タイトルの感じから、暗くて退屈で悪い意味で昔っぽい映画かと思ったが、若いタレントさんの感想で面白かったというものがあったので「若い子の鑑賞にも堪えるらしい」と判断し録画してみた。 見て良かったです。 とても強く残る作品でした。 というわけで感想書きます(ネタバレ)。
舞台は第二次大戦前のイギリス。 上流の家の長女セシーリアは、使用人の息子ロビーと兄弟のように育ち、やがて身分を超えた恋人同士に発展してゆく。 そしてセシーリアの妹ブライオニーは多感で繊細な13才の少女。 ブライオニーのついた嘘がロビーに無実の罪を着せ、恋人達の運命を思わぬ方向へ変えてゆく。 そして成長したブライオニーが自らの過ちに気付き、贖罪の思いに駆られていくのが本作の主題だが。
少女期ブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンがすごく良かったです。 清楚で余裕のない少女らしさ。そして平然と他者を断罪できてしまう拙さと潔癖さ。 大好きだったはずのロビーを一気に冤罪へ追い込むまでの心の動きが見事です。 警察の車に乗せられるロビーを見下ろすブライオニーの冷たい視線。 純粋さは冷酷さでもあると感じたシーンだ。 瞬きしてなかったぞ。
また、演出が独特で、時系列の描き方がなんだか凝っている。 まずブライオニーがピンポイントで目撃したセシーリア&ロビーの衝撃(?)シーンが映され、そのすぐ後に時間を巻き戻してそこに至るまでの当事者達のやり取りが語られる。 視聴者は「ああ、そういういきさつだったのね」と納得できると同時に、ブライオニーだけが嫌悪感を募らせてゆく過程も理解できるようになっている。
で、ロビーが警察に連行されるまでの展開は見事なのですが、 この後、戦争へ行ったロビーに場面転換するあたりからなんとなく流れが悪くなるような。 特に引き上げ船を待つシーンがすごーく長く感じたのですが‥‥。 戦地での虚無感を語ったものなのだとは思いますが、そこだけちょっと早送りしたくなりましたね(笑)。
そして大人になり、自分の犯した罪の大きさを理解するようになったブライオニーは、姉セシーリアとロビーの家に謝りに行く。 「許さない」と言い切る姉、怒りもあらわに面罵するロビー。 「ま、そりゃ怒るよな」と思って見ていたが、最後の最後にこのシーンはブライオニーの著書の中の創作シーンだと判る。
現実には、ロビーは戦場で死に、姉も空襲で亡くなっていて、二人は一緒に暮らした時間などなかった。 そのシーンが架空だと知った時、この物語の重さがドンと増したように思います。 実際には口頭で謝ることすら不可能だった。
現実には、ロビーやセシーリアが嘘の証言をしたブライオニーに対してどんな感情を持っていたかは判らない。 「妹は看護士になった。自分のしたことが判ったらしい」という短いセリフがあるだけ。 もちろん気楽に許してくれるとは到底思えない。 が、ロビーが戦場で思い返すブライオニー(川で助けたシーン)には強い憎しみは感じられないんですよね‥‥。 ブライオニーの想像である「面罵するロビー」とつながらない。 実際に「謝りに行く」のを敢行していたら、想像とは違ったロビーに会っていたかもしれません。 それも今となっては判らないことですが。
それにしても。 晩年のブライオニーは作家となってこの事実を自分の作品として発表し、それを贖罪としているが。 あれで「うんうん、ブライオニー、君はちゃんと償ったね」と納得する観客はいたのだろうか‥‥?
ともあれ、映像がとても綺麗、音楽もタイプライターの音がとても効果的な作品でした。 文芸作品だからと敬遠しなくて良かった。 とにかく後に残る。 見終わって数日経つのにいつまでも反芻してしまう。
ちなみに主演は姉役のキーラ・ナイトレイとなっているが。 どう見ても主人公はブライオニーだよなあ?
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