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| 2002年07月31日(水) |
「マイリトルシェフ」によせて |
人というのは そうやって 一人の人だけを思いつづけることができるのですね 一人の人だけを思いつづけてしまうのですね それは 素敵だけれど せつないですね その人しか 愛さないのか 愛せないのか でも 誰も愛していないより やはり 幸せかもしれませんね
その人と 二人で手に手を取って生きてはいけないことになったら それは それは いいようのない孤独が あるのでしょう けれども 長い長い 一人での年月もその人だけを思いつづける そんな相手に巡り会えたことは 奇跡なのだと思います だから やはり 思いつづける人と出会えなかったよりは幸せなのではないでしょうか
今日は、幼い頃に母を病で亡くし、父に愛情深く育てられた娘が、父より一つ上の恋人を父に紹介して、認めてもらいたいと思う女の子のお話。しかも、父の誕生日が1週間だけ、彼より早いので、この1週間、彼と父が同い年になる、これがチャンス!とばかりに、雑誌を見て「プチ・エトワール」にやってきたのです。その話を聞いて、セリちゃんは是非とも料理を作りたいと思います。彼女もまた、子供の頃父を亡くし、亡くしたからこそ、父との気持を大切にする彼女を尊重してあげたく思ったし、娘をもった父の愛情に興味があったのかもしれません。 父は、かなりなグルメでおしゃれ。一方、彼は研究一筋、自分はミトコンドリアたちと一生を送るのだと決めてかかっていた、グルメやオシャレに縁のない男。娘はどうしても、彼と一緒になりたいけれど、どうしても父の祝福をえたいのでした。
彼女が予定外の仕事と渋滞で、当初、彼女と父が待ち合わせし、30分後彼が現れるという計画はみごとに崩れ、父が現れ、鋭い父はシェフの聞き取りの時「それで、あとはどんなやつが現れるのか?料理とともに楽しみだ」と言います。何もわからない彼が、30分後に現れ、娘不在のまま、アンティパストがはじまってしまいます。 父は、セリの辛口大人の料理に満足しつつ、「君は甘いカレーは好きかい?だめなら、娘の相手はつとまらないな」と、笑います。マナーのないのもださいのも気になるようです。しかし、ついに、彼の歳を、娘の到着前に知ることになり、父は、言います。「きっと、娘の選んだ人だから、君は悪い人物ではないに違いない。しかし、娘のことを考えるなら、この場をこのまま立ち去ってくれ」と。「歳のことが問題なんですね?それは、以前に彼女とボクは話し合いました。ボクは、生物学などをやっているせいか、人は孤独に生まれ、孤独に死んでいくものだと思っていて、この歳になっても結婚するなんてことは考えもしませんでした。しかし、彼女に出会って、誰かとともに生きる幸せというものを考え出すことができたのです。そして、歳のことについて、彼女に聞いたら、彼女はなんと答えたと思いますか?こう言ったんです。『あなたが先に死んでくれる方がいい。あなたを残して私が先に死んでしまうよりは、心配が無い』母親を亡くしたあとのお父さんの寂しさを彼女はずっとみてきたのです。『父と同じ気持をあなたに味わわせなくてすむから』こう言ったのです」
父親は、最愛の妻を亡くし、生きてこれたのは娘のお陰だと言います。だからこそ、このままそっとしておいてくれと。そして、今でも、老夫婦が仲良く歩いている姿を見ると、どうして自分たちはそうできなかったのかと、悔しくて寂しくて仕方が無いと、娘にはこんな思いはさせたくないと。 娘がその会話を聞いた後、テーブルに加わります。彼とは別れない、お父さんは自分の果たせなかった夢を私にかわりにさせようとしているだけだ!強く言ってしまいます。「もう大人だから、父親の承認は要らない、勝手にしろ」という父に「世界中の誰が反対してもお父さんにだけは認めてもらいたいの」
そこへ、セリの作った料理が運ばれます。聞き取りで、父親から亡くなった妻の大好物がうにだと聞いていたのです。うにの殻の蓋を取ったら、中からでてきたのは、カップルにはうにを使ったグラタン。しかし、本来辛党の父にはわさびのきいたホタテを使ったものでした。その味と、娘の言葉で思い出します。娘が生まれた時、妻が「世界中の誰が反対しても、私たちだけはコのこの味方でいましょう、それだけは、お願い約束して」と、言った言葉を。彼は言います「本来、ボクは甘い料理は好きじゃなかった。そんなことすら忘れていた。妻が死んでボクは母親と父親と両方にならなければならなかった。もう、今日で、ボクは母親をやめる。今日からは、ただの寂しい父親だ」結婚を認められて、喜ぶ娘と彼。そして彼女の思いが料理で動かされ、満足するスタッフたち。ただ、セリだけは、父親のそのさみしげな姿に、「喜ぶ」ことはできなかったのですが・・・。
西村雅彦さん、渋いだけでなく、あたたかみのあるいい演技をされていたと思います。ブレイクしたのは今泉くんだったのに・・・。西村父を説得するにたる、誠実さとでもいうのでしょうか、真摯な姿、・・・見える姿は地味でださださだけど、そのいでたちがしかも似合いつつ、大高洋夫さん、ハートは熱いのさっ!てなところがにじみでる、いい芝居だったと思います。もう、「マイリトルシェフ」で、こんなにずらずら泣くと思ってないじゃない。やめてけれ!心の準備してないんだからさ。
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