moonshine  エミ




2003年04月10日(木)  愛してる

 午後、(このクソ忙しいのに)セミナーに出席。
 1時間半の講師の説明、先輩の横で1時間はうつらうつら。
「次は○○ページ・・・」と言われるたびにそのページをきちんと開くのだが、乱発される難しい会計用語からはアルファ波かなんかが出ていたに違いなく、すぐに瞼が落ちてくる。
「先生の話によーく頷いてたね〜」と、先輩、苦笑い。
 行き帰りは二人で興味深い話、ひと回り以上も年下の人間ああいう話をしてくれるから好きだ。
 それに、あの人は羞恥心というものをきちんと持っている。

 会社に戻ると、追加の人事異動が発表になっていた。
 私たちにはこっちが本命。
 おおかたの良そうにたがわず、うちの部は38度線を境に南北分断、まっぷたつに分かれることになった。
 さみしいなあ。
 来週、解散式(という名の、もちろん飲み会)の開催決定か。

 そして今日は10時半まで仕事。
 頭を使いすぎて、今にもハゲそう!
 
 しかし、家に帰ってメシ炊きフロ炊きをしなくていいので、こういうとき、実家は楽だ。
 気楽ではないけど。
 煮詰まって昨日より断然おいしいカレーライスを食べながら、ぼんやりニュースを見る。

母親「今日も遅かったねぇ」
エミ「ねー」
母親「明日も遅いと?」
エミ「うん」
母親「土曜日も会社行くと?」
エミ「行くよん」
母親「いつまでこんなに忙しいとかね」
エミ「今月はこうやね」
母親「・・・・・」

エミ「腕まだ痛い?」
母親「うん。自転車に乗ると特に痛いっちゃんね」
エミ「そっかー。でも、自転車に乗らんかったら、
   買い物した荷物も歩いて持って帰らないかんけん、
   結局同じやもんね」
母親「そうやもんねー」

 数日前から腕のスジを痛めているようだ。
 帰りが遅いと何の手伝いもできない、それもつらい。
 なにしろ、私の母親は年齢も同世代のお母さんよりけっこう上だし、なかなかの苦労人であちこち体にもガタがきてると思うので、心配だ。

母親「あんたはこういう毎日でも、なんの仕事の愚痴も言わんけど、
   あんまり何でも胸におさめすぎたらいかんよ。
   お母さんには話せんでも、誰かに話して発散して、窒息せんように」

 まあ、疲れてしゃべるのもダルイってのもあるけど、私にはもともと、
「ねーねー聞いて、今日さー」
 と“今日の出来事”を逐一、人に報告して共感を得たいという欲望が少ない。
 家族はとても大事だけれど無償の愛情でつながっているだけに、 
 それに浸かりきって生きていると、他人の価値観や他者の置かれている環境を理解するのに鈍い人間になってしまうという気持ちもある。
 なんでもお母さんに報告して味方の意見を聞いて、満足安心しようなんて思わない。

 どっちかというと、ちょっとした愚痴とか日々の心の葛藤(笑)とかは、友だちとか、まあ相方とかに話すかなあ。
 仲良しだけど、違う環境で違う育ち方をしてきた、もともとは他人である、友だちや彼氏に。
 そう、今日も愛媛のダンノ氏と互いに残業漬け、仕事疲れの身をいたわり合うメールをかわした。

 でも、それじゃあ、母親としては物足りなかったり心配したりもするんだろう。
 私がこんなだから、うちの家族ときたら、私の所属している部署の名前だっておぼつか無いくらいだ。申し訳ない。
 
 でも母親は、うなずいた私に向かって、次にこう言った。
「ま、あんたはお母さんと一緒で、呑める口をもっとるけん、大丈夫やろうけどね」
 お母さんも若い頃は、いやなことがあっても楽しく飲んで、
 そしたら次の日にはケロリとしてたもんよ。
 ・・・ですって。

 お母さんいつまでも元気でいてね。お願いだから。





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