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2004年01月30日(金)
■【ハヤカワ文庫JAコミック】

【シリーズの紹介】
 少女漫画にはSFが少ない。そんな数少ない中から、SFの老舗早川書房では、SFやそれに近いテイストを持つ漫画を独自にピックアップして、文庫本サイズで復刊している。『イティハーサ』(水樹和佳子作)をはじめとして『アンダー』(森脇真末味作)や『時間を我らに』(坂田靖子作)など、そのラインナップはとても私好みだ。タマにキズなのは、あまりにツボにはまり過ぎていてすでに持っているため、なかなか購入できないことだ。『イティハーサ』や『アンダー』の感想は、文庫本化を機に書きたかったのだが、手持ちの現物が手許になくて読み直せなかったので見送ってしまった。

 私の場合は、もともと少女漫画の中からSFを探しているので、すでに持っているコミックが文庫化されることが多いのだが、逆に少女漫画を読みつけないSFファンの人が読んでみるには、とても良いシリーズだと思う。中にはかなり本格的なSFもある。少女漫画ならではの繊細で美しい絵柄や心理描写のこまやかさなど、少年漫画とはひと味違ったSFが楽しめると思う。

 このシリーズのように、マイナー路線のSFでも、再び取り上げられる土壌があることがたいへんありがたい。特に『イティハーサ』の文庫化は救われた思いがした。この作品は、10年以上に渡って描き続けられた力作だったにもかかわらず、連載終盤には掲載雑誌の方針転換のため、下手すると自費出版になりそうな苦境の末、結末を迎えた。それがこのシリーズで取り上げられたことで日の目を浴び、2000年の星雲賞コミック部門にも選ばれた。ファンとしても本当に嬉しいかぎりだ。文庫化をきっかけに、細々とSFを描き続けてくれた少女漫画家さん達に次のSFを描いてもらえるようになると、ますます嬉しいと思う。

【シリーズ向きのコミック】
私が自分の読んだコミックの中からハヤカワ路線で文庫化するものを選ぶとすると、以下のようになる。中にはSFでないものもある。

萩尾望都:『スター・レッド』『百億の昼と千億の夜』『A-A'』『銀の三角』『11人いる』『モザイク・ラセン』『マージナル』『ウは宇宙船のウ』『左利きのイザン』『ポーの一族』他
竹宮恵子:『私を月へ連れてって』『イズァローン伝説』『地球(テラ)へ』
佐々木淳子:『ダーク・グリーン』『ブレーメン5』『青い谷の竜』
坂田靖子:『伊平次とわらわ』『カヤンとクシ』『天花粉』『エレファントマンライフ』他なんでもOK
大島弓子:『綿の国星』
岡野玲子:『陰陽師』『妖魅変成夜話』
佐藤史生:『ワン・ゼロ』『打天楽』『夢見る惑星』
鳥図明児(ととあける):『虹神殿』『睡蓮運河』
神坂智子:『カレーズ』
樹(いつき)なつみ:『OZ(オズ)』『獣王星』
高野文子:『絶対安全剃刀』『ラッキー穣ちゃんのあたらしい仕事』『るきさん』
内田善美:『星の時計のLiddell』『草迷宮・草空間』
近藤ようこ:『水鏡綺譚』『美しの首』
道原かつみ:『JOKERシリーズ』
山田ミネコ:『ハルマゲドンシリーズ』
たむらしげる:『ファンタスマゴリア』『フープ博士の月への旅』
ますむらひろし:『アタゴオル』
柴田昌弘:『紅い牙シリーズ』
(現在早川書房から文庫化されてるものではありません)
(順不同・敬称略)


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