闇の底に...Cuckoo

 

 

拝啓 誰でもない誰かへ - 2001年12月26日(水)

 お元気ですか?
あたしは相変わらずです。
水鳥は恋をしたよ
あなたは恋をしてますか?

水鳥の恋は叶わないんだ
それも相変わらずだね うん
この間、好きな人に会いに行って来たよ
初めて会ったんだ
すごく緊張してね
会う前には 行くの止めようって何回も思っちゃたんだ
でもね 逃げるなって自分に言い聞かせてね 行ってきた
それなのに もしかしたら
その事事態が間違ってたかもしれないよ

一緒にいてね
面白かった。
変な人だったよ 
どうしていつもおかしな人ばかりすきになるんだろうって思うけど
なんだかとっても愉快な人だったよ
小さな声でぼそぼそ話すのが癖のようで
なのに小さな声で話す言葉はおかしな話ばかり
自分の事をね「おっちゃん」とか「おとうちゃん」って時々言うの
あたしより年下なくせにね
どっかに行くたびにね
「ここはおとうちゃんが払うよ」
って言うの
でもあたしは絶対に自分で出したよ
ちゃんと『友達として』のけじめを自分でつけたよ
ただ 最後に食事した時みんなで割り勘したのに
水鳥だけおとうちゃんに払い忘れちゃって
それは後悔してるんだ
その人はね 時々水鳥をじっと見るの
水鳥はね いつもその人をじっと眺めちゃうの
すごく遠い人に感じてね 寂しくって
もう会えないかもしれないって 目にその人の姿を焼き付けたかった
その人が水鳥を見るとね 緊張するんだけど
それでも目が離せなくなるの
なんでだろうね 綺麗な目だったよ
水鳥には無い 綺麗な目だった
ほんの一瞬でも目を離すと 隣から消えちゃうんじゃないかって
そう思えたんだ
水鳥は夢を見てるんじゃないよねって そう願ってた
でももしかしたら 全部夢だったのかな
そう 夢だったのかもしれない
水鳥の隣にあの人がいたなんて 今じゃ想像つかないもん

その人がね 水鳥にマフラーを貸してくれて
すごく寒かったから貸してくれて
ずっとそのマフラーを握り締めてた
水鳥はね 自分でしてたファーのマフラーを
彼に貸してあげて つけてあげたの
そしたらね チンピラみたいで二人で笑ったよ
嫌だよって 自分が貸してくれたマフラーの上からつけてくれた
恥ずかしくって照れくさくって 嬉しかった
二人でいるときはね カップルみたいになれたよ
それはほんの一瞬の事だったんだけどさ
でも 手を伸ばす事が出来なかった
腕を組んでみたかったけど 無理だったよ
触れた瞬間にいなくなるんじゃないかって怖くて
ずっと近くで歩いてたけど
見えない壁に遮られてたんだ
一定の距離を常に保って歩いた
風邪が通る隙間も無い距離でいれたけど
透明のカーテンがそこに確実に存在してたんだ
これがきっと
近くて遠い距離 っていうんだろうなって
深く思ったよ
もう逢いに行く事はしないと思う
だからもう逢えないんだと思う
それを分って 逢いに行ったのに
もうちゃんと諦めるつもりなのに
なぜか 逢いたくて逢いたくて
声が聴きたくて
逢ってしまったからなのかな
水鳥が間違っていたのかな

一緒にいる時はね なぜか頭が痛くならなかった
ほら 水鳥いつも頭痛いっていうでしょ
でも痛くならなかった
ただ 心がギュッとして痛かったよ
何度もそこにいるのか 不安になって
急に振り返ってびっくりさせちゃったんだ
車を止めた時に ギアをグルグル回すのがいとおしくって
真似してグルグル回してみたら 笑われちゃった
そしてその笑った顔に
水鳥は何度も恋をした

ちゃんと諦めるよ
でももうちょっと勝手に好きでいちゃうと思う
好きな人に好きじゃない振りをするのって大変だね
でもがんばるよ

逢いたくてでも逢えなくて
声が聴きたくてでも電話がかけれない
愛しい人が他の誰かを愛すのを
水鳥はここで黙って見てなくちゃいけないんだね
その覚悟をつけなきゃいけないんだね

長い長い手紙を読んでくれてありがとう
誰かにそっと話したかったんだ
でも誰にも話せないことに気がついてさ
だから
誰でもないあなたに手紙を書くことにしました
馬鹿な水鳥を笑ってください
そして少しだけ
一緒に泣いてくれませんか?

誰にも送る事のできない手紙を

あなたに


...




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