獅子鷲(誘…?)


 Past : Will 2003年06月30日(月) 


「なぁ、しようぜ?」

枕元に置いてあった、御馴染みの小さな箱を拾って、岳が言った。
先程まで呑んでいたウイスキーの量が多かったのか、潤んだ瞳でぱちぱちと瞬きを繰り返すその仕草。わずかに上目遣いなのがとても意外で、可愛らしい。

「岳。そんなわざとらしい可愛い顔、どこで覚えてくんの」
「ひみつ」
「…大丈夫?今日はもう寝た方がいいんじゃない?」
「俺がへいきだっつってるからへいきなんだよ」
「……」
「なぁってば。一回だけ」
「じゃあ、一回だけ」
「っしゃ!」

握りこぶしとともに、ベッドの上で岳が跳ねる。そして、お前も早く来い、というように、自分の隣りのスペースをぽんぽんと叩く。

逆らう程のことでもないので、言われるままベッドに上がった走は、自分の躰の下にあるその一枚をそっと捲った。

「あ…ちょっと、待て…ッて」

掠れた声をあげ、シャワーで濡れたばかりの髪を振って、岳が走の手を抑える。アルコールで溶けた瞳がゆらりと揺れて、走の視線と絡まり、また反らされ。

「自分から誘った癖に。先にヤらせてよ」

そう、耳元で囁く。

「ダメだ。ちゃんとジャンケンで決めようぜ」
「いいじゃん」
「ダメ」
「後のが特じゃない?」

甘い、誘い。それは今の岳を満足させるには十分だったようで。了解の印、とも言えなくも無い、しばしの沈黙が落ちる。
そしてそのまま、二人はなし崩しにゲームに夢中になっていった。

「あ…っそこ、は…ッ」
「ここ?」
「…ッずり、ぃ…」
「だって俺の番じゃん」

ずりぃ。と、もう一度岳は小さく漏らした。しかし、自分からしかけたこの勝負、負ける訳にはいかないと、歯を食いしばり必死で声を抑える。

「ね、こことここもでしょ?」
「あ…っあ…ッ」
「で、こことここ」
「う…ッ」
「で、これでお〜わり♪」
「チクショー!」

負けたー!と大声で喚きたて、岳はぱたりとベッドに懐いた。
悔しそうに歯噛みするその顔を見下ろして、に、と勝ち誇った笑いを浮かべた走は、

「ってか、岳も大概好きだよね。何で酔った時に限ってやりたがるのかわかんないけどさ」
「アルコール入ってたときのが頭グルグルすんだよ。それがおもしれーの」
「何か別のことでもいい気がするけど…」

ベッドの上に散乱するカードと、悔しそうにのた打ち回る岳を見下ろして、でも、勝ちは勝ちだから、ちょっと嬉しい感じもして。走は、さて、と一息付くと、その場で不貞寝しそうな岳の腕を、ぐいっと引きあげた。

「一回だけやったら寝るって言ったでしょ?」
「もう一回!」
「……」

何で酔っ払った時に限って、トランプやりたがるんだろうなあ。しかもよりにもよって、『神経衰弱』だし。
そんなことやるならもっと別のことを……ほら、夜だし、さ(ダメ人間)
ふと、眼をやると、ベッドに寝そべった岳が、トランプと走の顔の間で、チラチラと視線を動かしていて。
ふぅ…と溜息を落とした走は、手を伸ばして、しっとりと水気を含んだ岳の髪を、わしゃわしゃと掻き回す。

「あと一回だけだよ?」
「おう!」

「に、しても…何で神経衰弱なんだよ…わけわかんねぇ…」


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わーいごめんなさーい!(平謝り)
最近獅子鷲ってか、獣医の科白を書いてなかったので、かなり焦りました。
松小次のせいで異様に口の悪い獣医がいたりしました。
『いいじゃねぇか』とかウチの獣医は言わないから!
べらんめえ口調は日向さんだから!(病)
とはいえ、なんとか戻りました。戻って…る…?


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