Dynamite徒然草
Dynamite徒然草

2005年03月20日(日) ・・・ものすごく揺れたわけで。




夫婦喧嘩のあとです。


・・・違います。



いわゆる福岡県西方沖地震です。

我が家は十階以上にあるうえ
北西に面して建っているため
これでもかってくらいに揺れました。

ぐらぐらっ・・・ときたかとおもったら
あとはもう

どっしゃん!がっしゃん!どしゃどしゃどしゃ!!!・・・

の連続ですよ。

台所で食器を洗っていた私は
どっしゃん!が始まった直後にガスを消し
リビングの本棚の前で遊んでいた息子にかけより
どの方向からも何も飛んでこない位置を見計らい
息子を抱いたまま引きずって移動。
ラグの端をつかんで、いざというときはこれで息子をくるんで上に被さろうと構えつつ
部屋にあるものが日常ありえない動きをするのを凝視しておりました。


私がさっきまでいたシンクの前に、水切りカゴが食器や横にさしていた包丁ごと飛んでくる。
シンク下の扉が一斉に開いて中身が飛び出してくる。
食器棚の5枚の扉のうち4枚が開き食器や酒類が落ちて砕ける。
本棚がひと揺れごとに一歩ずつ前進しながら上段の本を吐き出してくる。
冷蔵庫が右左に揺れながら前進してくる。
パソコンが音をたてて壁に倒れ
プリンターやスキャナが棚ごと飛んでくる。
机の上に置いていた書棚と書類ケースがありえない方向に飛んでくる。


・・・揺れがおさまるまでずっと凝視しました。


ひどい揺れがおわり
息子をしっかり抱いて
「かーちゃんがついてるから大丈夫だからね。ここにじっとしてるんだよ」と言うと
息子はこくんと頷く。
まず退路の確保のため、底の厚いスリッパを履いて、散乱した食器の上を歩いて人形ケースが落下した廊下を通りドアを開ける。
次いで外を確認。火災やガスの臭いは無い様子。
隣室の戸を叩いて母&マヒ父の無事を確認。

室内に戻ってテレビのチャンネルをNHKに替え
「地震、怖かったね」と言い続ける息子を抱いて
「大丈夫だよ。お部屋こわれちゃったけどケガしなくてよかったね。ラッキーだったね」と励ましながら
1階にいるはずの夫が上がってくるまで部屋で待つことに。

間もなく夫が階段を上がって到着。
息子に上着をきせ、下駄箱に入っていた新しい靴を履かせ
余震がくる前に夫には息子を連れて待避&夕食の買い出しに行ってもらう。

さあ
あとはテレビのニュースで情報を得つつ
軍手を倉庫から出して雑巾出して
まずは割れ物の片づけからですよ。

やたらと続く余震で船酔いのようになりつつ
とにかく今夜この部屋でも休めるようにするために
私が働かずしてどうなりますやら。
割れた食器や酒をだーっと片づけ
こんなとき吸引力がマックスの掃除機・ミーレは便利だよなと思いつつ
細かな破片をがんがん吸い込んで回収。

余震が続く中でただひたすら時間を忘れて片づけを続け
気が付けば夕方。夫から寿司の差し入れがあったのを思い出し、食べる。

八時過ぎに夫と息子が楽しそうに帰宅。
「部屋、ずいぶんきれいになったねー♪」と二人して喜ぶ。
ここで余震を経験させなくてよかったと、息子の笑顔をみて思う。
部屋もベランダや机周り以外はだいぶ片付いたところ。
机周りは夜中中にやってしまおう。

私も一段落して夫と息子にシャワーを浴びさせ
布団を敷いて寝かせようとしたところ
ズズンっと余震が。

「大丈夫だよ」と声をかける私と夫に
息子は懇願するように「そばにいて」とつぶやく。
いつものように川の字になって息子をはさみ
寝かしつけていると
小さな灯りだけをつけた部屋で
息子の、大きなくりくりお目目が
いつまでもずっと見開かれていることに気付く。

「どうしたの?何か思うことがあったらお声に出して言ってみてごらん?」

すると彼。

「・・・地震、ほんとに怖かったね」

「うん、ほんとに怖かったね。でもしゅうはとーとかーがどんなことがあっても守るから絶対に大丈夫だよ。いろんなものは壊れちゃったけど、ケガしなくてほんとによかったね。これからもきっと、何があっても大丈夫だからね。今日みたいに必ず守るから。地震になんかに負けないから・・・」

私が呪文のようにそんな言葉を言い続けるうち
ずっと見開かれたままだった彼の目が
少しずつ閉じて、やがて呼吸が寝息にかわっていく。

食器や家具が傷ついたり壊れたりしても
また買ってくればいいだけのこと。
思い出の品が壊れてしまっても
それは自分の心の中で再生すれば良いだけのこと。

いちばん怖いのは幼い心が受けた恐怖のキズ。
この小さき者を癒せるのは私と夫しかいないのだから。
たとえ体はなにひとつ傷ついていなくても
心に確かにキズを負っている。
あの瞬間が彼の小さな心に恐怖の記憶として焼き付けられている。

部屋は頑張れば元に戻せるげれど
簡単には元に戻せないものがあることを
思い知らされた夜でした。

抱きしめることしか私たちにはできないのだけれど。


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書いてる人 : Dynamiteおかん