即席珈琲エディクション/Instant coffee addiction...嶋紗雪

 

 

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 2004年09月22日(水) 

旅人の話‐PP番外編

小妖精島の話をしてくれた旅人に逢った時の事を思い出すと、今でも胸の奥のほうがじん、と熱くなる。
「私の初恋は、この旅人サンかもねぇ…」
「ちょー鈍いマスターの初恋の人?!うわ、見てみてぇ〜」
クラフトの上げた声は静かな草原に思いのほか大きく聞こえて、慌てて彼の口を押さえる。
「静かにクラフト!二人が起きるやんッ?!。」
近くで寝ている えみとレイリーをちらりと見る。
二つの並んだタオルケットが、先程と変わりなく小さく上下している。
熟睡しているようで助かった。二人がこんな話を知ったら喜々として質問してくるに違いない。
ただでさえ恋話は苦手なのに質問攻めは勘弁して欲しい。
ふぅ、と安堵の息。
クラフトの方に目を戻すと、彼もまた興味津々でキラキラとした顔を向けていた。
人の恋話の何が面白いのか…私には分からない。
話をここで終えたい気分になったが、許してもらえないだろう。

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彼は国から国へ情報を渡して歩く旅人だった。
訪れた国の情勢や風土、暮らしてる人々の生活を書き綴ってそれを売って生活しているんだ。
一年に一度、彼が泊まりにきた時はいつも貯めたお小遣いを手に持って旅人さんの部屋に行っていた。
この国に来たらいつもウチの宿に泊まってくれていたからね、
心得たもので、私の為に売り物の本を数冊見繕って待っていてくれたよ。
彼の選んだ本は、小さかった私が読みやすいように綺麗な絵柄の絵本が多かった。
それらはとても面白かったけど、ある時、彼の本を返したときがあった。
「私はもう子供じゃない!赤ちゃんみたいな絵本はもう嫌だ!!」って、
その頃は微妙な年頃でね、ずっと子供扱いされて苛々してた。
彼から見たら、まだまだコムスメだっただろうに。
思春期の私は、ちょっと成長しただけで大人になったつもりになってた。

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「マスターも甘酸っぱい思いをしてたんすねィ」
「・・・二人には絶っ対内緒にしといてや?」
クラフトは悪戯っぽく笑っただけで返事をしなかった。


つづく




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2002年09月22日(日) ニシオメイツに今のところ62の質問 3 
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