17歳のアメリカ少年がビルに小型飛行機を激突させて死んだ。
彼のポケットには遺書のようなものが入っていて、ラディンに共感するなんて事が書かれていたらしい。 当局は、単独犯と断定したそうだ。
TVニュースを見たとたん、込み上げる笑いを押さえ切れずにいるラディンの姿を思い浮かべた。 思わず背筋が寒くなったね。
スティーブン・キングというホラー作家がいる。 アメリカ屈指のホラー作家で世界中にファンを持つ。 私もその中のひとり。
このニュースを見た時、私は彼の「ゴールデンボーイ」って小説を思い出していた。 新潮文庫から出版されている彼の『恐怖の四季 春夏篇』に収録されている。(余談だが、これには映画『ショーシャンクの空に』の原作「刑務所のリタヘイワース」も収録されている。)
スポーツ万能・成績優秀のアメリカの一優等生の少年が町で一人の老人を見かける。 少年は彼が元ナチス将校である決定的な証拠を掴み彼を脅迫する。 それは単に、彼の昔話を聞き出すためだった。 しかし、少年はいつのまにかその狡猾な老人に操られはじめる。
今までに読んだキング作品の中で1番恐かった。 悪魔もモンスターも出てこないけど、恐いよ。 これは映画化もされているんだけど、あまりの壮絶な終わりになんとも言えない気分になるという話だ。 私はまだ見る勇気がない。
小説の終わり、興味半分だった少年は、老人に殺人技術を伝授され、巧みに意識を操られ最後には衝動的に殺人を犯してしまう。 そんな気はなかったのに・・・。
老人は、おもしろ半分に過去を根掘り葉掘り聞き出そうとする少年にうんざりしていて、憎しみさえ生まれていたんだ。こいつさえいなければ、自分は平穏無事に一生を終えられているはずなのに・・・。 そこで、その憎い少年に昔話を話して聞かせるという形で、彼を殺人者に仕立て上げていくのだ。ナチス時代にしていたようにね。 その過程、老人は時を追うごとに冷静さを増し、少年は熱に浮かされ我を忘れていく。 アメリカって国の暗い部分を垣間見た気分になる。
小説に出てくる少年とビルに激突した少年はよく似ている。 もしかしたら、この小説を読むことで少しは彼の気持ちが分かるかもよ。(まあ、これはあくまでも勝手な憶測だけどね。)
さて・・・・そういう訳で、ニュースを見ながら私はこう思ったんだ。
ビルに激突した少年は、本当に単独犯といえるんだろうか? そして、この事件はアメリカだから起こった話なのかな?
どこかで生きてるだろうあいつが、一番望んでいる結末はまさにこういう事件なんじゃないのだろうか。
「ジマーマンラビン」 MUSIC & WORDS BY 浅井健一、PLAY BY SHERBETS
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