夕暮塔...夕暮

 

 

冬眠 - 2003年12月29日(月)

きりりと冷え切った廊下で、硝子越しに鯉の棲家を見下ろす。池と呼ぶには簡素で深過ぎる、堀と呼んだ方が正確かもしれないその人工的な器にたっぷり満ちた冷暗色の中で、鯉たちは殆どが水底で眠っている。かろうじて水面近くに上がって来ている子も、緩慢に鰭を動かすくらいで、ゆるゆるとしか進まない。
雪国の魚は粛々と冬眠する、それが当たり前だと思っていた時期の方が長い筈なのに、この頃は不思議に感じられつつある。

温泉に行ったり、祖母がお地蔵様の着物や帽子を縫うのを眺めたり、祖父にヒマラヤやモンゴルの写真を見せて貰ったり、暖かい床の上で母や弟とお昼寝したりしているうちに一日が終わる。私にも魚のように煩雑さのない静かな冬が訪れたらと思うことはある、けれどこういう風に過ごしていれば、充分に満ち足りて穏やかな日々。


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