即席珈琲エディクション/Instant coffee addiction...嶋紗雪

 

 

∧...PaST

 2004年11月26日(金) 

辛抱と弱気は損。手を出せ。口も出せ。

・・・ごめん、記憶に無いよ。


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祈れば叶う願いだと欠片も信じていなかったのに。

入院生活も早や1ヶ月。
母は毎日のように「良くなっているわよ」なんていうけれど、今の病状を留めるだけで精一杯の治療だという事は分かっていた。
自分の体は今以上に良くならないのだ。
半ば諦めの感情に支配され、毎日ベットの上で窓の外を眺めていた。
5階なので空しか見えない。東向きの窓だから、朝の短い時間だけ陽射しが差し込む。
太陽が見えなくなったら、あとは冷え切った一日。
心も凍りついていくようだ。

昨日噂を聞いた。
満月の夜、月に願い事を言うと金髪で美形の青年がその願いを叶えてくれるという。
噂というよりもお伽話に近い感じ。私を励まそうと捻り出して来たのだろう。
子供じゃあるまいし馬鹿らしい、と一度は思ったけど、寝る前に、ふとカーテンの隙間からキレイな月が見えたから・・・惹かれて無意識に呟いていた。

この病気を治して、元気な体にして欲しい―――

次の瞬間、窓の外をつむじ風が通り、窓枠が震えた。
窓は締め切っているのに、カーテンがバサバサはためいて、元に戻った時には、金髪で黒いスーツを来た青年が静かに立っていた。
顔にはジョーカーのような仮面。爪のように細い眼と口が嘲笑っている。
「その願い、私が叶えましょう」
声は静かな病室に心地良く響いた。




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