自言自語
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2001年09月22日(土) 月が一番近づいた夜

その日 月が一番近づいた。

 ユウコはユウキと二人で七月の満月を見つめていた。
 その日の月は、やけに大きく見えた。
 ユウキが言った。
 「きれいだね。」
 ユウキはどこにでもいる子供のように、まさに子供のように笑ってみせた。

 どこにでもある当り前の風景。
 それなのにユウコは溢れる涙を堪えることができなかった。
 涙を隠すために見上げた空には、やけに大きな月が見えた。



その日 月が一番近づいた。

 ナミは生まれたときから耳が聞こえなかった。だから言葉も話せなかった。
 マサルは静かに笑う可愛い娘をその腕に抱きながら、やけに輪郭のはっきりとした大きな満月を見上げていた。
 周りがやけに静かだからか、遠くを走る車の音がはっきり聞こえた。
 「ここも結構都会だな。」
 マサルがそう誰に話し掛けるでもなく独り言を呟いた瞬間、音が消えた。
 この世の全ての音が止まった。マサルは自分の耳がおかしくなったのかと思ったほどだった。
 しかし、そんな考えもすぐに間違いだと分かった。
 声(おと)が聞こえたのだ。
 「しずかだね。」
 自分の腕の中の娘の口から。

空にはやけに大きな月が見えた。



元ネタ:シオン「月が一番近づいた夜」


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