夕暮れの魚 - 2003年12月16日(火) 帰宅しようとすると、守衛さんが大事にしている三毛猫が鳴きながら現れてこちらへ寄って来た。ごめんね、今日おいしいもの持ってないの。しゃがんで言ってみるけれど、通じていないのか最初から食事の世話など期待していないのか、にゃーんと鳴いて私の腰のあたりに身体を摺り寄せる。背中や肩のあたりをそっと撫ぜると、柔らかな毛並みが僅かに冷えているのがわかる。 北の地平近くは桜と薄色を混ぜたような色で霞んでいる、この時期特有の、不透明水彩みたいな白っぽい暮れ方だ。西は淡い金色の光にどこまでも透かされながら暮れてゆくけれど、空の高いところはもう澄んだ青紫をゆったりと広げている。一片の雲もない空を進む飛行機の痕跡は雲にならないうちに消えてしまう、夕陽に照らされてピンク色に染まったそれが、細い紡錘形の魚が泳いでいるように見えるので、視界から消えるまで夢中になって見上げていた。 -
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