speak like a...child

 

 

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雨と老人 - 2004年10月02日(土)

仙台に帰る日はあいにくの雨だった。
昔案内してもらった道を思い出して鳥海山(標高2236m)に立ち寄ってみた。
昼に訪れるのは初めてで、たどり着くまでに晴れることを期待していたが、
迷いに迷った挙げ句、天気は変わることはなく、絶景は望めなかった。
このところ、山との相性が悪い。

車には首枕が積んである。
標高が高いところに上って気圧が下がるとパンパンに膨らむ。
破裂すると怖い&悲しいので普段はフニャフニャにしてある。
その変化を楽しんだだけのドライブだった。

さて。

祖父はと言えば、正月に会ったときに比べて劇的に変わった点はなく、
相変わらず僕の代わりに3通りほどの名を呼んだ。ただし、僕が誰の息子だとか、
大学に行って勉強しているとか、どんなスポーツをしているとかいったことは
ちゃんと覚えていて、出てこないのは僕の名前だけであった。

“自己とは他者との関係のみによって定義され、名前は単に識別するための
記号にすぎない”ことを認めるならば、この会話もあながち間違ってはいない
気がしたが、それ以前に会話が噛み合っていないのでそれは無理だった。

それでもこの日は体調が良かったらしく、やけに多弁であったし、
昼食後にもかかわらず持っていったお菓子を軽く平らげた。

衰えの中に希望を感じさせる一時。
また来るよと言い残して重い扉を閉めた。

思えばこの日も雨だった。
会話の節々で「外は雨か?」と何度も問うた祖父の声が印象的だった。



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