この胸に灯火の輝く限り。いつか蒼に還るまで。


 Past : Will 2004年03月09日(火) 


彼女はとても優しかった。

自分の為に泣いてくれたこともあった。

中学校三年生の秋。
合唱祭の願掛けで、クラス全員で折った六千羽あまりの鶴。
打ち上げで、海岸で燃やされ、灰になったそれ。
それを、翌朝拾い集めてくれたのも彼女で。
朝露と、砂にまみれた折り紙のかけらを、大事そうに鞄にいれて。


時間の経過とともに疎遠になって、結局最期は彼女の居場所も、携帯番号すら知らなかったから、今はただ、中学校時代の思い出を紐解くしかできないのだけれど。

モーツァルトの『きらきら星変奏曲』ピアノピース。

たまたま。
作曲家が好きで、弾いた事がなくて、初見がきいて、エチュードに丁度良いから。自分が選んだ理由は確か、そんなもので。

『あげるよ〜。いつか返してくれてもいいし』

その時、彼女のアップライトピアノの上には、小さなオブジェが沢山並んでいたのを覚えている。

それから、楽譜は私の楽譜棚に収まり。時々取り出されては、自分の気分転換の種になっていた。持ち主との連絡が切れ切れになっても、楽譜だけはいつも自分と繋がっていた。

だけど、先月の28日夕方。
その楽譜は、彼女の形見になってしまった。

去年の八月、彼女の母親が急逝したと聞かされたばかりだったのに。



彼女は最後に踏み切りで、何を思ったのか。

偶然にもそれとそう前後しない時間、
自分は、彼女の飛び込んだ電車にたまたま乗り合わせていた友人と、メールを交わしていた。『飛行機に間に合うのかな』とか、そんな風な。


酷く奇妙な感覚。



最後に彼女の声を聞いたのは、一昨年の秋だったと記憶している。
横浜で遊ぼう、とかそんな約束をして。
そんな他愛のない約束さえ、今はもう叶わぬものになってしまった。

彼女の声が、耳を掠めて空に昇る。
悔し涙を流しつつ、こんな言葉はあんまりだと思いつつ。
今はこれしか浮かばない自分に、たいがいだなぁと詰りつつ。


どうか、お幸せに。
機会があったらまた逢いましょう。


ロング・グッドバイ。


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