みかんのつぶつぶ
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♪も〜ど〜にでもして〜 CD化されるらしい。♪きみの笑顔をみて腰砕け〜♪ うがち氏のお気に入りですわ。癒し系。 あのキャラ、キミに似てるかもよ?言葉を話さなければ。ぷっっっ
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「迷いながら捨てたものは、もう一度拾って見直さなければ、前に進めない」
この言葉は、作品市場に出品されている小説のなかの文中にあって。 なるほどなるほど、だから私は拾い集めることが癖になっている日々なのだと納得したり。
あの日々に戻り、彼のそばへそっと近寄り、もう一度、正面から見つめてあげる余裕ができた現在の私は、もっと彼の気持ちを察してあげることができるのに。 それが叶わない今、こうしてそっと日々つらつらと文章にしてここへ置いてゆく作業で解決するしかないのだろう。
あれは、愛しい日々になっているのだろうか? 目を瞑り、何もなかったように過ごす自分を戒める作業になってはいないだろうか。
何かを語りたいのに、それがどうしても上手く表現できない、 というよりも、形にならないもの、こと、そして気持ち。
臨終を迎えるまでの1週間、泣いたのは悔し涙だけだった。たった5分。看護婦の対応に腹を立てて。 死を迎えることなんて、全く私のなかにはなかった・・・いや、認めることができなかった。 それは、永遠に続くであろう日々が脆く儚く目の前で薄れて行く様を感じずにはいられなくて、それをどうしても否定したいという現実逃避だったのだろう。
彼が危篤状態になっているなどとは思えず、私はあの朝、浴衣を洗濯した。コインランドリーで、ふかふかにした浴衣を持ち、彼に着せてあげようと。 ただ、それだけの想いで。 だが、医師から呼びとめられ、もう、側にいてあげたほうがよいと言われた。
病室を空けることは、やめなさいと。
私のなかで、何も動揺がなかった。
ああ、そうか。病室にいなければならない・・・
ただ、それだけだった。
病棟の廊下には、朝食を知らせる配膳の声と音。
「お食事でーす」
死後の処理が済んだという病室へ入ったときに、彼の姿がないと想い、 一瞬立ち止まり、目を凝らし、そして、 ベッドに覆われた白い布が、彼の姿だと気づいたときに、ギクリとした。
荷物が全て持ち出され、人の気配のなくなった病室に、 真っ白な布で覆われた彼は、もう、存在感のない姿になっていた。
まるで、長年人の住んでいない屋敷にある家具のように覆われて。
淡々とその動かなくなった身体に洋服を着せる作業。 退院したらまたこれを着て仕事へ行くのだと、入院する前に彼が買っていたシャツ。
ピンクのそのシャツは、白くなった彼の顔色に悲しいほど映えて。
帽子を被せて。
これから寒くなるから、丁度いいわね・・・と、看護婦さんが彼に声をかける。
娘は。 いつのまにか、彼の枕元にずっと提げてあったお守りを握り締めていた。 いまでも、家の鍵につけて、毎日カバンに入れて過ごしている。
息子は。 姿が見えないと気づいたら、会計前の、外来の椅子に座っていた。 学生服姿で。詰襟が、妙に悲しくうつった。 その制服という鎧で、彼は自分の気持ちを守っていたのかも知れない。
私だけがあの場面にいたわけではなく、 子ども達も一緒にいた空間。
もし、子ども達が同じように、 こうしてあの日を想い返しているとしたら、 それが一番悲しいことだな、と、 煙草を買いに出た数分の道のりで考える。
アノヒニモドッテモ、ヤッパリカレハシンデシマウノダヨ
拾う勇気もない私。
だけど感覚が甦る。 一瞬にして飛んで行くあの日あの時。
喪失感。 これが、そうなのだろうか。
* 作品市場 小説ジャンル「ガラス窓のある風景」*http://www.sakuhin-ichiba.com/
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