直線の恋人
「それほど多くは、いらないと思うんだけど」
「例えばこうしてるときとかね、スゴク好き」
手の中に滑りこんだ指先の体温は、暖かさを失ったように。
「冷たい」 「ゴメン」 「…いいけど」
背中合わせに触れ合った。それが距離。 近くて遠い。 瞼を開いた先に求める姿はどこにもない。
交錯しない直線。
「好き?」
五指。柔らかく動いて。
「嫌い」
ひやり。 曲線を辿る人差し指。
「嘘吐き」
振り向いた頬に触れた微笑。
「欲しいものなんてたくさんあるよ」 「お前、嘘吐きだろ」 「うん」
小鳥のように涼やかな囀りはなんて残酷。
「知ってた?」 「知ってた」
それほど短い付き合いじゃない
わざときょとんとした表情で見返せば 言った言葉の意味に気づいた彼が赤くなった顔を右手で抱えた。
「長い付き合いだもんね」 「うるせえ」
笑い声と怒声が止むことなしに狭い部屋に響いたある日。
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私は多分直線の恋人が好き。垂直じゃなくて。 交わらないの。平行線。 薬屋なのでした。わかってくれればそれでよし。 小説というよりは漫画にしたい。この話。
ゼロイチさんの日です。毎月一日はお祝いしましょう。
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