「うーん、なんと説明したらよいかな? 以前の貴方は女であることに戸惑ったりしていたけれど、今はそれがない」
 「うん、女のときは女を満喫するね。不便な点もあるけど」
 「その辺かな。慣れた、ということじゃないんだろうけどね」
 薬は、もういいね、と森は言った。
 「ただね、何があるかわからないからね。いつでも来なさい。その点は病院が処理しなければならないからね。別に、遊びに来てもいい。世間話なんかしたければ……」
 「先生、それなんだけど……」
 夏目は、セリナの言った妖精たちの計画を森に話した。森は困惑した顔をしたが、信じたようだった。
 「何しろね、あれを見たからには信じないわけがない。ただ、人間が滅びるというのは杞憂かもしれないね」
 「なんで?」
 「そう、簡単に滅びてしまったら歴史が泣くよ。いや、今の人間たちなら滅びてしまうかもしれないね。でもね、時間を戻そうが進めようが生物は生きることには貪欲なのだよ、なんとかして生きるよ」
 医者としてはあまりいい言葉ではないね、といい森は笑った。
 「どうしたんだね、ぽかんとして」
 「いや、久しぶりにいいことを言うなあと思って」
 「普段、言ってないような口ぶりだね。確かにないことだけど。はい、診察終わり。次は何かあったときでいいから。さっきも言ったけど遊びに来てもいいよ」
 「はい」
 病院から出る。こんな気分で病院を出るのは初めてだった。と、いうか今日ここにきたおかげで、それまでの不安はなくなった。
 「森先生、もしかしてカウンセリングとかやったほうがいいんじゃないか?」
 夏目は、そんな独り言をいい家に向かった。帰宅途中、街路に植えてあるひまわりを見た。大輪の中に、15センチほどの虫がいた。
 「!」
 「あれ、お姉ちゃん。見えるの?」
 それは、しゃべった。虫ではなく、ヨーロッパなどの絵本で見られるような形の妖精だった。
 「たまにいるんだよねー。ラッキーだねー」
 「妖精……今、目覚めたの?」
 「そうだよ、僕らもたまには起きないとね」
 妖精は飛び上がって空に向かった。
 「じゃあね」
 小さいためにすぐ見えなくなる。夏目は、見えなくなってもしばらく空を見ていた。


2003年09月02日(火) すごいことになりました。

 自分でも、なんだこの展開と思ってます。もはや自暴自棄か? 自業自得になる可能性も大。CMで地球が逆回転するとってあるけど、ホントに逆回転したらどうなるんでしょ? つまりはこの展開はあのCMからだったりします。何がネタになるかわかりません。

 「セリナ、時間がさかのぼったら俺たちはどうなるの?」
 夏目が聞いた。セリナは首を振った。
 「わかりません……。私たちは女王のために、と思ってそれをします。でも、女王は望んでいません。先代の王は、それに賛成しています」
 「はあ、先代?」
 「はい、今の女王は、先代の王の意識も含めて存在しているのです」
 何がなんだかわからない井上。樋口は黙っている。
 「つまりは、他の妖精たちや先代は人間がどうなろうと関係ないと?」
 「そう、とっていただいてもかまわないと思います。トーマ様は、女王の意識を取り込んでいるので大丈夫ですから」
 「セリナ……」
 「後、一週間ですべての妖精が目覚めるはずです。その後、どうなるかわかりませんが……」
 これが、妖精たちを窮地に追いやった人間への、罰なのかもしれない。
 「セリナ、俺は……」
 俺、一人、生き残るのは嫌だ、といいたかった。まだ滅ぶとも決まっていないのだが言葉にするとそうなりそうで、言葉を切った。
 「わかっています、トーマ様。ただ、妖精たちは人間が滅ぶのを望んではいません。でも、女王のためなのです」
 「……女王は、どうやったら目覚める?」
 「気まぐれ、ですから。私にもわかりません。人間のなかに入ると女王の声も聞こえなくなってしまいますから、前のように話すことはできません」
 「とにかく、一週間たつ前に女王と話がしたい」
 夏目は、自分の体に向かって言った。
 「そうだな、何が起こるのかわからんが」
 と、樋口。そして 
 「それを束ねる上と会話をしなければならない、人間とおなじようにね」
 と、井上がしめる。
 「とりあえず、トーマ様が女性である間は女王は出てくることができます。妖精には人間の様な性別はないですが、女王は女性よりなので、同じ性別のほうが出やすいのです」
 「そうか、これはいつまでもつかな……」
 もしかして、明日には男に戻っていたりして、と夏目はなんとなく思った。


2003年09月01日(月) 九月ですね。

 フェアリードール再開です。これで終わってくれるといいんですが……。

 樋口は、自分用のソファーに腰掛けて、夏目らを客用のソファーに座らせた。メイド(自社のドールだった)にお茶を持ってくるようにいい、
 「さて、何から話そうか?」
とパイプをくわえた。
 「まず、俺をここに連れた理由を教えてください」
 夏目が言った。
 「うん、夏目さんというより、セリナに会いたかったというべきだね。でも、井上君のレポートを読んで君にも会いたくなった。要請の女王とは恐れ入ったわ」
 「でも、俺、いまだ女王を感じたことはない。あれから特に体の変調はないし」
 「だって、女王は眠っていますから。そうそう起きる方ではないのですよ、トーマ様」
 と、セリナ。
 「女王についての質問は、私が答えます」
 「そうかい? では何故、女王は地に埋まっていた?」
 「女王は、もともとは地の妖精です。女王になった時点でもほとんどを地の中ですごしていました。人間が私たちを忘れてからというもの、女王はどんどん深く沈んでしまいましたが、あの会社を建設中に偶然見つけ出されてしまったようです。あの会社がどうやって女王のエネルギーを変換させてドールのエネルギーに変えているのかわかりませんが、あのままだったら女王は消えてしまうと思います」
 「ふーん。では、君はどこから出てきたのかな?」
 「私は……植物の妖精です。何十年に一回くらいの割合で花の開花のときに生まれます……いえ、この世に出てこれるというのでしょうか? 私たちは気まぐれですぐ消えたり、とどまったりできます」
 「他にも、セリナと同じ妖精はいるの?」
 「ええ、女王がトーマ様の中にいるということで、各地で目覚め始めています」
 「その妖精たちが目覚めると、どうなるのかな?」
 「時間が逆行します」
 セリナははっきりと言った。
 「私たちがすごしていた時間まで、さかのぼります」
 「なんだって?」
 「やはりな。妖精たちは自分の生きた時間に帰りたいのだよ、夏目さん。君も、知っているだろう。妖精に限らず、すべての生き物は人間によって狂わされた……民俗学者の一派が言っているのをな」
 樋口は、パイプから口を離した。


草うららか |MAIL

My追加