夕暮塔...夕暮

 

 

幽霊と友達に - 2003年08月10日(日)

「長く生きたから、怖いものは何も無くなった。もう、幽霊とだって友達になりたい」 と少し変わり者の祖父が笑う。今月はまたモンゴルへ出かけて写真を撮ってくるという。何となくこの興味屋さんは外国で死ぬつもりではないかという気がして、このごろは私もそれを考えると呆れたような楽しいような気分になってしまう。そういう目的で発つわけではなくてもとりあえず覚悟はあるらしい事をしょっちゅう匂わせて、「山や外国で何かあっても、俺には捜索とか出さなくていい。そこでそうやって死ぬからいいて」 などとからから笑い、それが真剣に言っているのだとわかるようなニュアンスなので、働き者の賢い祖母をキレさせる。「そういうわけにはいかないでしょ!!」 という言葉でさえ壁紙にでも聞かせているかのような態度で流す。「それで本望なのになあー……」
掴まって殺されても? と私が尋ねて、「ああそんなの、全然構わないよ」とあっさり返答された時にはちょっと閉口した。
私はこの極楽とんぼで穏やかな祖父を心から敬愛しているし、いなくなったらどうしようと思って本気で泣いた事もあるけれど、結局はこういう、常識の枠からややはみ出していて背中に羽の生えたような人には、本人の望むようにしてもらうしかないのだとようやく思うようになってきた。もしも祖父がどこかの山や遠い国で亡くなったら、きっと多くの人が泣きながら、まったくしょうのない人だった、と笑うだろう。


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