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みかんのつぶつぶ DiaryINDEX|past|will
![]() 細々と様態が変化してきてしまった秋の風吹く日々で、病院内を散策することも悲しい切ない時間となってきていたのだった。それまでは会話をしながら文句をいいながら過ごした喫煙所では、ただじっと、日に当たるという行為となってしまい、喫煙するという彼の時間は、必要がなくなってきていた。 全く元気がない様子の彼を車椅子に乗せ歩く日々。 私のなかに広がる不安と焦燥、後悔。 富士山を見せてあげようと思って、行ったことのない5階の食堂へ行って見た。 夕焼け射し込む窓辺へ車椅子を近づけて、富士山が見えるよと声をかける。 見えただろうか、彼に。 車椅子に座ったままでは、見えなかったかも知れない。 黄金色の夕陽が彼の顔を照らし、まぶしそうに目を細めていた。 生きていた。 一緒に。
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