すでに失ったハズのモノが帰ってくる偶然があった。
それはすでに私のモノではなく。
すでに手に入れたと錯覚するモノがあった。
それはまだ私のモノではなく。
それでも私は失うのに怯えて四方八方に手を伸ばす。
では何を失いたくないのだと
自分に問われてもそこには失うものの実体など何も無く。
ただ私の進んできた道のそこかしこに
忘れてはいけないモノだけが点々と跡になって残っている。
何かに怒る度。
何かに泣く度。
何かに笑う度。
何かに憂う度。
何かに喜ぶ度。
何かに心動かされる度。
忘れてはいけないモノだけが増え、
私はそれだけを抱えて歩いている。
・・・ハズ、だった。
他に確かなものなど何も無く。
失うだけのモノなど何も持たず。
自分を救うモノなど何も無く。
望むだけのモノなど何も手に入らず。
ただひたすらに
私の主は私。
私の声は私。
私の僕は私。
私の夢は私。
私の自分は、私。
他の誰が私だと言うんだろう。
分かっているクセに。
誰か助けて。
誰か助けて。と。
耳を塞いで目を閉じて膝を抱えて。
喚いて散らすだけで歩こうともせず。
失うはずも無いモノの幻想を恐れて。
本当はそんな人生、要りもしないクセに。
本当はそんな人生、合いもしないクセに。
お前はいつまでも甘えている。
忘れるべきではないモノを忘れかけて。
私の呆れた声が私の頭に。
響く。
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