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樋川春樹

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2005年07月14日(木)
書いてたとこまで公開します。その2

 『クリスマスパーティー』というタイトルで書きかけていたものです。
 ファイル破損で読み込めなくなっていたはずのものが昨日クリックしてみたら何故か普通に開けました。せっかくだから公開します。エピソードとしては未完です。続きを書いて仕上げるかどうかはわかりません。それでも良いと言う方は是非読んで行ってくださいませ。

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 シティにある建造物はどれもこれもきらびやかなイルミネーションに彩られている。
 通りの要所要所に点在する小型のツリー、広場には空にも届きそうな大型のツリー。
 道行く人々は皆穏やかな笑みを交わし、明るい声で談笑しながら、パイオニア2という閉鎖された空間にいる現実をしばし忘れる。
 今日はクリスマス。
 着陸の目処は相変わらず経たないまま、ラグオル上空で迎える三度目のクリスマス。
 パイオニア2が出航してから数えると八度目の聖夜である。

 賑わうシティの片隅…メインストリートから細い路地を一本裏に入ったところにある、小さな軽食喫茶店…クリスマスムードにはこれっぽっちも相応しくない陰気な表情を隠そうともせずに、夜にもなりきらないうちから発泡酒を呑んだくれている一人のRAmarの姿があった。
 一息に飲み干したグラスを音高くカウンターに叩きつけて、ぷはあっ、と大きく息をつく。
 顔の上半分を覆った仮面の下には、浅黒い肌が覗く。
 薄い栗色の髪を片手で乱暴にかき上げて、グラスを突き出しお代わりを要求したのは、CAGEである。
「…なァ、CAGE。気持ちはよおっくわかるんやけど…その辺にしといた方が、ええんとちゃうかなぁ…?」
 鼻先にグラスを突きつけられたRAcast―彼がこの店のマスター兼シェフである―、呆れ半分同情半分といった口調でCAGEをなだめにかかる。が。
「…ぅうるさいッッ!!!」
 仮面のRAmarを気遣うRAcastの言葉は全くの逆効果だった。店中に響き渡りそうな大声で怒鳴りつけると、CAGEは空っぽのグラスを改めてカウンターに叩きつけた。擬似硝子で出来たグラスはそんなことで割れたりはしないが…RAcastはため息をついて首を振ると、新しいグラスを棚から取り出しておかわりの作成に取りかかる。
「馬鹿野郎っ、お前なんかに俺の気持ちがわかってたまるかぁぁぁ!!」
 店内に他の客がいなくて助かった、と思いつつ…作業の手は止めずに、マスターは適当に相槌を打ってやる。
「ちくしょおっ、俺は上からの命令でしょーがなしに、この二年間というもの、ずうっと、ずううっとアイツの面倒を見てきたんだぞおおおっ!!」
 新しい発泡酒が目の前に出されるや否や、CAGEはひったくるようにそれを手に取り、一気に中身を空ける。
「一気飲みは身体に毒…」
「それがっ!! その結果がこの仕打ちッ!! こんちくしょおっ、俺はこの二年間一体何のために頑張って来たって言うんだよおおおッ!!」
 魂を振り絞るような嘆きと共にカウンターに突っ伏して、おいおいと泣き出すCAGE。
 RAcastはしばしリアクションに困った様子をありありと見せながら佇んでいたが…放置しておいてもこの事態は収拾されそうにないと判断し、控え目に言葉をかける。
「なぁ、CAGE。気持ちはわかる。おマエがこの二年間ホンマようやってきたこと、もちろん俺は知っとるよ」
「うっうっ…」
「せやなぁ、確かにあのFOmarの相手なんかおマエくらいの明るさがなかったらようやっとれんと思うよ。あんないつもいつもボケーッとしとる、朝も夜も起きとるんか寝とるんかわからん奴の相手なんか…」
「HARUKIの悪口は言うなあああああっ!!!」
「い、いやいや、悪口ちゃうて。悪口とちゃうけど…その、何や、つまりおマエはようやっとる、ちゅうことや。せや、CAGEはもっと評価されたかてええはずや」
「うっうっ…ひっく…わかってくれるか、クロガネぇ…ぐすっ…」
「…泣き上戸か、CAGE…?」
「だからぁ、俺が言いたいのはだなぁ…ぐすっ…HARUKIの世話するのが大変だったってことじゃなくってだなぁ…」
「じゃ、なくて…?」
「じゃ、なくて…、……こんなに苦労してる俺を…一人放置してなンで…HARUKIだけクリスマスパーティーにお呼ばれしちまうんだよおおおおおおおっっっ!!!」
「お…落ち着け、CAGE! 冷静に!!」
「あんの野郎っ、一人だけ楽しくやりやがってぇ〜〜〜ッ!! 俺にも一声ぐらいかけてくれたっていーじゃねえかっ!! いつも昼過ぎまで寝てるくせに、こんな日だけ早起きしてさっさと出かけやがってえええええ!! ちくしょおっ、許せん!! 許してやるもんかあああああっ!!!」
「あかん…手ェつけられんわ、こりゃ…」
 荒れ狂うCAGEをなす術なく見守りながら、マスター−KUROGANEは深い深いため息をついた。
 それにしたって、たかがクリスマス・パーティーに置いて行かれたくらいのことで…それがそんなに悔しいんだったら、こんなところでやさぐれていないで、後を追って行くなり他のパーティーに出席するなりすればいいものを…。
「うう…ひっく…HARUKIのばっかやろおおおおおおおお…!」
 空になったグラスを握り締めて再び崩れ落ちるCAGEの背中に。
「…誰が馬鹿だって?」
 その場の空気にはっきりと響く冷たい声がかけられる。
「!!」
 脊髄反射の勢いで身体を起こし、がばっと振り返ったCAGEの視線の先にいたのは…。
「はっ…HARUKIさんじゃないですかぁ〜っ!」
 黒ぼんぼりFOmarl・HARUKI。FOmar・HARUKIに生き写しの外見と、どんなに注意したところで聞き分けられないぐらいにそっくりな声の、持ち主。同じ名前で双子の妹。
 真っ黒な太めのマフラーで口元を覆うようにして、黒いダウンジャケットを着込んだ腕を組んだままCAGEを見据えているその肩には、真っ白な生マグがちょこなんとのっかっている。
「いやぁ、奇遇ですね! どうしてこんなところへ?! わざわざクリスマスに! さあさあ、外は寒かったでしょう、狭い店ですがどうぞ中に入ってやって下さいよ!」
 ほんの一瞬前まで酔いどれて情けなくも泣き崩れていたくせに、FOmarl・HARUKIを一目見た瞬間に明朗活発な好青年へとたちまち立ち直ったCAGEを、呆れ気味に見つめるKUROGANE…。
「お前なぁ、こんな店言うことはないやろ…」
「どうぞ、こちらのお席へ! ご注文は何にします? 何でもおっしゃって下さいよ、もちろんおごらせていただきますから! 聖夜にあなたと出逢った奇跡を記念して…」
「…CAGE…」
 CAGEは実にさりげない動作でHARUKIの手を取り、紳士的にカウンター席へとエスコートしようとしたが…。
「いや、私別に飲んだり食べたりするためにここに来たわけじゃないから」
「え……?」
「二人を、うちのクリスマスパーティーに是非招待しようと思って…」
「ほっ、本当ですかあああーッ!?」
 耳元で力一杯叫ばれて一瞬迷惑そうな表情を見せたものの…今日のHARUKIは何故か、すぐに不機嫌な顔を引っ込め…それどころかにこやかにCAGEにうなずいて見せた。
「もちろん、本当。わざわざこんなとこまで嘘つきに来るわけないじゃない」
「こんなとこて…お嬢まで…」
 カウンターの向こう側で軽くへこむKUROGANEに対しても、HARUKIはにっこりと笑いかけ、
「もちろんクロさんも来てくれるよねぇ?」
 来るに決まっている、と自分で付け足しかねないような断定口調。
「いや…お誘いはありがたいんやけど、店が…」
 それでも遠慮がちに一応切り出してみるが…。
「店…あぁ、店かぁ…。…営業出来ないようになったら来てくれるかな…」
「!! なっ、何するつもりやーッ!?」
「楽しいよぅ、クリスマスパーティー。クロさんも来るね。決定。さあ、準備して準備して」
「あっ、HARUKIさん、パーティーだったら正装して来ないといけませんよねっ? 俺今からちょっとウチに戻って支度を…」
「ああ、いやいや、全然その服で大丈夫だから」
「え…でも、いくらなんでもこんな格好じゃあ…」
「ううん…うちのクリスマスパーティーは、野外パーティーだからさ。きちんとした服で来て汚れてもつまらないし…」
「野外パーティーですか! クリスマスに野外パーティーとは…さすが、HARUKIさんのご家庭はやることが違いますね!」
 純粋に感心して褒め称えるCAGE。
 普通そこは突っ込むところのはずなのだが。
「このクソ寒い中表でパーティー…正気の沙汰とは…」
「…何か言った? クロさん…」
 片付けの手は止めぬままぶんぶんと首を横に振るKUROGANE。
「あ、ところで…HARUKIが行ってるのって、そちらのパーティーなんですか?」
「あぁ、兄貴? 今頃すっかり埋まっ…」
 HARUKI、急に言葉を切る。
 ごほん、と落ち着いた咳払いを一回。
 それからおもむろに顔を上げ…。
「今頃すっかり、『うまい』料理でも食べて上機嫌なんじゃないかなぁ〜?」
「…! 今『埋まった』とか『埋まってる』とか言いかけたのに…! 不自然な言い回しではぐらかすにも限度が…っ!!」
「くっ…アイツやっぱり一人だけいい思いしやがってぇぇ! 許さんっ!!」
 KUROGANEの驚愕をよそに息巻くCAGE。
「……CAGE……!」

 ラグオル地表、森林エリア。
 HARUKIに連れられるまま、CAGEとKUROGANEは、大地を分厚く雪が覆う一画までやって来た。
 歓声が聞こえる。
 複数の人間が雪を踏み散らかして走り回る気配。
 近づくにつれ、騒がしさは次第にはっきりとしたものとなり…。
「連れて来たよっ!!」
 HARUKIの呼びかけの声が冷たく澄んだ大気に響き渡ると、その場にいたほぼ全員が自分の今している行為―互いに雪玉を投げつけあうこと―を止めて三人に注目した。
「わ…CAGEさんに、KUROGANEさんだ!」
「! その声は…RyuKaちゃんじゃないかぁ〜っ! クリスマスに君と会えるなんて、もはやこれはうんめ…」
 大袈裟な台詞と身振りで喜びを表現するCAGEの顔面に、いきなり飛んで来た雪玉が命中した。
「なぁにが運命だ! 現れるなりヒトの妹に手を出すな!」
 前髪についた雪を払いながらそちらに顔を向けると、予想通りHyuGaがいる。白いダウンジャケットに黒くごつい手袋をはめて、新しい雪玉を作りながらCAGEを睨んでいる。

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