**‡還ってきた‡**  姐さんの戯言
姐さん



 それは、非常に苦痛な前戯


「今日は、抱かないからね」

逢った瞬間にそう言われ、ゾクゾクした。

しないの? と思う気持ちと
わかったよ、と思う気持ちが交錯する中で
前回のセックスを頭の中で反芻し
頭と、気持ちと、躰のバランスが崩れる。

食事をする
映画を観る
散歩をする
ドライブをする、といった普通の行為をしている
わたしという人間を
頭と、気持ちと、躰のバランスが崩れている人間が
わたしを支配していることなんて
きっと周りの人には解らない。

となりのテーブルで食事をしている人には、解らないだろうし
後ろの席で映画を観ている人にも、解らないだろう。

笑いながら話している単なる「皮」とは裏腹に
ねっとりとした体液が溢れ出しそうな「裡」が潜んでいる。

そして
そのアンバランスさが愉しいと感じる自分が、そこにいる。

更に言えば
その葛藤に悶えているわたしを眺めることを愉しむ人も
その場にいる。

指先が触れるだけで
そこに心臓があるかのようにドキドキし
わざと身体を近づけ体温を感じさせられるだけで
下半身から愛液が滲み出て来ているのを感じる。

直接肌に触れなくとも
弄り、嬲られているような感覚。

それは、非常に苦痛な前戯。

その前戯は
次回、逢うまで終わらないこともあった。


これって
わたしが知っている中では究極の前戯、かな。



多謝


2007年06月09日(土)
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