夕暮塔...夕暮

 

 

怯えても - 2002年11月06日(水)

「…ちょっと、二人きりになれる所で、話を」
彼女の思いがけなく真剣な様子にどきっとして、頭の隅でほんの数分前に聞いたばかりの科白を思い出す。  …ドキッとする瞬間がある筈なんだ。ドキッがすべてだ、笑いまじりに上司が言って、席上の全員が笑み崩れた、だけどおそらく誰ひとりとして冗談だなんて思っていなかっただろう。

彼女の襟元、性格そのままに丁寧に巻かれている水色のスカーフを見つめて、私は悄然と言葉を探した。この穏やかで頼りになる先輩と、こんなに早く別れる事になるなんて思ってもみなかった。私が彼女より早くここを去る事はあっても、その逆があるなんて想像の範囲外だった。出世する人だろうと、前から思ってはいたのだ。だけどこんな時期に、こんなに急にその時が来るなんて。誤算だった。本当に。




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怯えても 震えてもひとみ開けたまま 雷鳴轟く先を見すえよ



胸を打つその瞬間がすべてだと うつくしき鍵を彼は差し出す


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