桜の花の、段葛(入学祝いに代えて。なんたな。)


 Past : Will 2004年04月12日(月) 


「なぁ、玄。どうして、卒業式で第二ボタンをあげたりもらったりするんだか、知ってる?」
「…さぁ」

答えが聞きたかったわけじゃなかったけれど、実際、表情も顔色も変えずに問いかけを流されるとムカツク。
南條の方が、俺より先を走ってるみたいで、その大人びた態度にちょっと腹が立つ。

「なんてツラしてんだよ、慎太郎」
「痛ッ」
「なんで、第二ボタンなのか。知らないんだろ?教えてやろうか?」
「…別に」

むに。と、頬を引っ張る指先を払いのけ、ムッと口をとがらせたら、ニヤッとしやがった。
そして、自分の第二ボタンに手をかける。

「このボタンの位置が、ココロに一番近いから」


「こころ?」
「心臓に一番近いだろ」

南條の拳が、軽く俺の左胸をトンッと小突く。
それからその拳を、自分の左胸にそっと当てた。

「戦争にいく人が、もう戻れないかもしれないからって、心臓に近いボタンを渡したのが始まりらしい。自分が死んでも心は共にって意味で」
「…へぇ」


何を考えているかわからない横顔を眺める。
目を伏せて、とんとんと落ち着きなく床を蹴りつづける俺の、つま先。
その微かな響きを感じながら、俺はぼんやりと廊下を行き交う人の流れに目をやった。見知った顔が、ちらちらとこちらを見ては通り過ぎていく。

結局俺は、こいつに何が言いたかったんだっけ。
何を、言って欲しかったんだっけ。

わけがわからなくなって、頭をグシャグシャにしたい衝動にかられたが、抱え込むところで我慢した。
俺たちの間に横たわる沈黙も耐えがたく、なにか言わなくちゃと思うのに、何を言って良いのかわからない。
こうしてじっと固まって、ただ時間が過ぎるのを待てばいいのか。と迷う俺を、よく通る声が救った。

「しんちゃーん!一緒に写真撮ろー!」

田部井が呼んでる。行かなきゃ。

俺はためらっていた指をポケットにすべりこませた。
そして、生ぬるく温まっているボタンを拾い上げる。

「玄、これ」
「…」

さりげなく南條の手を取って握らせると、一瞬、目を丸くして、それからギュッと握り締めて。
声をたてずに笑った。



南條はH高。俺はS高。
もう、コイツの存在を背中に感じてプレイすることはない。


…どっちかと言えば、心を残してもらいたいのは俺のほうなのにな。


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入学おめでとう!(私信)
前々から言っていた第二ボタンなんたなです(笑)
いつかはミハタベ(リバ可)を…!


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