浅間日記

2010年07月22日(木) 詩人とハンマー

「ゲーテ地質学論集 鉱物篇」を読む。

自然科学者としてのゲーテに注目した本である。

ゲーテは、ワイマール公国イルメナウ鉱山の鉱山委員長を務め、
地質調査など様々なフィールドワークを行っている。以下抜粋。

「私はすべての自然研究において何も知らずにワイマールへやってきた。公
爵のいろいろな企画、建築や造園に実践的な助言をする必要にせまられて、
私は自然の学習をせざるを得なくなった。イルメナウ鉱山のために私は多大
な時間と労苦とお金をついやした。しかし、その代わり私は何がしかのこと
を学び、かけがえのない自然観を獲得した。」

1824年にワイマール公国の官房長との対話の記録である。

以下、地球の生成理論や山々の相観学的考察など、ゲーテの論文が続く。




地質は、ロマンティックである。
詩や文学と、とても近いところにある。親戚と言ってもよい。

それは変成作用があり、積み重なり、褶曲し、構造的であり、脈をなし、侵食し、塊であり礫であり砂であり、風化する。




地質、鉱山、岩石、そして詩人といえば、宮沢賢治を即座に思い出す。
ゲーテも賢治も、膨大な鉱石のコレクションを残している。

誰でも人は、地質の知識についての学習と、山や川などフィールドでの経験によって、人間の生きている空間や時間と、そうでない空間や時間を、
同時に全球的に-感覚として-つかむことができる。
それは、多分たいていの人ができる。

ゲーテや賢治が常人と異なるのは、そのつかんだものを糧に、
「人間にとって自然とは何か」ということを、最大出力に近い文学的表現でもって、アウトプットできたことじゃないかと思う。


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