Sun Set Days
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2001年08月10日(金) 夏休み+『魔女』

 はじめまして。ハンドル・ネームはSun Setです。
 この日記は、日々の出来事を中心に据えつつ、本と映画と音楽についてのメモのようなものにしていこうと考えています。
 日記なのだからできるだけ毎日書こうとは思いますが、リアルな生活の方が優先なのは当たり前なので自分のペースで更新していけたら、という感じです。
 好きな作家は村上春樹、江國香織、ジョン・アーヴィング。
 好きな映画監督はクシシェトフ・キェシロフスキ、フランソワ・トリュフォー、ラッセ・ハルストレム。
 好きなミュージシャンは、ジャネット・ジャクソン、Chara、トッド・ラングレンetc...

 以上、よろしくお願いします。


 さて、今日から10日間の夏休み。実家に帰省するために夕方の羽田空港へ。
 お盆時期ということもあって空港内はひどい混雑で、電光掲示板にも「満席」の文字が連なっていた。今回はJASだったのだけれど(マイレージにはあまりこだわっていないので毎回異なる航空会社だったりする)、新千歳空港行きの飛行機は座席毎にパーソナルモニターがついているタイプだった。以前に、国内線で初めてとしきりにアピールしていたやつだ。羽田⇔新千歳間はドル箱路線だから、そういった機体が優先的に回されるのだろう。
 モニターでは、音楽番組と映画紹介番組を見る。
 音楽番組はビデオクリップを、映画紹介は予告編を流すスタイルのそれぞれ30分程の番組。
 ビデオクリップのひとつでは三人祭が踊っていたのだけれど、僕はモーニング娘。のメンバーを全部言うことができなかったりする(2人、顔はわかるけれど名前がわからない)。それは僕がほとんどテレビを見ないからなのか、年齢(26歳)のせいなのかは微妙になってきたよなと思う。
 映画紹介では『ドリブン』が意外に面白そうに思えてしまう。スタローンというのが個人的にはかなりの危険信号を発しているのだけれど、市街地でF1レースをやってしまうような無謀な映像と、たたみかけるように繰り返されるクラッシュが、もしかしたら当たりなのかもと思わせてしまうのだ。けれども、予告編って本当にうまいから要注意ではあるのだけれど。最近では『猿の惑星』の予告編に惹かれるものがあって、実際に観に行ってみたら見事にやられてしまったし……。
 ウディ・アレンの『おいしい生活』は、ぜひ見てみたいとチェック。

 空港からの帰りの列車(北海道では電車と呼ばない)で樋口有介の『魔女』を読み終える。
 就職浪人中の「ぼく」が主人公の、青春ミステリー。
 帯から引用すると、

「広也はただ今就職浪人中。ネコのぬいぐるみで一躍有名になってしまった母親と、野心的なTVレポーターの姉、売れっ子の造園家である年上の恋人の尻に敷かれて、モラトリアムな日々を送っている。だが、スクープを狙う姉から、ある女性ソーシャルワーカーの焼死事件を極秘に調べるように命令され、彼の平穏な毎日は一変する。被害者安彦千秋は、広也が昔つきあっていた彼女だったのだ――。
足跡をたどるうち、浮かび上がってきた彼女の素顔とは?」

 今作が20作目の書き下ろし長編と書かれているのだけれど、思わず驚かされてしまう。もうそんなに、という感じだ。それほど爆発的な知名度があるわけでもないのに(周りでは知っている人はまずいない)そんなに出版点数が多いということは、やっぱり固定的なファンがついているということなのだろう。ただ、考えてみるといままでに樋口有介の作品を15冊以上は読んでいるから、確かにそのくらいにはなるのかもしれない。
 樋口有介は高校生のときに『ぼくと、ぼくらの夏』を読んで以来のファンで、新作を見つけるたびに楽しみにして読んでいる作家の一人だ。僕は基本的にはミステリーや推理小説はほとんど読まないので、例外的に手にとってしまうのは、樋口有介の作品群の主人公が魅力的だからなんだと思う。実際、よく評されているのが「ワンパターン」ということであって、推理のプロットはそれほど入り組んだものではなく、いつものようなキャラクターが、いつものようなペース、いつものようなパターンで事件を解決していくというものが多かったりする。けれども、ファンの方から言うと、いわゆるワンパターン、つまりいつもの樋口節に触れたいから新作に手を伸ばすのだし、今回だって樋口節を堪能させてもらった。
 言ってしまえば、『魔女』は『風少女』と『夏の口紅』という過去の作品のリミックスのような作品だった(3作品とも読むと、その奇妙な相似形に驚いてしまう)。それでも、主人公とヒロインの会話には、どうしたってついついにやりとさせられてしまうし、いままでの主人公よりも頑固さが少し柔らかくなっているところも悪くない。
 ちなみに、表紙の絵は人によっては書店でちょっと手に取りずらいかもしれないけれど。

 駅に着いて、久しぶりの地元の光景を眺める。半年や一年ぶりに帰省するたびに、どこかしら変化しているところがあって、(当たり前のことではあるのだけれど)時間が確実に流れているのだなとしみじみ思ってしまう。一週間分の荷物を詰め込んだキャリー・バックをがらがらと引きながら、昔よく歩いた道路を通って家まで帰った。


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