鎮魂の意味を込めて

あれから八年が過ぎた。
もう随分と昔の話だ。
現地にも被害の面影は殆ど無い。
あれよあれよと時が過ぎていく中で
センター街がちゃんと舗装され
アーケードもしっかりと付いた。
資料館だったフェニックスプラザは取り壊され
もう次のテナントが決まってるという。
国際会館もハーバーランドから戻り
目立っていた空き地はもう少ない。
三宮神社の近くの歩道用のアーケードは無くなり、
崩れていた生田神社も立派になり、栄光教会は再建される。
時が過ぎてゆくごとに街は変わり、
人の記憶も風化する。
悲しみや苦しみもいつかは薄れ
新しい希望へと変わる。
だが、忘れてはならないもの、
風化させてはならないものは存在する。
業火の跡を物語る焼け爛れたビル、
大きく傾むき今にも倒れそうな商店。
煤で真っ黒になったシャッター。
そこに建物があったことを物語る瓦礫の山。
全てが心の中に焼き鏝で印をされたかの如く
頭の中にこびり付いている。
ただ、それは暗い記憶だけではない。
瓦礫の山に囲まれながらも再び立ち上がり、
屋根も無い場所で前に進もうとする人々の姿、
そしてそれを優しく包み込むような暖かい風と
希望の光の如く輝いていた太陽。
絶望に震え立ち止まらずに未来へ歩もうとしていた
この街の姿を僕は永遠に忘れない。
2003年01月17日(金)

Dag Soliloquize / tsuyo