「硝子の月」
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「何か外で凄い音がしましたが」 丁度勝手口からそちらに行こうとしていたのであろうリディアとばったりあった。 「どうぞお気になさらず」 ルウファはにっこりと笑う。 「そういうわけにもいかないんでね」 言外に「お嬢様に何かあってからでは遅い」と言っている。 「……お客人」 「何でしょう」 「あれは、貴女が『つきまとわれて困っている』と言った青年ではないか?」 窓から外を覗く彼女に問われ、ルウファはあっさり「そうです」と言った。 「確か貴女は『口のきけないかわいそうな人』とも言っていなかったか? さっきかなりはっきり喋っていたようだが?」 「喋れるようになったんですねぇ。私もびっくりしました」 しれっと、洗ってきた野菜の調理を始めながら、赤い髪の少女はしらばっくれる。リディアは胡散臭そうな眼差しを隠そうともしないが、それを気にする様子もない。 「とりあえず、何を言っても屋敷にはお入れにならないほうがよろしいですよ」 「……ところで貴女は何をしているのですか?」 「料理ですけど」 包丁が軽やかな音を立て始める。
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