夕暮塔...夕暮

 

 

海沿いに - 2004年05月01日(土)

車が発進する直前、隣の運転席のブレーキの位置と、自分の携帯の在処をちらりと確認する。
母を外出先へと送った帰り道はきらきらと五月の空、シーサイドラインは過ぎる程に眩しい。助手席に座る私が外の写真を撮りたそうにするのに気付いて、退院したばかりの父が海を見下ろす駐車場に停車してくれる。いつ何時心不全を起こすかわからない、もはやひとりで車を運転することすら危ぶまれるこの父親の、心臓がもしもほんとうに突然止まってしまうのだとしたら、叶う事ならこんな風に私が隣に乗っているときであってほしい。もうどこへ運んでも助からないなら海に車ごと突っ込んでしまってもいい、愚かしいとは自分でも思う、残される苦痛を味わう覚悟がないだけの弱さだとわかっているけれど、遠くにいて電話で急逝を知らされるくらいなら、その方が私にはずっとありがたい。




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幾度でも海沿いに流れゆくたびに思い出すきっと晴れたこの日を


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