過去との遭遇（獅子鷲）
 Past : Will 2006年04月02日(日) 


「わ…」

ソファの上の自分に背を向けて、パソコンをいじっていた（正確にはネットサーフィンしていた）走。
溜息とも、驚きとも取れるようなトーンの声色に、思わず視線を読んでいた雑誌から動かした。

見れば、左手をマウスの上に乗せたまま、硬直している。

「どうした？」

―ベイスターズが負けたか？
―株で損でもしたのか？

と、ヤツがショックを受けそうな材料を考えてみる。
でも、変なんだよな。走の背中越しに見える画面は、スポーツニュースのサイトのように見易さに特化されたデザインでもないようだし、株価のグラフなんかが見える訳でもない。
画面に踊るのは―字までは見えないが―ピンクとかムラサキとか、何かオンナノコが喜びそうな感じの色彩。

読んでいた航空雑誌より、そっちへの興味が勝った。立ち上がって、走の後ろから画面を覗き込む。

「コレ、何？」
「ん…なんか、リンク辿ったらね…」

走が見ていたのは、ブログだった。
タイトルは、『PINK THINK TINK☆』（意味がわからない…）
溢れる絵文字と写真で飾られたそのブログは、どうやらOLの買い物日記のようだ。どこで何買ったとか、雑誌に載ってたアレをゲットしたとか何とか。
他愛ない内容だけど、これ見て何で走が固まるんだ？

「どした？」

「や…コレ、どうも元カノっぽい。カオは流石に出してないけど」

走が言うには、
服や靴やバッグの趣味（ブランドやら色やら素材やらな）
体型（服を紹介するため着てみた写真があったり）
カオの雰囲気や輪郭（勿論カオはぼかし加工してあるけどな）
好きな映画や作家の趣味（しかも結構コア）
行動半径の相似（住んでるとこが似てるらしく）

極めつけは、鎖骨の下にあるホクロ。
（何と、買った水着を試着して写真をアップしていたのだ）

らしい。

「何ていうか、微妙…もう絶対会わないと思ったのにさ」

あー、そりゃ確かに解る。
あんまりいいカタチで別れたって訳じゃないと、その後相手の消息聞くのも嫌になるんだよな。なんか。

画面の向こうの彼女は、華やかなものに囲まれて、毎日あたしは楽しいのよ、幸せなのよと主張している。

「何だかなぁ。ちょっとびっくりして、ちょっと複雑」

なんて言って尖らせた唇を、無理な体勢で奪う。
そして、後ろからぎゅっと抱きしめて、画面を見つめて、こう言う事にした。

「元カノさん、よろしくー。今カノでーす」


ま、元カノが聞いていようがいまいがそんなことはどうでも良くて。
ただ、走に聞いて欲しかっただけなんだけどな。


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Yahoo!JAPAN十周年かよ！早いなぁと思いまして。
しかし裏を返せば十年前、家庭でネット繋いで、自分が不特定多数の人に読んで貰えるような話題とか文とかを発信できるなんて事は夢にも思わなかったというワケで。
そもそも、自分らの世代は高校で『情報』のカリキュラムがなかったギリギリの世代。それこそ、大学入った当時、キー打つより手書きのがよっぽど早いよーなんて言ってた人も周りにいたくらい。
それが今じゃ…ネット泳いであらこれ知人みたいな消息の掴み方が、珍しいコトじゃないもの。
同人誌の奥付に住所書いてある本も殆どないみたいだしね！（ヲタ的な話題）

というわけで、獣医には元カノのブログを発見して貰いました（笑）
最近増えましたね。ショッピングブログ。結構面白い。自分がショッピング大好きってのもあるけど、見ててわくわくするのがいい。着た写真とかアップしてあるし、感じが解るから自分が服買うときの参考にもなります。
露出が多い（個人バレしそうな材料が多い）から、これ知人が見たら分かっちゃうよな絶対…なんて思いつつ。

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