
桃井かおりのデビュー作かと思うてたら、清水邦夫の『あらかじめ失われた恋人たちよ』があった。う〜んでも、『あらかじめ〜』はそう話題にもならなかったから、実質のデビュー作といってもいいかも。
さすが70年代初期の青春ものだけあって、いま見ると臭さばりばり。ちょっと気恥ずかしい。これ、封切りのときに見たはずなんだけど、結構忘れてしまってる。「することがなくなりゃもう老人なんだ。誰も俺たちを探しちゃいない、誰も俺たちを待っちゃいない。このままじゃ俺は、28歳のポンコツさ。俺たちゃ中年をとびこして、いっぺんにジジイになっちまうんだ」
という原田芳雄のセリフが全てを表している、といっても過言じゃない。この73年当時というのは時代の閉塞感にとらわれていた。70年安保闘争の熾火は72年の赤軍あさま山荘で終結してしまった(と感じているのはボクだけかも)。何をし始めればいいのかわからない。そんな時代観を原田芳雄と大門正明の二人が体現している。そして桃井かおり。彼女こそは待ち続けたゴドーになるはずだった。その桃井かおりも父親の内田朝雄から「あれは娘じゃない」と宣告されてしまう。『赤い鳥逃げた?』
最後は『明日に向かって撃て』だよね。あ、この映画そのものが『明日に〜』なのだった。『ボニーとクライド』。だけれど、『明日に向かって撃て』は最後までかっこよく散って行った。ここでやっと『赤い鳥逃げた?』の『?』の意味がわかる。それ以前に、ゴムを巻いて飛ぶ赤い鳥は飛ぶことができずに落ちてしまってたじゃないですか。
「あれは娘じゃない」と宣告されたあとに、つけたしたようなカッコ悪さ。このカッコ悪さが、またその時代のひとつの側面を表わしている。市川崑の『股旅』のラストしかり。これ絶対必要だったんですよ。殿山泰司のジョーカーがなかったら。そしてね、ラストシーンを遠巻きにとりまく群衆、絶対必要ですね。
監督 藤田敏八
製作 奥田喜久丸
脚本 藤田敏八 / ジェームス三木
撮影 鈴木達雄
助監督 長谷川和彦
出演 原田芳雄 / 大門正明 / 桃井かおり / 白川和子 / 内田朝雄 / 穂積隆信 / 殿山泰司 / 戸浦六宏 / 山谷初男