衛澤のどーでもよさげ。
2005年06月25日(土) ほう…。

例によってレイトショーで映画を観てきました。「戦国自衛隊1549」。前作「戦国自衛隊」は記憶にあるものの観てはいないし原作は半村版・福井版ともに読んでいないので先入観なしの観賞になります。

率直な感想は「如何にも角川映画」です。往年の角川映画シリーズが好きだった人なら観ても損はないかもしれません。それなりに愉しめます。
前作(半村良版)を基礎にはしていますが、ストーリイそのものを変えてしまっている(福井晴敏版)らしいので、前作を御覧になった人も試しに観てみるとよいかもしれません。

ただ、上映時間二時間ほどの映画に求めてはいけないことなのか、近頃の映画はみなその傾向にあるのか、御話の細かい部分が判りづらくて、かつ描写しておくべきことがされていないために基礎智識を持たない人には理解しづらい部分もあったりで、全体的に未消化という感じ。
これは原作を読むと解消されるのでしょうか。しかし、「ローレライ」(映画)と「終戦のローレライ」(原作小説)の例もあるしな……とちょっと後込みしています。でも、半村版と福井版を読み比べてみたいな、という気持ちもあります。

日本史マニア、戦史マニア、ミリタリマニアには少々もの足りないかもしれませんが、歴史ファン、自衛隊ファンには愉しめるものだと思います。つまり、マニア心をくすぐる細かい仕掛けはしていませんってことです。そういうところが「如何にも角川映画」って感じかな、と。

最新鋭の技術を駆使した迫力ある映像ですが、何もかもをCGに頼っていないところが偉いです。ちゃんと「特撮」を使っているんですよ! 邦画は特撮を能く使うのですから、そこをきちんとすれば充分に見応えがあるものができるのですよ。それを再確認させて貰いました。
ドラゴンロケット(榴弾)が装甲車に着弾して爆発する場面とか、回転翼機(ヘリコプター)が城郭に激突して城郭が崩落炎上する場面とか、CGと特撮を上手に合わせて使っていて迫力あるおもしろい映像に仕上がっていました。

しかし、やっぱり細かいところが気になる半端なマニア心が私にはありまして。
登場人物のほとんどが自衛官なのに姿勢があんまりよくなかったり挙手の敬礼があんまり上手じゃなかったり上官の命令が明確に発されていないのに各員三々五々行動開始してしまったりそんなのあってはいけないでしょ、とかいちいち思ってしまうのですね。

しかし、それの御陰(?)で、最終シーケンスにエキストラとして登場する現役自衛官のみなさんの常装の着こなしとか姿勢や挙手の敬礼のうつくしさにすばらしく感動してしまいました。この映画の一番の見どころはこの部分と、回転翼機のローターが駆動してブレード(回転翼)が空気を砕く音がドルビーサラウンドで迫ってくるところでしょうか。AH-1S(コブラ)よりUH-1J(ヒューイ)より、私はOH-1(ニンジャ)が好きです……陸上自衛隊の回転翼機の話です。

以下、ネタバレを含みますのでいつものようにあぶり出しで。これから観る予定の方はあぶり出さないように御注意願います。
 
的場一佐役の鹿賀丈史さんが私は好きでしてね。とぼけた役も二枚目役もエキセントリックな役もすべて違和感なくこなしてしまうけれど如何にも大物って感じがしないところがとっても好きです。

的場一佐はFユニットなる特殊部隊を統べていたが上層部からの命令によりFユニットは解散、そのまま第三特別実験中隊に改組されてしまい、人工磁場発生装置実験中に戦国時代に部隊ごとタイムスリップして、その時代で織田信長として生きながらえています。
その信長の衣装がなかなかエキセントリックでおもしろいデザインでした。ですから、的場一佐も戦国の世に信長として生きると決め、平成時代の戦闘技術を活かした部隊を編成して歴史再編成(世界征服?)まで目論んでいるのですから、最期はもっと衣装通りにエキセントリックで狂気に満ちた感じでもよかったんじゃないのかな、むしろ私はそういう展開の方が好きだな、と、その点少々残念です。鹿賀さんのそういう芝居を見たかったという希望も含めて。

さて、もとFユニット隊員で的場一佐直属の部下だった鹿島勇祐二尉はFユニット解散と同時に退官、いまでは民間人になり居酒屋の雇われ店長として漫然とした日常を過ごしています。しかし、鹿島は智将でもあった的場一佐のD-3作戦シミュレーションを破った唯一の人間で、タイムスリップしてしまった的場一佐を連れ戻す―――もしくは歴史への意図的介入を避けるために第三特別実験中隊を殲滅するための作戦実行部隊「R部隊」のオブザーバーとして招聘されてしまいます。これが江口洋介さんの役です。

結果として鹿島もと二尉の機転と「ちょっと小狡い」戦術とFユニット時代に培った戦闘能力によって的場一佐=織田信長の野望と第三特別実験中隊は殲滅され、歴史の意図的な書き換えと的場=信長の世界征服は阻止される訳なのですが。

鹿島たちR部隊が乗り込んだ戦国時代は第三特別実験中隊が持ち込んだ自衛隊戦力と、もともとの武士の戦い方が融合した戦術が主流になっています。銃砲火器も使えば刀や槍も使う訳です。そこで、銃砲の威力のみでなく、特殊部隊の近接戦闘技術も有効になってくる……はずなのです。幾ら電子化が進んでいるとは言え、戦闘の最後の鍵を握るのはやはり人間対人間の戦いである訳ですから。

鹿島が戦国時代の武士と刀同士で戦う場面が出てきます。フツーだと鹿島に剣道の経験でもあれば……などと考えてしまうかもしれないのですが、ここで見せた鹿島の構えがクロスコンバット(近接格闘戦)の構え方だったので、私は期待して見ていたのですが、戦い方がナイフコンバットの基礎を押さえていなかったところが残念だなー、ほんとうに残念だったなー。
江口さんが結構鍛えて胸板厚く腕太く格闘体型になっていただけに残念です。

近代自衛隊の装備の重厚さを見せつつやはり最後は的場対鹿島になる訳です。もと特殊部隊兵同志なのだから、とそういうアクションを期待した私が間違っていましたか、それとも制作側がハズしましたか。前作「戦国自衛隊」ではクロスコンバットの戦い方ではなかったものの、主演の千葉真一さんが確かな殺陣を見せてくだすってそれはそれは見応えがあったものと思われますが。

あと思ったことと言えば細かいことばかりですね。
89式小銃は連射もできるけれどせっかく三段バースト機構もついているのだし、突撃の仕方としてはそちらを使った方が無駄弾を使わずに済むのに、とか、シグザウエルが幾ら小型で扱いやすい拳銃とはいえ撃ったらやっぱり反動を逃がさないと肩が脱臼しちゃうよ、とか、ホバリング中の回転翼機に近付くときはブレードが巻き起こす風を迂回していかないと人ひとりくらい簡単に吹き飛ばされちゃうよ、とか、制帽やテッパチ(ヘルメット)を被っていないときは挙手の敬礼はしちゃいけないでしょ、とか、「R部隊」を「ロメオ部隊」と発音するのは何故なのか台詞の一部にでも組んでおいてあげないと一般の人はフォネティックコードなんか知らないでしょ、とか、そんなこと。

第三特別実験中隊がタイムスリップして以降の武士の鎧がケブラー混じりになっているのがおもしろかったです。兜はベースがケブラーヘルメットで両側に返しが付いていて、鎧は普通なら帷子を付ける部分がケブラーベストで周りに直垂やらいろいろ付けているデザインになっているのが、時代を少しずつ歪めている感じが出ていてユニークでした。

あと、三國曹長役は嶋大輔さんでしたが、今井雅之さんが演ると「如何にも」って感じでおもしろかったんじゃないかな、と思いました。森三佐に対する先任曹長の立場なのだろうからもっとしっかりしていてもいいはずなのにな、という気もしました。
R部隊長の森三佐も頼りないのかしっかり者なのか判りづらいキャラクタでしたね。でも森三佐役の生瀬勝久さんはやっぱりいい味を出していると思いました。槍魔栗三助時代を知っている者としてはいまの渋さがちょっと笑えたり。
的場一佐の副官与田二尉役が的場浩司さんで、周囲の人が彼の前で「的場」「的場」と別の人(鹿賀さん)を差して呼ぶのが何だかおかしかった。

「ローレライ」は観たし、「戦国自衛隊1549」も観たし、次は「亡国のイージス」(実はこれが一番愉しみ)だなーと思っている私は福井晴敏氏の手のひらの上で踊ってますか、もしかして。
でも、映画を観る前にうっかり「亡国のイージス」上巻を読んでしまって、しかも読んでいる途中で更にうっかり映画サイトに行って溝口が実は○○○○だという上巻の最後に明らかになる事実を先に知ってしまったりで何かと波乱含み(笑)です。

でも、一番期待しているのはイージス艦「みょうこう」(劇中では「いそかぜ」)の勇姿と真田広之さんのアクションなんですわ。


【今日の暫くは】
今年の夏はカレーしか喰えない予感。カレーそうめんとか。


エンピツユニオン


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