ナツ日記
In My Dream



「寝てる?」
「…寝てるからここにいるんだよ」

すぐ隣で記憶と違わず浮かべられている親友の笑みを不機嫌な様子を隠そうともせず見返した。
「何か用?疲れてるんだけど」
「だからいい夢見せてあげようと思って」
「…悪趣味だなあ」
呆れて再び目を瞑ろうとすると、頭を持ち上げられてこともあろうに彼の膝の上に置いた。
「…何やってんの?」
瞼を伏せていても髪に手が触れるリアルな感触。
「サービス」
予想外の答えに吹きだした。
「男にそんなことされても嬉しくない」
「じゃあこっちは?」
途端に声のトーンががらりと変わる。それは少年のものではなくてやや高い、明らかに女性がもつもの。
辺りの空気が柔らかくすらなったような気がする。
「やめて。フリックに殺されちゃう」
瞼を上げてあった光景が、まさしく自分の思っていた通りでお腹を抱えて笑ってしまった。



「何、構ってほしいわけ?君」

眠ることを諦め、目の前の朱色の長い髪を弄りつつ尋ねた。
「…そんなこと、初めて言われたな」
「ごめん。その姿でそういう喋り方、しないで」
真顔で返されるのもおかしくて笑いを噛み潰したような顔で訴える。
「男に膝枕されるのは嫌なのだろう?」
「…わかった。僕が悪かった」
両手を軽く上げて目を瞑った。
「目に入らなければとりあえず同じ。どうぞ」
「それでは、私がこの姿をとっている意味がない」
憮然とした声音。
「それはそうだけど…あ。その人の声、止めてくれる? 何か変…」
「わるかったな」
先程までの聞きなれた声に戻る。
「うん。それでいいや」
とはいうものの耳に届く声は少年のもの、頭の下に触れる足の感触は女性のものだという見事なまでの違和感はどうしても残るわけだが。
「…なんか目覚めが悪そう」
「何故?」
「いや…何となく」
寝ているというのに気疲れしてしまうのはどうしたものかと思う。



「何か話、して?」
しばらくの沈黙が続いた後、先にそれを破ったのは自分だった。
「眠らないのか?」
「寝てるよ。でも、退屈。だから、何か話して」
「…私が?」
「君以外ここに誰もいないでしょ」
半ば呆れて薄く目を開く。
僅かに見開かれた瞳が自分を見下ろしていた。
「何を?」
「何でも。君のことについてでもいいし…」
「愚問だ。お前は自分自身のことをどれだけ知っている?」
目を開ける。やや皮肉めいた色を帯びた瞳。
こういう問いかけは嫌いじゃない。口元に笑みが広がるのがわかった。
「いいよ。続けて」
「個の存在は自分と周囲の存在が認めることで初めて成り立つ、とても危ういもの。お前という存在はお前自身と周囲の人間がそう認識してそこに在ることを認められている。まして周囲の存在が多ければ多い程その存在は強く確立される。私という存在は…」
一旦話が途切れる。視線が合っているというのにその瞳は自分を映していないようだった。
「私という、紋章の存在は多くのものが知っていようとその中の意志の存在まで一体どれほどの者が知っていようか。私は、私が私と認識することでしか成り立ち得ない、より危うい存在」
「僕も、知ってるけどね」
彼はその瞳に再び自分の姿を映した。
「お前が唯一つ思うだけで、今、この場の私も消える。『これは夢だ』と。自分の意識が勝手に作り出したものだ、と」
瞬間、彼の存在はそこから掻き消えた。



「随分久しぶりなんじゃない?」
「300年程度で?」
「暇なものでね。僕からすれば300年しか経ってないんだ」
視覚は無用だったから目を閉じていた。
今回は触れてくる手も何もない。その方が、ありがたかった。
「300年前の話の続きをしようか」
返ってくる声はない。
「僕の名を唄に聞く。勇敢な幼き英雄だと称える唄。人々はその唄に熱心に耳を傾け、僕はその横を通り過ぎていく」
詩のごとく軽やかな声音がそこを流れ、消える。
「多くの人が認識する僕と言う存在は僕じゃない」
パーソナリティの喪失。純然たる自我の確立。
「お前は僕か?」
存在の不安定。限りなくゼロの距離。
沈黙の後、空気を震わせる笑い声。
「今度は1000年後に話をしようか?」
「…僕、そんなに長生きするわけ?」
「なら、今、楽にしてやってもいい」
耳よりも。鼓膜よりも。
もっと近しいところで声がする。
「お前は私だ」
途端、何かを切り裂くように大きな声を上げて笑っていた。
「ごめん。僕まだそこまで狂えない」
「いや、久々に楽しかった。とてつもなく、傲慢だ」
くすくす。
まだ感情が残っている。



身体が壊れる、その前まで。
狂気へと誘うカウントダウン。










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ここまで読んでる方いるかしら?

某ゲームの二次創作であります。いや、坊ゲーム?
誰がリクしてくれたのかも忘れたのですがソウル坊だったりするんです。
パソ弄ってる間に発見。
神崎嬢か姉さんだって記憶しかない。はて。
こんな中途半端で暗いもんどうかと思ったんですが
ネタもいい加減ないので。
話的には結構好きだったりするんですがラストでぶち壊し。
上手く終わらないんで黒衣の男だそうかと思った。鬱作家関口。
アブソルーションなんだけど。
文章だと難しい。

とりあえず今日の日記は埋まった。満足。