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「マルドゥック・スクランブル」冲方丁
2004年10月23日(土)
「圧縮」「燃焼」「排気」と、3冊読み終わりました!
あちこちで評判を目にしていたので、読んでみたいと思っていた本なのですが、期待以上でした。とてもおもしろい。
物語は、一人の娼婦の少女が、男に殺されかかるところから始まる。少女は、電子干渉能力を持つ皮膚を移植されて甦った。助けたのは、事件屋のドクターとウフコック。ウフコックはネズミ。そして、変幻自在の万能兵器。
ネズミと少女のコンビと聞いて十二国記みたいだと思ってたのですが、こちらのネズミも大好きになりました。
少女の成長物語でもあります。感覚を閉ざすことで男たちの手から自分を守ってきた少女は、殺されかけて初めて、「死にたくない」と願います。そして、特別な存在を欲し、自分が何をしてはいけないか、何をしていくべきかを悟っていきます。1冊目のクライマックスはやるせないけど、後半のカジノシーンでは、泣かせてくれます。カジノシーンがこんなにスリリングだとは。この設定の3冊分の物語で、1/3近くがカジノシーンというのもすごいですが。
ストーリーのみに頼りすぎず、世界の雰囲気にも頼りすぎず、言葉の持つ力にも頼りすぎず、そのどれもが素晴らしかった。「おもしろい」はもちろんだけど、「好き」だなと思います。

ちなみに好きなシーンは、最初の変身で銃になった時に引き金がなかったところ。ここの文章が素晴らしく好き。
チョーカーの絵がウィンクするネズミになったところもかわいいな。
バロットが手袋を外した後のウフコックの感想もよかった。

★★★★★ ←ちょっと甘くすることにしました。
「紅茶王子 25」山田南平
2004年10月21日(木)
完結です。なかなかうまくまとめたんじゃないでしょうか。
ラストのあたりの「やだ」っていうのが、うまいですね。入り込んでくるっていうのが。そういう反応をさせるっていうのが。

アッサムの短編がなかなか味わい深くていい。上品なSFを読んでいるような雰囲気でよかったです。
★★★☆☆
「四日間の奇蹟」浅倉卓弥
2004年10月10日(日)
「このミス」大賞金賞受賞作。
指の1本をなくした元ピアニストの青年と、知的障害がありながら、曲を覚えることには天才的な才能を見せる少女。この二人が慰問の為にとある施設を訪れる、その四日間のできごと。
どういう話かまったく知らないで読み始めたら、途中で、あららそんな展開に…という感じでした。確かに、どこかで読んだような展開です。
まあ新鮮さはないですが、とても丁寧に書かれているし、好感を持てる作品でした。
★★★☆☆
「ドールの子 グイン・サーガ95」栗本薫
2004年10月09日(土)
グインがいない間のみなさんの様子、という感じ。
マリウスは、前はそうでもなかったんだけど、最近はすごく苛々しますねー(笑)
イシュトヴァーンもね…。前は好きだったのに。
「グロテスク」桐野夏生
2004年10月08日(金)
昼はエリートOLで、夜は娼婦、という女性の殺人事件は、当時とても話題になっていたのを私も憶えています。実際の事件の方はまだ裁判が終わってないようですが…。

この物語は、美貌の妹を持つ女性を主な語り手として進んでいきます。被害者となったのは、妹と、彼女の同級生だった女性。その同級生が、実際の事件を下敷きとしているようです。
怪物的なほどに美しい妹を持った彼女のコンプレックス、階級社会である名門学校での様々な苦悩。「その世界で生きていくために、ミツルは頭脳を磨き、私は悪意を磨いた」というフレーズが何度か出てきます。リアルで痛々しい。
しかし、合間にその妹の日記やら事件で犯人とされた中国人の上申書など…と読み進むうちに、それぞれが自分に都合のよい「事実」を書いているんだということがわかってきます。それが、余計にリアルでやるせなくさせる。

後半、昼は一流企業に勤めながら、夜は街に立ち男を探すという女性の日記になるのですが、その壊れ具合がすごい。勝ちたい、認められたい、という思いと、頑張れば認められるという信仰のような気持ちが、女性であることでどんなに努力しても得られないものがあるという挫折感に変わっていくこと。
周りからの視線を、自分だけの論理にすり替えていくこと。これは怖いですよね…。誰にでもある部分だから。


この人の本はまだ2冊目なのですが、描かれる心の動きがすごくよくわかって、おもしろい。見たくないものをつきつけられているのに、ああそうなんだよね…って受け入れつつ読めてしまう感じ。
★★★★☆
「春告小町 4」山口美由紀
2004年10月07日(木)
完結です。
不思議な力を持った人間の悲劇ですね。「旦那に似てる方が嬉しい」っていうお春の言葉がいいです。
絵的にはあの男の子がすごくかわいかった。
★★★☆☆
「阿修羅ガール」舞城王太郎
2004年10月04日(月)
…この人のはいつも感想が難しい。
読んでる間は、夢でも見てるような酩酊感ですね。わかりにくいのか、わかりやすい(ストレート)のかがわかりにくい(笑)
中盤の「森」のところが圧巻。ちょっと乙○風と思いました。
★★★☆☆
「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午
2004年10月03日(日)
「なんでもやってやろう屋」の探偵(?)成瀬将虎は、ひょんなことから霊感商法事件に巻き込まれていく…。

この人のは3冊読んだことがあって、1冊(長い家)は昔過ぎて記憶がない、もう2冊(ブードゥーとジェシカ)はかなり好きじゃなかった。なので、このミスでは1位だったけど、きっと私は好きじゃないだろうなーと期待せずに読んだんですよ。でも一応話題作だから読んでおこうと思って。そしたら、期待しなかったのがよかったのか、けっこうおもしろかったです。
最後に驚くというのは聞いていたけど、そういう風にくるとは思わなかったよー。
最初のハードボイルド調(?)は、なんだかなーと思ったけど、後半は気にならなかったですね。
★★★☆☆


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