.....PAPER MOON
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「死にぞこないの青」山本小鉄子・乙一/「ゴースト・ラプソディー」山下和美
2003年11月30日(日)
「死にぞこないの青」山本小鉄子・乙一
乙一原作の「死にぞこないの青」「暗いところで待ち合わせ」「しあわせは子猫のかたち」の三作の漫画化です。
小説のように鬱屈感がないので、趣は違ってますけど、さらりと読みやすくて、これはこれでいいと思います。漫画から入った人が小説を受け容れられるのか?というのは、個人差がある気がしますが…。
しかし、猫がかわいくないなあ…(笑)
あと、お名前「こてつこ」と読むのですね。ちょっとびっくり(笑)
★★★☆☆


「ゴースト・ラプソディー」山下和美
飛行機事故で亡くなったミュージシャンの霊が、結婚間際の女性の元に甦ってからの騒動のお話。
山本文緒もそうなんだけど、この人の登場人物も、したたかだなあ…と思いますね。なんていうんでしょう、生命力があるというか。きっと、どこででも生きていけるような気がする。
あ、これは途中で終わっちゃってるんですね。残念です。
★★★☆☆
「アヒルと鴨のコインロッカー」「チルドレン」伊坂幸太郎
2003年11月29日(土)
「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎
とっても楽しみにしていた新刊、図書館で早速見つけてしまいました。
今回の話は、大学進学で引っ越してきたアパートの隣人から、本屋を襲って「広辞苑」を盗む手伝いを持ちかけられる…というところから始まります。それに2年前の物語として、女性と、恋人のブータン人の青年、彼女の元恋人の3人の様子が同時進行で語られます。こちらは多発するペット殺しの話が絡んできます。

おもしろかったです。この人の文章好きだなあと思います。粋で、気障で、芝居がかってるところが好きです。ほら、私ヴォーカリストもそういう人が好きだし(笑)
話としてもね、どの話もこの人らしいなあと思うエッセンスが入ってるんですね。シチュエーションとか似通ってるところが多いし。動物好きの登場人物が多いとか、独特の正義感(?)があるとか…。そこらへんも、好きですね。これは、好き嫌いが分かれると思うけど。
展開としては、ふたつの物語がだんだんつながってきて、途中で驚かされて、泣かされて……ラストはハッピーエンドであると思いたいですね…。
最後まで読み終えた後、もう一度最初からぱらぱらと読み直してしまいました。セリフやエピソードが後になって生きてくるので、もう一度それを味わいながら読みたかったのです。じんわりと、「彼の成し遂げたこと」を思い返してみたりして…。

「重力ピエロ」もこの「アヒルと鴨のコインロッカー」も、変わったタイトルですよね。でも、ちゃんと作中でその意味が明かされているので、読み終わった後にタイトルも味わい深くなってます。
★★★★☆
(5にしようか迷ったけど…4.5で)


「チルドレン」伊坂幸太郎(『ザ・ベストミステリーズ2003』収録)
『ザ・ベストミステリーズ2003』に短編が収録されてたので、そちらも借りてきてみました。
家裁の調査官と少年の話です。これまた、一度読んだ後、最初から読み直してしまいました。飄々とした雰囲気で、にやりとさせられます。どの人もいいキャラですよね。殴っちゃうシーンが笑ってしまう。
長編しか読んだことなかったですが、短編もおもしろかったです。
紹介に読後感がいい作家だと書かれてますが、読んでいる時も、終わるのがもったいなく感じるくらいに、とても楽しめる作家です。
この人の話は、素直に騙されて読んで欲しいです。
★★★★
「月は幽咽のデバイス」森博嗣
2003年11月27日(木)
Vシリーズの三作目。
相変わらず、ミステリとしては、「…へえ」っていうか。あ、「へえ」だと感心してることになっちゃうのかな?(笑) じゃあ、「あっそう……」っていう(笑)
で、キャラクタ的にはどうなんだというと、これまた、あっそう…って感じなんですが……。
じゃあ、どうして読み続けてるのか? それが最大のミステリー。
★★☆☆☆
「ファースト・プライオリティー」山本文緒
2003年11月22日(土)
31歳の女性の、31通りの生き方を描いた短編集。
山本文緒は図書館で人気のある作家で、ようやく新作(というほど新しくもないですが)借りられました。

なんというか、この人の小説は耳に痛いというか胸に痛いというか…。身につまされるんですよね(苦笑)
しかし、いつも思うことですが、この人のお話に出てくる女性でも男性でも、どの人も当たり前の鬱屈を感じて、時に爆発しながらも、したたかに生きてるなあという感じがします。私も、したたかに生きたいですね…。

しかしこの人は短編よりも長編の方が好きです。長編の方が、「どうしようもなさ」が伝わってくる。
★★★☆☆
「ロケット☆マイスター」山口美由紀
2003年11月20日(木)
人間を月まで飛ばせちゃう魔法使いのドナルドと、弟子のピーターが登場するシリーズ。
とても、「らしい」お話だと思いました。彼女はほんとに短編がうまい。
私は「笑えて泣ける」話が、漫画としては最高だと思ってるんですが。そういう漫画です。
あと、子供がぷりぷり丸々してるのがすごくかわいいです(笑)
★★★★☆

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最初の話に、ずっと「本物」を手に入れたいと思ってきた女性が出てきます。それを読んで、私は「偽者」の話が好きだよな〜なんてことを思いました。
血のつながりのない親子とか、寄せ集めの家族とか、人間そっくりのアンドロイドとか…。
「作り物」が、「本物」になる話が好きなんだなと思いました。どうしてなのかはわからないけど。

この日記のタイトルの「PAPER MOON」というのは、映画やミュージカルでも有名なあの「PAPER MOON」からつけました。
詐欺師の男が、小さな女の子をその子の親戚のところへ送り届けるために一緒に旅するお話です。血のつながりのない二人が、息の合った相棒ぶりを見せてくれる、心温まるお話です。
その映画の冒頭に、「紙で書いた月も、君が信じれば本物になる」という言葉が出てくるのです。
小説や漫画も、「紙に描かれた嘘話」だなと思ったので…。

求めてるものが得られるならば、本物じゃなくても、紙の月でも、本物以上に価値のあるものなんですよね。
「人形式モナリザ」森博嗣
2003年11月17日(月)
いやあ、黒猫の漫画を読んだ時には、林さんがこんなキャラだとは思いませんでした。もっと二枚目半的で、そっちの方がよかったのになー。紅子さんもちょっと意外。
このどろどろした(?)三角関係は、ずっと続くのかしら…。それはちょっとつらいかもしれない…。
メロドラマは好きですが、一途なのが好きなので、「誰が好きなのかはっきりしなさい!」ってのはイライラするのです。
さて私は誰を贔屓にして読めばいいんでしょうか? 練無?(笑) ちなみに、紫子さんもイライラする…。
先は長いぞ、がんばれ私!
★★☆☆☆
「スカーレット・ウィザード 1〜5」茅田砂胡
2003年11月16日(日)
宇宙一の大財閥をついだ女性と、一匹狼で宇宙を渡ってきた海賊という、型破りの夫婦の愉快な結婚生活の話です(笑)
外伝は貸し出し中だったのでとりあえず本編5冊を読んだわけですが…そんな終わり方かよーって…(笑)
でも最終巻のまとめ方は、なかなかロマンチックな設定ですね。こういうのは嫌いじゃないです。女性はこれほど強くない方が私の好みなんですが(笑) 設定とキャラクターが、微妙にそぐわない気がするので…。もうちょっとメロメロしよーよ(笑)

あとがきで作者が「ハーレクイン・ロマンス」をやりたかったのに「ハーレクイン・バイオレンス」だと言われた、なんてことを書いてますが。
私の思うハーレクインは、女性が男性に見初められて幸せになるというシンデレラ・ストーリーなのですよね。だから、女性があんなに強くて、自分から男をつかまえちゃうようではいかん!と思います(笑)
かくいう私も、一冊もハーレクイン読んだことないのですが。どんなものか一度読んでみたいと思いつつも、教養のための読書(笑)ってなかなか手が出ないものですねー。

ちなみに、デルフィニアの時は思わなかったけど、この話は読んでて津守時生を思い出しました。ファン被ってるんじゃないかなあ?
★★★☆☆
「タイムトラベル・ロマンス」と梶尾真治のススメ
2003年11月10日(月)
「タイムトラベル・ロマンス 時空をかける恋-物語への招待」という副題がついてます。
著者の好きな、古めのSF作品(タイムトラベルものが多い)を紹介した本です。
簡単なあらすじを載せてくれてあるので、それだけでも楽しめます。実際、そのものを読むよりもあらすじだけの方が想像できて楽しめる部分もあったりして。私は「ジェニィの肖像」を読んでみましたけど、あらすじの方がロマンティックな感じがしました(笑)
★★★☆☆


さて、梶尾真治と言えば、最近「黄泉がえり」の映画化で注目されてますね。これを機に、原作以外の他の作品にもふれてくれる人がいるといいなあということで、ちょっと他の作品も紹介してみようと思います。

「おもいで」をテーマにした、リリカルでロマンティックなSFを書かれる方です。
私が初めて読んだのは、「時尼(じにい)に関する覚え書き」という短編でした。主人公が少年だった頃、一人の上品な老婆が現われて、「今が渡す時」と、指輪を彼に渡していくのです。そして、主人公が成長するに連れて、時々現われるその女性は会うたびにどんどん若返っていきます。彼女は、「遡時人」という、時を反対に生きる種族だったのです。やがて二人の歳は逆転し、彼女はどんどん若返っていきます。そして…。
不思議で、せつなく綺麗なお話しです。これで私ははまりました。

「クロノス・ジョウンターの伝説」は、好きになった女性を事故から救うために、何度も過去へと戻る青年の話。自分は、過去へ行った反動で未来へ飛ばされます。繰り返すほどに、さらに遠い未来へ飛ばされるのです。
こういう、「時を越えたロマンス」の短編が多い作家さんです。
せつなくて、それでも救いがあって心が暖かくなるお話ばかりです。(それだけじゃなくてドタバタのコメディなんかもありますが)
恩田陸の「ライオンハート」のメロドラマ具合が好きな方なら、きっと楽しめると思います。

でも、すごいのは短編だけじゃない。長編も読み応えがあります。
私がいちばん好きなのは「サラマンダー殲滅」です。日本SF大賞を受賞してます。
無差別テロにより、夫と子供を一瞬にして目の前で奪われた女性が主人公。平凡な主婦だった彼女は、その事件で廃人のようになるがテロ組織への憎悪を人工的に植え付けられ回復、そして復讐のために戦士として成長するのが前半。後半では、彼女の記憶が失われるのと同じくして起こる、現実世界の溶解現象がからんでいきます。
これもラストでぼろぼろ泣きました。今思うとなんであんなに泣けたのか不思議ですが…多感な高校生だったからでしょうか(笑)
これは、旅行(修学旅行)の前日に借りて、ちょっとだけと思ったらあまりのおもしろさに止まらなくなり、でも朝早いから寝なくちゃ…ってことで旅行に持っていった記憶があります。厚いハードカバーを(笑)
けっこう本格的にSFしてる話(舞台が宇宙)なので、SFが苦手な人は読みづらいかもしれませんが、苦手じゃない人ならオススメです。ほんとに怒濤のように物語に巻き込まれていきます。
今まで私が読んだ本の中で「おもしろかった本を5冊」選べと言われたら、きっと選びますね。

他に代表作としては「エマノン」シリーズがあげられます。
地球に生物が誕生してからのすべての記憶を持っている少女が登場するシリーズです。
初期は短編集だったんですが、だんだん中編・長編になってきてます。私は短編の方が好きです。星新一のショート・ショートのように、小粒だけどどれもトリッキーで噛み応えがあるという感じで。特に私は「さすらいエマノン」が好き。
最近、鶴田謙二氏のイラストで徳間デュアル文庫から再販(?)されたので、お求めやすいと思います。内容的にもとっつきやすいと思うし。

映画化で有名になった「黄泉がえり」は、とある地域限定でのよみがえり現象の話。死んだ人が、その人を強く思っている人の所に生き返り始めるという話ですね。
そこには人それぞれいろんなドラマがあるわけですが…私はいじめられて自殺した子の話で泣いちゃいました。いじめだとか書くと暗く重い話だと思われそうですが、「悪人の出てこない話にしようと思った」と作者が言っているとおり、優しく暖かい話だと思います。この人の書く話はどれもそうですが。
恩田陸の「月の裏側」とちょっと似てるなと思うんですが、私は「月の裏側」はいまいち納得できなかったんですよね。(「月の裏側」というよりは「盗まれた街」なのかもしれませんが、それは私は読んだことないので…)
私と同じように、「恩田陸は好きだけど、終わり方がいつもすっきりしない」と思われてる方は、一度梶尾真治を読んでみてはいかがでしょうか。

あ、「梶尾真治」はロマンチックすぎるのは苦手という方には薦めません(笑)
「K・Nの悲劇」高野和明
2003年11月09日(日)
夫が書いた本がベストセラーになり、高層マンションへ引っ越した若い夫婦。しかし、思いがけない妊娠がわかり、夫は経済的なことを理由に中絶を求める。それから、妻の様子が変わり始める。妊婦の霊が憑依しているのか…?

ホラーサスペンス…というのでしょうか。
かなり怖い…らしいです。最近恐怖の感情が鈍ってるので(想像力が貧困になってるのか?)私はそうでもなかったですが。ま、シャンプーの場面は確かに想像すると怖いかな。
それはともかく、なかなかおもしろかったです。テンポよく進んでいくので読んでて飽きません。読後感もいいです。中絶に関してふれられてますが、重くなりすぎずに書けてるせいだと思います。きっと女性が書いたらもっとドロドロするんでしょうね。ドロドロが読みたい人もいるかもしれませんが、私はこれくらいで…。
若干、描き方で腑に落ちないところもありますけど…。「13階段」もそうだったから、この人の持ち味(おおあじ…)なんだと思うことにします(笑)
大筋としてはおもしろかったので、★★★★☆
「黒猫の三角」森博嗣
2003年11月08日(土)
Vシリーズの第一作。
前述しましたが、漫画は読んだのでトリックもオチもわかってて読みました。でもけっこうおもしろかったです。
思ったより、嫌味じゃなかったですね(笑) 漫画ではしょられていた部分も読むことができたからでしょうか。
あちこちネットを見ていたら、「理系人間の屁理屈」と書かれている方がいましたが、まさに、ですね。

密室のトリックは、私はアンフェアーだと思いますが…。(そういえば、同じようなトリックのが他の作家でありましたな)
でも、この本を読む価値(?)は、その密室にあるのではないと思うので、気になりません。私は騙されたくて読むんですから、他の部分で「騙された〜」と唸ることができれば、それで満足です。
そしてひとつ思ったのは、やっぱり、シリーズは順番に読んだ方がいいですね!

原作を読み終わってからもう一度漫画を読みましたが、あらためてすごいなあと思いました。画力はもちろんのこと、構成、構図などなど…。会話だけで進む場面でも、無理なく飽きさせず画で魅せることができるし。それに、短くするために微妙に設定を変えてはっしょってるわけですが、そこらへんの再構成の仕方も全然展開に無理がなくてわかりやすくて、素晴らしいなあと。再構成って、忠実に再現するよりも大変ですよね。

文庫版の解説を、その皇なつき氏が書いてらして、それで作中の明かされていない謎についてふれてありました。私は、ストーリーとしての謎が解明されていれば、細かい部分の謎は気にならない人です。謎があったことにも気づいてません。それでいいと思ってる人なので…。森さんのお話はそういうのが多いらしいですが、そこまでつっこむ気は私はないですから。
しかし、解説に書かれていたのでちょっとネットで検索してみましたら…。ええっと思うようなネタバレを読んでしまいました。これは、私も読んでる時に不自然だなと思ったので登場人物表見たりして気になってたんですけどね。かなり、唸りました。(今知っておいたおかげで、そのことを知った後に全作読み返す必要がなくなってよかったかも)
これで、Vシリーズを読破する気持ちが固まりましたよ! がんばりまーす(笑)
…いやあ、踊らされてるよね(笑) それもまた楽し…かな。
★★★☆☆
「くらのかみ」小野不由美
2003年11月02日(日)
田舎の旧家に、相続の話し合いのために集まった親戚。子供達はすぐに仲良くなり一緒に遊び始めるが、「死人あそび」により、座敷童子がひとり増えることになる。そして、毒が盛られたり底なし沼に落とされたり…という事件が起こりだし、子供達は親を守るために探偵を始める。

という、読み始めたときにはなかなかわくわくするあらすじではあるのですが。正直、楽しめませんでした。あっそう…で終わっちゃいました。
座敷童子というアイテム(?)に、トリック以外のことを期待するのはロマンティックに過ぎるんでしょうか?
子供向けの本であるせいか、あまり怖くなかったし。…いや、子供の頃読んだら怖いんでしょうか?
あと、ふりがなが全編にわたって振られているのが、ちょっと読みづらかったです。
★★☆☆☆


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