先週木曜日、あたふたと仕事を片付けて翌日休みをもらった。 金曜日、ゆっくりと支度をして新幹線に乗って目指したのは神戸。 鈴木雄大さんが、ギター弾きの石井完治さんとともに西にやってくると耳にしたからには、やっぱりいくのだ。
神戸でライブは2度目。 去年の7月だったかな、やっぱり雄大さんのライブを楽しむために訪れたんだったなあ。 神戸自体は4回目なんだけど、未だに中華街でご飯を食べたことはないのだった。 カフェ萬屋宗兵衛はすぐそばにあるってのにね。 まあ、そういうのもありなんではと勝手に思っている。
雄大さんとともにやってくる石井完治さんのことはほとんど知らない。 すごい色っぽいギターを弾く面白いギタリストだという情報だけは風の便りに聞いていた。 ギター弾き鈴木雄大のファンとしては、その化学反応がどんなものかをわくわくしながら待っていた。 完治さんは、パッと見はちょっと怖い感じで、”おおなんかすごそう”という印象。 “すごそう”というのは、ギターがっていう意味だ。 Boogie Houseでお見かけする凄腕のブルースメンにもひけをとらない存在感をかもし出している人。 ちなみに雄大さんは、やわらかな雰囲気を纏いつつもどこか少し浮世離れしてるようで、やわらかいバリアーに包まれているみたい。 つまり、雄大さんもちょっと近寄りがたいなと感じてる。 でも、”心の恩人”とはそのくらいの距離感を保っていたい私なのだった。
久しぶりに会う友人たちと話しに興じていたら、あっという間にお2人がステージに登場していた。 雄大さんはニコニコ笑いながらギターを手に腰掛けて、完治さんはセッティングに余念がなかった。 2人は少し対照的。 雄大さんは楽しげにやってきて、始終ニコニコしながらギターを抱えているけど、完治さんはおしゃべりをしているときと、ギターのセッティングをしているときは若干顔が違っておりました。 さていきなり完治さんは言う。 “今日はトークショーなんですよ。知ってました?” 最初の印象とは違い、完治さんは思いっきりおもろいおじさんだった。 よくもまあ、次から次へと喋れるもんだわ。 しかも、滑らないんだなこれが。
そんな明るく和やかな雰囲気で始まったライブの1曲目は、はっぴぃえんどの「風をあつめて」 ギター2本のイントロが流れ始めた瞬間『風待ちろまん』のジャケットが頭に浮かんでしまった。 なんだかすごくはっぴぃえんどっぽいんです、ギターの音が。 な、なんだこれ〜! いきなり私は心をわしづかみされてしまった。
カフェ萬屋宗兵衛は、若干広くて落ち着いた感じの店構え。 なんだか安心してしまう空間を持っている。 その中で、つむがれる「風をあつめて」がなんてぴったりなんだろう。 歌い始めた雄大さんは、やっぱり雄大さんだったので不思議な気分だったな。 どんな曲でも自分のものに出来てしまう雄大さんは本当の歌うたいだ。 もう長い付き合いになる雄大ファンの友人も同じことを言っていた。
今夜は2部構成。 前半はカバー曲で、後半が雄大さんのオリジナル曲となっていた。 雄大さんはちょっとピアノのほうが多かったかな。 完治さんは雄大さんのオリジナル曲のときはほとんどテレキャスを抱えていた。
カバー曲はセットリストをごらんあれ。 意外な感じなんだけど、雄大さんだったら歌いそうなラインナップ(と感じたのは私だけかな) 「あの日に帰りたい」「卒業写真」は実は超個人的に思い出深い曲。 これは誰にも話したことがなく、これからも話すことはない思い出をつれてくる曲なのだけど、まさかこの曲が選曲されてるとは・・・。 なんともいえない気持ちになってしまった。 とは言うものの、私実は、ユーミンをほとんど聴いたことがないという不届きものなのです。 そんな私が当時ハードローテーションしていた唯一の2曲がこれだった。 ボサノバはだめですよ・・・心ごと持ってかれてしまいますから。 つぶやくように歌う雄大さんのハイトーンは、ユーミンの曲にぴったりだったな。
なんとも優しい時間が流れてゆく。 完治さんの指はとにかくとまることがなく、ずっと何らかのフレーズを弾き続けている。 それが実に多彩だ。 雄大さんの歌に寄り添って聴こえたり、完治さんのギターが歌っているようにソロを弾いたりする。 何より驚いたのは、完治さんはいつだって雄大さんの様子を伺っていた。 雄大さんの次の出方を伺っているように最初は見えたのだけど、多分、完治さんはギターを弾いていてとても気持ちよかったんじゃないだろうかと今は思う。 完治さんは一つ一つの音を大事に弾いている。 優しく弾くときも、強く激しく弾く時もギター自身にはやさしく触れている。 その姿に私は何度も釘付けになってしまった。 対する雄大さんも、なんだか余裕が感じられた。 安心して完治さんのリズムに身を任せていたのかなあ。 声の伸びが、ここ最近聞いた中ではぴか一だったと思うんだよね。 ピアノもギターもいつもより余裕がある感じを受けたのだけど・・・・やはり、完治さんという強力な相棒がいたからなのかな。 後半は多少激しくなるのだけど、それでもライブ全体がゆったりとした雰囲気だった。
カバー曲でもっとも驚き印象に残ったのは「Fragile」 これはSTINGの『Nothing Like The Sun』というアルバムに入っている曲で、私が唯一聴いたことのあるSTINGのアルバムだった。そして、「Fragile」は唯一英語詞を必死で覚えてよく歌っていた曲なんだな。 まあ、そんな私の思い出などどうでもいいのだけど、とにかくSTINGといえばすぐに思い出すほどの代表曲といってもいい。 サビで”星が涙を流しているようだ”というくだりがあるのだけど、いつも涙が落っこちそうになる。 それを雄大さんが目の前で歌っている! おまけに、完治さんのギターときたら、なんてやさしいんだよっ。 ほんとに優しくギター触る人なんだよなあ。 どのカバー曲も2人の曲になってた。 カバーなんだけど、繰り出されるギターのフレーズやピアノのフレーズはやっぱりオリジナルとは似て非なるもの。 なのに、原曲の雰囲気も損なわずに2人の曲になっちゃってた。 すごいわ。
前半が終わって休憩に突入。 同じテーブルの友人たちと今聴いたばかりの曲について興奮しながら喋っていた。 あんまり気持ちいいのでお酒もおいしくて、この日はいつもより多めに飲んでしまったな。
そして後半の始まり。
koube0617-03いつもは最後に歌う「母の手」から。 完治さんのギターがいい感じにいつもと違う雰囲気をかもし出す。 ギター1本入るだけなのに、まるで雰囲気の違う曲に感じた。 おつぎは、雄大さんもギターに持ち替えて、「レイニー・サマー」 これが鳥肌ものだったのだ。
完治さんはボサノバが得意なんだろな。 完治さんのバッキングに雄大さんのソロギターがのる。 なんと言うか・・・雄大さんのギターもいつもと違うんだよ! 音が深いし、プレイになんだか余裕が感じられる・・・いったいなんの化学反応なんだ!? そりゃ、あれだけのギターアクトに乗せて歌うと気持ちがいいだろうなあ。 声の伸びがすごい。 これはぜひ、ラジオで流すべきです!! ・・・おっと、ちょっと興奮してしまったようだ。
さてさて、気を取り直して(?) 後半では意外にアップテンポの曲が続いた。 雄大さんのピアノと完治さんのテレキャスの大競演。 テレキャスですよ! エレキギターの中では一番好きな音を出すテレキャス! なんてうれしいんでしょ〜♪ とにかく、雄大さんと完治さんのリズム感がものすごくよいので、ギターとピアノだけなのにノリがよくって、いつものように座席で挙動不審タ〜イム。 すばらしいリズムに、体の揺れが止まりません。 それは「Something Never Change」から「Midnight Calling」間で続いたのだった。 「Some Dance」では、な、なんと完治さん! テレキャスで、スラッピング奏法なんか始めちゃった。 スラッピングはベースのものだと思い込んでいたので、ギターのスラッピングを目の当たりにしてものすごいカルチャーショックを受けた。 なんというか、自分の中にある”ものさし”の短さをまたまた感じた瞬間だった。 こりゃ、ギター弾きの友人たちにぜひ伝えなくちゃ〜とまで思ってしまった。 完治さんのスラッピングギターは、YOUTUBEにて聴くことができるので、ぜひ体験してほしいなあ。
koube0617-04後半ピアノの多かった雄大さん。 今夜の彼は、ピアノマンだったなあ。 軽くタッチを繰り返しているような印象で、かる〜く演奏していたように見えた。 とにかく楽しそう。 「Midnight Calling」のテレキャスの音が、頭から離れません〜! ころっころキラキラ音にピアノのマルッとした音が絡んで、なんともはねたリズムになるのだ。 も〜耳が喜ぶ喜ぶ♪
そしてあっという間にアンコール。 いっちばん最後の「見上げてごらん夜の星を」は、Ustreamで公開されていたんだけど、今はどうなったかな。 彼らの「見上げてごらん夜の星を」は、若干ミディアムテンポで楽しい感じなんだよね。 一番最後がこの曲でなんだか幸せな気分だった。
ライブの時間はあっという間の出来事で、今思い出しても夢だったのかなあと思ったりする。 しかし、頭の中には時々この日聴いた雄大さんの歌や完治さんのギターなんかがパッと思い出されるから、きっと夢ではなかったんだろう。
雄大さん、完治さん、とても優しくて楽しい時間をありがとうございました。
>>セットリスト<< 1.風をあつめて(はっぴぃえんど) [A.G]+[A.G] 2.あの日に帰りたい(荒井由実) [P] +[G.G] 3.卒業写真 (荒井由実) [P] +[G.G] 4.Lately(Stevie Wonder) [P] +[G.G] 5.上を向いて歩こう(坂本九) [A.G]+[G.G] 6.Fragile(STING) [A.G]+[G.G] 7.あいたくて(石井完治) [A.G]+[A.G] 8.AKANE・IRO(石井完治) [P] +[G.G] —-休憩—- 9.母の手 [P]+[G.G] 10.レイニー・サマー [A.G]+[G.G] 11.愛の歌 [A.G]+[G.G] 12.Something Never Change [P]+[E.G] 13.Don’t be afraid [P]+[E.G] 14.SomeDance [P]+[E.G] 15.Midnight Calling [P]+[E.G] —-アンコール—- 16.飛び方を忘れた小さな鳥 [P]&[E.G] 17.見上げてごらん夜の星を(坂本九) [A.G]&[A.G]
雄大さんの声でこの曲を聴くと、本当に元気になれる。 だから今回のタイトルは「上を向いて歩こう」なのです^^
2011.6.17(金)『鈴木雄大 with 石井完治『母の手』LIVE 2011』(at 神戸 カフェ萬屋宗兵衛) 「上を向いて歩こう」 WORDS BY 永六輔、MUSIC BY 中村八大、PLAY BY 鈴木雄大(オリジナルは坂本九)
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