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2001年12月09日(日) 『なんとかしてよ、店長さん!』

『なんとかしてよ、店長さん!』読了。高橋晋。かんき出版。

 この本はおもしろいです。
 サブタイトルにある通り、「ジャスコ店長とお客様との往復書簡集」で、ジャスコで「ご意見承りカード回答公開制度」を創設した店長の書いた本だ。
 まえがきのようなものに書いてある文章を引用すると、

 本書は、私の「ご意見承りカード公開制度」実践記録のなかから、とくに印象深い事例を選んで、32編に構成したものです。お客様からの「なんとかしてよ、店長さん!」というご要望、ご意見、苦情などに対して、店長として、また店としてどう受け止め、どう行動し、どのように回答したか、またその回答や対応は、お客様にどう評価されたか、ということを、エピソードや教訓をまじえてまとめてみました。(4ページ)

 となっている。
 著者は、秋田、宮城、青森、そして香港のそれぞれのジャスコの店舗で、累計6000枚を超えるお店に寄せられたお客様の声に、すべて自分で回答を行ってきたのだ。大型店の店長であるという、非常に多忙な身であるはずなのに。
 しかも、「カードには100回目を通す」というような姿勢で読まれ、回答も非常にユーモアあふれる、お客様にとってみれば信頼できるようなスタンスのようなものが多い。著者の試みの効果の高さから、ジャスコではいま全店にこの制度を導入しているようだけれど(確かに、ジャスコに買物に行くと、そういうカードが広場の近くで公開されているのを見たことがある)、おもしろいなと思う。

 それはこういう商品が欲しいという要望であったり、店員のサービスに対するクレームであったりする。またあるときは駐車場についての問題点の指摘であったり、フードコートのメニューのまずさへの意見、そしてバイトのかっこいい人を紹介してくださいというようなものだったりする。本当に様々な意見が投げかけられている。それを店長が自ら回答をし、しかも掲示するのだから、店舗と顧客との距離はゆっくりとではあるのだろうけれど、確かに少しずつ近づいていくのだろう。

 この店長のすごいところは、そのカードに回答をし続けることばかりではなく、そこにある意見に基づいて実際に改善するというところだ。つまり、カードへの回答をある種のポーズとして行っているのではなく、一つ一つの要望をちゃんとご意見として受け取り、真摯に行動に結び付けている。そこはさすがに、なかなか真似のできないところだ。

 たとえば、ある牛乳を置いてくださいという声に応える。またあるときは店舗の噴水がうるさいという声に応え噴水を止め、逆に憩いの場がなくなったという声にもさらに重ねて応えるために、透明なアクリル板を噴水の下において水を流していても音が出ないように工夫をしたりする。また、点字ブロックの上を自転車が占拠して目の不自由な人が歩きづらいという意見には、なぜ自転車が駐輪場ではないところに放置されるのかを確認し、さっそく駐輪場が目立つように看板をつけ、ラインを引いたりする。
 それらは、ある意味日常に近い、身近な(そして大切な)改善だ。
 けれども、もちろんそれだけではなくて、たとえば駐車券の1日限り有効を1ヶ月有効に変更するとか、開店時間を早めるとか、売場の改装にお客様たちからの意見を反映させるといった大掛かりなことまで、本当にちゃんと対応しているのだ。
 それらは日常的ではないかもしれなくても(やはり大切な)改善だ。
 だからこそ、そういう変化を見て取ったお客様は、この店やこの店長は意見を言ったらちゃんと受け止めてくれるということがわかり、よりカードの枚数も増えていくことになる。
「お客さまの声に耳をかたむける」ということがどういうものなのか、考えさせられる内容ばかり。

 印象深かったところをいくつか引用。

 お互いの作業をチェックする仕組みは大切ですが、私は何より、その作業に関わるスタッフに、目的と手段、方法の関係をきちんと理解させるほうが大切だと考えています。逆に、お客様の側から私たちの作業の仕組みや流れをチェックすると問題点が見えてくる、ということは実に多いのです。(87ページ)

 食品の苦情に対する私のお客様への対応は、
�”堽鰭覆簓埒海壁兵舛力⇒蹐�あったときは必ず(タクシーを使ってでも)飛んで行く
��代金を返す用意をしていく(レシートは不要)
�B紊錣蠅両ι覆鮖�っていく
�じ綟�、原因と対策を必ず報告する、
です。(……)
 このように、お客様には、お詫びをして、問題の商品をいただいて、さらにお詫びをして、お金を返して、代わりの商品を差し上げて、これくらいしてやっと納得していただけるのです。(116-117ページ)

 店長や上位職の人は「原則」を強調して部下を指導しがちです。しかし現実には、原則がそっくり当てはまるケースなどありません。いろいろなケースを体験してから、その後に「原則」が身につくのであって、「原則」を教えたから応用ができる、と考えるのは正しくないと思います。「お客さまは最良の先生である」と、カードをいただくたびに確信しています。(120ページ)

 また、アルバイト社員も厳しく教育します。彼らはアルバイトの目的に必ず「社会勉強のため」ということをいいます。「それはよい心がけですね。それでは協力しましょう。どれだけ社会が厳しいか、また、お金を稼ぐということがどれほど大変か体験してもらいましょう」(166ページ)

 子供からのカードももちろんたくさん届く、たとえばこういうの。

「そうせいじがぼくはとってもすきです。とくにあかのウインナ―がすきなんだけど、おかあさんが着色料があるからだめといわれた。着色料ってなんですか」

 店長の回答がまたふるっている。

「着色料には天然色素と合成色素の二種類があります。天然色素はシソの葉などを加工して食品の着色をします。合成着色料は人工的に色合いをだしたものです。ご質問の『赤ウインナ―』には『赤106号』『赤104号』『アトナー』と呼ばれる着色料が使用されています。これらの働きは、本当は<おいしい>のだけれどそのままでは<まずそう>に見える商品を、<おいしそう>に見せる技術です。たとえて言えば<お母さんのお化粧の技術>のようなものではないでしょうか? 安全であることを国が検査したものを使用しています。『無着色脳インナー』も販売しています。ぜひ味比べをしてください。これからも質問をして賢くなってください。回答が遅くなり、ごめんなさい」(192-193ページ)

 いつも部下から「なぜこんなにていねいに回答するのですか?」と聞かれます。そういうとき、私は「もしこれが実名で、社会人の大人からのカードだったらどうする? ちゃんと答えなくてはいけない、と思うだろう。でも、子どもだって表現能力が幼いだけで、考えていることは大人と一緒なんだ。逆に、大人が考えているから、子供がこうして意思表示をする。だから、すべてのお客様に対等に、誠心誠意、回答をしなくてはならないんだよ」と答えています。(194ページ)

 最後にはこう書かれている。

 店は、地域とお客さまのために存在します。店長はお客さまとともに地域づくりに責任があるので、お客さまのご意見やお知恵をお借りして行動しなくてはなりません。お客さまへの回答を書くときには、決して迎合するのではなく、自分がジャスコのトップであればどのように考え、判断するかという視点で結論を出せば、ほぼ間違いないと思います。
「お客さまに絶対に恥をかかせない」、これがこのカード公開システムの基本コンセプトの一つです。何が「恥」かはお客様によって違います。お客様一人ひとりの「心」を理解しようとしなければ、このことはわかりません。「苦情こそ宝の山」です。それを解決すれば、お客様はそれまで以上にジャスコファンになってくださるのです。(230-231ページ)

 こういう上司だったら素敵だよなと思えるような著者のキャラクターにも、かなり好感が持てる。
 いずれにしても、回答に思わず膝を叩いてしまうようなものも多いので、読み物としてもオススメです。


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 特徴

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