浅間日記

2004年03月22日(月) 慕情先生

一週間在京。

家に戻ったら花冷えだ。
暖かかった冬の落とし前をつけるように、しんしんと雪が降る。

文芸春秋が、芥川賞の騒ぎの後夜祭のつもりか、
若手2人の受賞作品に対するコメント特集を組んでいる。

親にもらった体に傷をつけるなんて言語道断だ!とか、
こんなものは文学じゃない!と一喝している政治評論家もいた。
大した事ないと思ったらすごくよかった、
誤解していた自分を作者に謝りたいと記す女性アナウンサー。

色々な意味で微苦笑。
こりゃ、作品そのものを読むより面白い。

どうしてこんな特集をわざわざ読んだかと言うと、
義家弘介センセイが感想を寄稿していたからだ。
そしてやはり、素晴らしい感想を寄せていた。

彼は作品に対する感想なんか一行も書いていないのである。

ただひたすらに、「よく書いた!賞をもらってよかったな!頑張ったな!」と、若い作家へ、また背後にいる若い読者たちへ、
エールを送っているのである。自分らしく生きろ、と。

文芸春秋というメジャーな媒体におもねることなく、
芥川賞という権威に臆することもなく、
教育者としての自分の軸足を少しもずらさずに、
若者へ眼差しを向けられるこの人は、本当に先生なんだなあ。

こういう熱血先生を疎ましく思わずになったのは、
いい意味で自分が大人になったからかもしれない。

魑魅魍魎が跋扈する社会の中で、ひたすら熱血でいることが
どんなに大変かわかるようになったということだ。



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