惜しめども 春の限りの今日の日の(獅子鷲)


 Past : Will 2004年05月08日(土) 


ガサガサした唇が、まぶたに触れて、鼻先に触れて、頬に触れて、手に触れて、肩に触れて。
生温かい感触に、ゆるゆると意識を揺り動かされる。

「ん…、じゃま…」

近づく顔を押しのけると、その手の平にも、唇が押し付けられた。
小指の腹に、親指の付け根に、手首に、ひじに…。

「も…う、朝からサカッてんじゃねぇよ」
「朝だから。でしょ?」
「…年がら年中だろ、てめーは」

渋々、目を開けて、すぐ近くにある顔を睨みつけたら、それは心外。みたいな真面目くさった表情で見返してきやがった。
一瞬見つめあって、なんとなくこそばゆくて目をそらしたら、途端に敗北感がこみ上げてくる。
のしかかる身体を押しのけて寝返りを打つと、さらにしつこく覆い被さってきて、とにかく何がなんでも…シたいらしい。
まだ頭が起ききらない俺は、毛布ごと後ろから抱きすくめられ羽交い締めされて、その刺激を受けて、思わず大あくびしてしまった。

「…色気ないなぁ」
「元からねぇっつの」

ツッコミをいれて、もうひとつ大あくび。
眼の端に浮かんだ涙を、走の指先が丁寧に拭う。
あくびの効能で、新鮮な空気が脳に回って、少しだけ覚醒した俺は、軽く首を回して、走の顔を眺めた。
あ〜あ〜、鼻の下伸ばしちゃってさぁ〜。どうなんだよ、それって…。
まったく仕方ねぇなあ…。
身体をずらして、きちんと向き合う。それから、腕を伸ばして首を抱え込み、オハヨウの挨拶にしてはディープなキスを受け入れた。

「ぅ…ん」

ちゅ…とか軽い水音が耳をくすぐり、身体も気持ちも煽る。いとも簡単に夢中になってしまう自分が悔しい。
悔しくて、唇が離れた瞬間、まったく意味のないことを口にして、意識をそらしてみたりして。

「いま、何時?」
「…九時ぐらい」

パッと上目づかいに枕もとの目覚ましを見た走は、また変なことを言い出すのを防ぎたいのか、俺の口に手の平を当てやがった。
が、次の瞬間、ハッと起きあがって、

「やば。今日、ゴミの日?」
「…知らねぇよ」
「いま九時? まだ間に合うかな…うわ、なんで俺忘れてたんだろ。くそ〜」
「…」

パンツ一丁で台所に駆け込むなり、ガサガサとビニールをまとめる音が聞こえてくる。
半裸で放置された俺が、呆然としてたら、

「ごめん岳!今日、資源ゴミの日だった!」
「…」

っていうか、どんな理由なんだ、それは!
しかし、資源ゴミと俺と、どっちが大事なんだよ…。
とか言うのも、あまりにもバカらしく。
…言っちゃうけどな。

「…そんなに大事なことなのかよ」

「当たり前だろ。燃えるゴミは週2回、燃えないゴミは週1回あるけど、資源ゴミば2週間に一回しか来ないんだぞ。しかもしかも、五月は黄金週のせいで月一回、今日限り。地球に優しい獣医としてこれは忌々しき問題なワケ」

「……あ、そう」


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きっとこれは土曜日。
だから鷲ちゃんが獣医宅にいるんだと(笑)
うー…なんか最近指がむくむ…いやだなぁ。


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